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第5話:訪れる厄災。

閲覧ありがとうございます( *¯ ꒳¯*)


「いや、量多すぎじゃありませんかね…」


 教会裏のゴブリンをしばいたら、大量のゴブリンきちゃった…。というか、さっきまで何も表示されていなかった灰色のところにまで赤点があるってことは、このマップは、敵対したモブの場所を教えてくれているのかな?


 いち、にー、さん、しー、ごー…えぇ、どんどん増えるんだけど。えぐい勢いで増えるんだけど。まじ増えるんだけど。


 と、とりあえず敵のステータス確認しよう。逃げるか戦うかの判断はそれをみてからだ。



★ーーーーーーーーーーーーー☆

・モンスター名前:Lv/【ゴブリン:8Lv】


〈種族〉

・ゴブリン


〈能力値〉

・[HP:31/31]

・[MP:2/2]

・[筋力 :13]

・[器用さ:9]

・[耐久度:6]

・[素早さ:9]

・[賢さ :5]

・[魅力 :-93]


〈スキルツリー〉+1

◆【ゴブリン】

[雄叫び]


〈付与効果〉

・ー


☆ーーーーーーーーーーーーー★



 ほーん、ステータス的にはさっきのとほぼ変わらんのね。でも、動いてる敵に対して戦えるかどうかって、結構別だよなぁ…。


 って、もうそこまでゴブリンきてるじゃん。テラやばす。どうしよ。


 …こんな時、ルウ・ブランならどうするかな。


 大量の雑魚狩りなら、走って敵を一点に集めながら、武器にエンチャントをして、範囲攻撃で一気に倒し切る…だったっけ。


「ゲグギャギャ! ゲギャグギャ!」

「ゲーグゲゲ、ゲゲゲグゲガ!」


 思考を巡らせているうちに、木々の間からゴブリンの濁点を多く含んだ鳴き声が響く。

 もう目と鼻の先、すんでのところに迫っているのは確実である。


 やべ、きた。


「……ひとまず、走りながら考えましょうかね」


 俺はその持ち前の身体能力を活かし、駆け出す。


「やっぱり、速すぎませんか…」


 まるで風のように、木の葉や蔦、根などを巧みに身かわし、軽快に足を動かす。


 やばい速いやばい速い、ぶつかるッーー。


 と何度感じたことか。

 自分ではほぼ制御不可能な速度であるが、なぜか体が勝手に動いているかのように、障害なり得るもの全てを避けていく。


 あれぇ? このままじゃゴブリン撒いちゃわない?


 マップを見れば、俺が今まで走ってきた跡を、遠いところで赤い点が20個ほど追ってきているのがわかる。


 あー、まじ雑魚なのね。おっけ、なんかもう全然怖くないし、普通に斬りに行こ。他のスキルとか試してみたいし。


 俺は前方に見える太い樹木を見つけるや否や、その樹に向かってドロップキックをする。

 そして、その樹を足場に力強く踏み切ることで、ゴブリンのいる方へと無理やり方向転換をした。


「えっと、辻斬り抜刀斎です…?」


 そしてゴブリンの群れへと飛び込んでいった。


 ーーうっひょうぅ、楽しい!!


