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転送管理局~人生2周目は観察係だった件~  作者: 秋川悠
第一章

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12/23

【第10話】手を伸ばした先に

 転送の衝撃がまだ体に残っていた。息がうまく整わない。光は数秒の間に深呼吸を繰り返し、腕の端末を起動した。


「T-1123、転送者・陽菜……屋外。位置、商業ビル13階相当、屋上テラス」

「まさか……っ」


光はすぐさま駆け出した。屋外という情報が頭の中で最悪の可能性と結びついていく。街の空気がやけに冷たく感じた。


ビルの前には人だかりができていた。ざわつき、誰かが叫んでいる。


「飛び降りようとしてる人がいるらしい」

「もう警察呼んだ?」


光は目を見開き、見上げた。ビルの13階相当の屋上テラス。そこに立っていたのは陽菜だった。柵の外、細い足が空中に出ていた。


「……陽菜!!」


誰の耳にも届かないその叫びを残し、光は建物の中に駆け込んだ。階段を一段飛ばしに登りながら、息が乱れ、鼓動が耳を打つ。

(お願いだ、間に合ってくれ――)


13階のドアが見えた。その向こうには風に揺れる少女の髪が、逆光に照らされていた。


ドアを開け放った瞬間、世界がスローモーションになった。


「陽菜ァ――――っ!!」


だが、彼女の体はもう落ちていた。手は届かなかった。


ただ、その場に崩れ落ちるしかなかった。


膝をついたまま、光は呆然とテラスの先を見つめ続けた。何分経ったのかもわからない。ビルの下では誰かが叫んでいる。誰かが泣いている。


「……俺は、何をしていたんだ」


呆然と呟いた声が風にかき消された。


気がつけば、視界が歪んでいた。涙なのか、虚脱によるものなのかもわからなかった。


そして——。


ふと気づくと、光は見慣れた天井を見上げていた。転送管理局の床に倒れたまま、全身が重かった。


目をゆっくりと動かすと、そこには雨宮が立っていた。


「……高槻光。これより、取調室へ向かってもらう」

雨宮の声は冷静だった。


だが、その視線の奥には、言葉にできない感情が滲んでいた。


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