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転送管理局~人生2周目は観察係だった件~  作者: 秋川悠
第一章

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【第14話】揺らぎの予兆

 あの日、咲良に話しかけられてからというもの、光の中で何かが変わっていった。


 彼女は教室でもよく笑い、誰とでも分け隔てなく接する性格だった。


 けれど、光の前では少し違っていた。


 意地悪な冗談を飛ばしつつ、時折見せる素直な笑顔が、不意に心をつかんで離さなかった。


「ねえ、また資料係やるんでしょ? 頼まれごと断れない体質だもんね、光くんって」


「う……図星。でも断れないんじゃなくて、やってあげたいだけだし」


「ふーん、優しいんだかチョロいんだか」


 そう言って笑う咲良に、光もつられて笑った。


 二人は自然と一緒にいる時間が増えていった。


 帰り道がたまたま同じ方向だったり、文化祭の準備を一緒にやったりと、さりげない日々の積み重ねが、距離を縮めていった。


 高校二年の終わりごろには、誰の目にも明らかだった。

 付き合っているかどうかをはっきりと口にしたわけではない。


 でも、放課後の教室で咲良が光の鞄に「お守り」と書いた謎のメモを忍ばせた日、光はそれを見てただ一言、「ありがとう」と笑った。それで十分だった。



 大学に進学しても、二人の関係は続いた。

 

 光はビジネス系の学部に進み、咲良は教育学部へ。

 

 キャンパスは違えど、週末はよく会っていた。

 

 大学生活の中で、光にはもう一人、かけがえのない存在ができた。

 

 同じゼミに所属していた佐伯蓮さえき れんという男だった。

 

 佐伯はどこか光に似ていた。穏やかで、他人をよく見ていて、誰にでも気配りができる。


 二人はすぐに意気投合し、課題やプレゼンの準備だけでなく、就活や進路の相談までも気兼ねなくできる関係になった。


「お前、いい意味で“真面目バカ”って感じだよな。そこ、嫌いじゃないぜ」


「それ、褒めてるのか?」


 光は大学で信頼できる友人を得て、咲良との関係も順調だった。

 

 少なくともそのときは、未来に対して不安など微塵もなかった。

 

 大学三年の春。ゼミでは大手企業のマーケティング戦略を分析するグループ発表があり、佐伯と組んで準備を進めていた。

 

 就活に向けた情報共有も頻繁に行い、お互いを高め合える存在だと感じていた。

 

 ――きっと、このまま、社会に出てもうまくやっていける。咲良とだって、いつかはちゃんと“形”にしたい。

 

 そんな将来設計さえ、光は自然に思い描いていた。

 

 そのすべてが崩れ始めるきっかけが、彼のすぐそばにあったことに、このときはまだ気づいていなかった。


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