 土煙を巻き上げながら吹く、一陣の風。

 その風に煽られたゴブリンの首が飛ぶ。


 俺は完全にアトラクション気分でゴブリンの首をスパスパするのであった。



▶︎▷▶︎▷▶︎▷▶︎▷


side:アリ



 ソテー村、夜。

 満月が家の屋根を優しく照らし、静寂に包まれる頃。


『グォォォォォォオオオオ………』


 ーー世にも恐ろしい咆哮が響き渡り、大気を震撼させた。


「ーー今の、なに」


 アリは飛び起きて、辺りを見渡す。すると、アリと全く同じような状況の母が目に映った。


「……お、お母さん、今のって…?」


 アリと同じく金髪で、エメラルドの瞳を持つ、少し小太りな女性。それがアリの母、テイラーであった。


「わからない、わからないわ…」


 テイラーも訳がわからないと言った様子で、顔を洗いに、月明かりを頼りにして水おけのある場所まで移動する。


 ーーそして、理解する。


「あ、アリ…逃げなさい、逃げなさい!」


 板戸窓向こうを見たまま、固まって小刻みに震えるテイラー。その顔はまるで、何か恐ろしいものを見たかのように、恐怖で染まっていた。


「逃げるって、何から…? どこに…?」


 アリはそのテイラーの様子が気になり、同じ方向を臨める出入り口の隙間から、覗き見る。


「ーーッ!」


 村の中央、ちょうど村長の家のある付近に、巨大な影が見えた。


 狼のような、ヤギのような頭に、黒い鱗と毛に覆われた、村長の家に若干勝るほどの巨躯。

 赤い目が抑えようのない怒りを湛え、口からのぞく尖った牙が全ての生命を萎縮させる。

 鱗と毛に覆われた四肢は筋肉質で、長い腕の先についた五本の爪が、常に地面を裂く。

 体表から漏れ出る暗黒色の波動は、その空気すらも殺しているかのよう。


 まさに生命の敵、恐怖の具現化、悪意と破壊の権化然とした生物。


「……デーモン」


 そう形容するに相応しい見た目と気迫。


 そしてデーモンの周囲には耳の尖った、醜悪な小人、ゴブリンまでもがいる。


「お母さん、逃げよう! もうここにはいられない!」


「わかってる、わかってるんだけど……歳のせいかね、足がぴくりとも動いてくれないの…」


 アリ達は知る由もないが、テイラーはすでにかの魔物、デーモンの攻撃を受けていた。

 それは〈威圧〉。一定以上の力を持った生命が使えるとされれる、出鱈目なスキルである。


「なら、私がお母さんを運ぶ」


「…いいから、逃げなさい!」


「やだ!」


 アリはテイラーを無理やり背負って、家から出る。

 家から出る頃には娘に命を預けることを許したのか、静かになった。


 外に出て、耳をすませば他の村人の声が聞こえてくる。


「魔物だ! 誰か、助けてくれ」


 パニックになるもの。


「いやああああ! 娘を、娘を返してぇぇ!」


 ただただ悲痛な声を漏らすもの。


「やめて、ギャアアアアッ!!」


 断末魔を響かせるもの。


 皆、デーモンの騒ぎで家から飛び出したところを、ゴブリンによって捕食なり、遊び半分で引き裂かれるなりして、村中が悲鳴と混乱に包まれていた。


(…どうしよう、どこに逃げれば……)


 アリの背中がじんわりと汗ばみ、熱い。それはきっと、母の熱も合わさり、実際にかなり熱くなっているのだろう。


 そんな時、遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。それが誰であったかは考える暇もなかったが。


「ーーブラゼ川だ! ブラゼ川の洗濯場の近くに、身を隠せる場所があるぞ! そこに逃げ込め!」


(…そうだ、あの場所の近くには洞窟があったはず)


「お母さん、とりあえずブラゼ川まで走るよ。しっかり捕まってて!」


 アリは断末魔と、ゴブリンの鳴き声、そして動かないデーモンを背にブラゼ川まで走り出した。



▶︎▷▶︎▷▶︎▷▶︎▷


side:ホーク



「早く! ここに身を隠して! ゴブリンがきたら岩で塞ぎます。それまでに、早く!」


 ホークはブラゼ川の洞窟前で村人の避難誘導を行なっていた。


 ホークがデーモンとゴブリンの存在に気がついたのは、村の中でも、最も早かったといえよう。なぜなら、奴らは突然、なにもない場所から家の前に現れたのだから。


「ホーク、お前はブラゼ川の辺りで村人の安全確保を優先しろ。私は村に取り残された者がいないどうか確認してからそちらに向かう。…が、もし何か危険があったら、私のことは構わず洞窟を閉めてしまっても良い。……いけ! 次期村長、私の息子ホークよ!」


