表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

3 孫権の仕官

 西暦196年、孫策の弟の孫権が村の役人に仕官している。孫権は文官である。兄の孫策を慕うことはなはだしく、自分の任地を孫策の出兵に合わせて移動していったくらいである。

 孫策は孫権に問うた。

「孫権よ、お前は、後漢の臣か、それとも、袁術様の臣か」

 難題であった。

 さすがの孫権も、なんと答えればよいのかわからない。

 兄上の臣下です、といいたいのだが、ついに言い出すことはできなかった。

「天下にはまだ皇帝は存命しており、袁術もその臣下である以上、わたしは後漢の臣であるといえるでしょう」

 孫権は必死になって答えた。

 それを兄の孫策が笑って答えた。

「はははは、まだよく天下が見えているな。いいぞ、いいぞ。世の中をそう見ていれば、まちがいは起こらない」

 孫権は恐縮してしまい、本当にああ答えてよかったのか、兄は笑っていたが、別の答えを求めていたのではないか、と、もんもんと悩むことになった。

 孫権、16歳の頃である。

 孫策はいった。

「孫権よ、おまえは献帝を見たか」

 孫策は威風堂々としている。天下を語るに、臆することなき様子である。

「いいえ、見ておりません」

 孫権は恥じ入らんばかりに申し上げた。

「孫権よ。いずれ、天下が動くであろう。その時、誰が最も皇帝にふさわしいのか、それを見極めなければ、家臣は務まらぬぞ」

「はい」

「わかるか。孫権、おまえが兄を仕えるに足らぬと見限れば、いつ離反しても良いのだ。自らの主君は、一生を歩いて探さねばならん」

 孫権は声をひそめて、質問した。

「献帝は、あるいは、袁術殿は、仕えるに足る人物でしょうか。わたしの知る限り、仕えるにたる人物は、兄上をおいて他にありません」

「はははは、孫権、おれを献帝より徳があると申すか。それはさすがに失言であるぞ」

「ははっ」

 孫権は兄の前でかしこまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