 と、村長である父親の的確な指示のおかげで村人をここまで誘導しながら避難を進めることができた。


(父さん……頼む、無事でいてくれ。そしてアリ、君は大丈夫なのだろうか)


 ホークには二つの不安があった。


 一つは父の安否、もう一つはアリの安否である。

 ホークはアリのことを好いていることを自覚している。故に、この惨事におけるアリの身が心配で仕方ないのだ。


 先ほどからやってくるのは、足を悪くした村人や年寄りといった、最後に避難地に着くであろうもの達ばかりで、ホークはアリに何かあったのではないかと考えていた。


(…アリ、どうしてまだ来ないんだ…。もしかして、本当に何かあったんじゃ……)


 ホークの不安が募る。胸が痛み、呼吸をするのも苦しい。


 そんな時ーー。


「ホーク、ホーク!」


(ーーアリの声…!)


 遠く、村の方角よりアリの声が聞こえた。


「アリ! もうすぐだ! 僕の声を頼りに、まっすぐここまで走ってきて!」


「はぁ、はぁ…わかった」


 荒い息遣いと共に、暗闇からアリの姿が見える。

 憔悴しきった、まさに顔面蒼白といった様子。

 

 幼馴染の無事をこの目で確認し、涙が出そうになるのをグッと堪える。


「…アリ、無事だったんだね。…どうしてこんなに遅く……いや、とにかく今は、無事でよかった。早く洞窟に入って。僕は父を…村長を待つからーーえ?」


 その時、月明かりに照らされて、アリが何か大きなものを背負っていることに気がついた。


 それは、テイラー。首の後ろから矢を受け、血を流し絶命する、アリの母の姿だった。


「ーーうぇぷッ」


 思わず胃がひっくり返りそうになる。


 ホークはここにくるまで、直接的に人の死に触れたことがなかった。故に、死者のいる現実と、彼の見た最初の犠牲者がアリの母であったことで彼の心は激しく揺さぶられたのだ。


「うん、わかったホーク。お母さん、もうすぐ着くから。もう歩ける? お母さん?」


 そして、アリはその現実にまだ気づいていない。


(どうしたらいい……)


 時間の猶予はなく、ここはそのうち、ゴブリンで溢れかえるだろう。しかしーー。


(洞窟内、他の村人もいる中で、アリが正気を失ったら、他の家族を失った村人も精神的にどうかしてしまうかもしれない…)


 それに、洞窟内で何日過ごすことになるのかもわからないのに、母の死体と過ごすなど、考えたくもない。密室で、死体が腐れば病気の元となる可能性もある。


 ホークはその瞬間、人生で最も思案を巡らせた。


 そして、ホークは深く息を吸い込んだ。アリのために、ここで真実を伝える決意をしたのだ。


「…その、アリ」


「はぁ…はぁ…どうしたの、ホーク」


 疲れ切ったアリの顔。洞窟まで無事に来られた若干の安堵を含む顔を見て、ホークは目頭に熱いものを覚える。


「…落ち着いて聞いて欲しいんだ。テイラーさん、アリのお母さんは、もう………亡くなっている」


「ーーぇ? なにを言っているの? お母さんはまだ…」

⬛︎ーーーーーーーーーーーーーー

・アイテム/【テイテツソウ】

〈説明〉

馬の蹄を模したような、桜の花びらのような花をつける草。

風の強い地域に好んで生育しており、成長速度が早い。

素材としてポーションなどに使用すると、微力の俊敏な効果を得ることができる。

ーーーーーーーーーーーーーー⬛︎


ルウ「……テイテツソウのポーションを馬などに使用して、輓獣としての能力を底上げするのに使われたりするので、案外高価で取引されることが多いんですよね」

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