第29話:長く続く轍。
今日は2本投稿。
明日からは1〜3日に一話を目指して投稿できたらなと思います( *¯ ꒳¯*)
side:ルウ・ブラン
広大な草原が一面に広がり、森に吹くジメジメとした風とは真逆の爽やかな風が、黄金の草を波のように踊り揺らす。
ついに俺たちは何事もなく森を抜け、聖ゴーフレット王国領の平野へと出ることができた。
俺はタコヤキ君の肩から降りて地面の感触を確かめる。
うっひょ、なんていうか、日本にはないザ・平原って感じの地面してるわ。…いや、北海道とかにはこういう感じの場所あるのかもしれないけど、俺、本州住みだったから知らないし。
とにかく、森から出れてなんか開放的で最高の気分!
「…ホークさん。ここから聖ゴーフレット王国を目指すんですよね」
「そうです。あとは平野を突き進めばそのうち街道に出ると思うので、もう一息です。街道まで出てしまえば道沿いに進むだけですからね」
なんか、山場を超えた感じがして安心するねい。
「ブランさん、これだけ見渡しが良ければ、魔物の早期発見も可能ですし、少々速度を上げて進みませんか?」
お、ナイス提案。俺も同じこと言おうと思ってた。
やっぱり、ホークはちゃんと他の村人のことを見れているな。
退屈している子供老人を気遣えて偉い。それに、俺の装備の全体回復の効果も考慮して、もう少し速くしてもいいって言ってるんだろうから、やっぱりこいつは周囲の様子を確認するのが上手いんだろうな。
「ブランさん。聖ゴーフレット王国には、特有のゴシック建築が見られるんです。…それは先代の王が築いた荘厳な教会や、城館なんかにも見られるみたいで、建物の構造をより複雑に、美麗にしていくことで権力を表していたみたいな話があってーー」
あ、これただ歴史オタクが暴走して聖ゴーフレット王国に早く行きたいだけだわ。草生える。
「…そ、そうなんですね」
た、助けてアリぃ。
俺はアリに助けを求めるように視線をやる。するとアリはやれやれと言った様子でこちらへ寄ってきた。
「ホーク、ゴーフレット王国に対する思いはわかったから指示をちょうだい? みんな待ってるのよ。ルウさんもホークの火に油を注ぐようなことはやめてよね」
「…す、すいませんね」
「これからがいいところだったのに…」
俺別にホークの火元に近づいたつもりはなかったんだけどな…。
とりあえず、ホークや。俺たちにどうしたらいいか教えてくれよ。
「そうですね…まずブランさん。タコヤキ君をどこかに控えさせることはできるんですか?」
ん?
なんでタコヤキ君?
俺の足兼見張り台として役に立ってたと思うけど、もしや俺が歩かずにずっと座ってたことに腹立ててる?
「…控えさせることはできますけども、どうしてでしょうか? 身長の低いルウさんが周囲を見渡すために必要だと思いますが…。ずっと座っていて、不快にさせてしまいました…?」
「あ、いや。ルウさんが高所から見渡すために乗っているのはわかっているんですけど、この先は平野なので、タコヤキ君に乗らずとも見通しが悪いということはあまりないと思うんです」
まあ…確かにそうだけど、嫌だね。俺は降りたくない。だって歩くの面倒くさいもん。
俺が不満げに口を開こうとした時、俺の横から鋭い言葉が矢継ぎ早にホークへと向けられた。
「待ってホーク。聞き捨てならない。タコヤキ君をどこかにやるのは、私は賛成できないよ」
お、おおアリ。
なんだか今日はとっても感情的じゃないか。
「今まで安全に森を抜けられたのは誰のおかげ? ホークひとりでソテー村からここまで欠員なく移動させることができた?」
「い、いや…タコヤキ君が邪魔だとかそんなつもりは…」
「とにかく、訳も無くタコヤキ君をどこかにやるのは、私反対だから」
アリはホークから目を逸らしてプイッとそっぽを向いた。
アリはクリスタルゴーレムのタコヤキ君に誰よりも信頼を置いている節がある。
以前、悪夢に閉じ込められた時にタコヤキ君と共に死戦を潜り抜けたために硬い絆でも生まれたのだろう。
それだけにタコヤキ君のこととなると少々強い言葉を使うこともある。
俺がタコヤキ君に雑用を全て任せていると「ルウさん、タコヤキ君にばかり任せるんじゃなくて私にも何か手伝えることはない?」と負担を気にして聞いてきたほどだ。
しかしまあ、勝手にキレてるアリは置いておいて、なぜタコヤキ君を控えさせた方がいいのかをホークに聞くか。何かしら訳あっての提案のはずだしな。
「…それでホークさん。タコヤキ君を控えさせた方が良い理由を聞かせてくれません?」
ホークはがっくりと下を向いた姿勢から、起き上がりながら口を開く。
「あ…はい。えっと、この先は見晴らしがいいんです。そして街道もあるので、通行人と出会う可能性も増えてきます」
「…ふむふむ、そうですね」
「ブランさんには悪いかもしれないですが、タコヤキ君のその容姿を、ただの一般の通行人が見てどのような反応を示すでしょうか…?」
どんな反応…?
どでかいクリスタルのゴーレムが歩いていたら…。
「…驚かれ、怖がられますかね」
「そうです。僕も最初にタコヤキ君を見た時は、その姿にとても驚きました。もしもですよ? もしも、聖ゴーフレット王国の騎士の方にでも見られたら、最悪、魔物を連れた不純な輩だとも思われかねませんよね?」
「…むぅ。確かに、言われてみればそうですね…」
「…僕たちはあくまで、助力を乞いに行くんです。…その時、印象が悪く映るのだけはどうしても避けないといけません」
「…信頼を築くなら、まずは装いから。と言うことですか」
「はい。…なので、申し訳ないんですが、タコヤキ君を下げてもらえませんか…?」
「…納得しました。ルウさんも下げることに同意ですよ。…では、少々お待ちいただいて…」
俺はタコヤキ君の方を振り返って、戻るように念じーー。
「……」
そこには、タコヤキ君に寄り添ってこちらを睨みつけるアリのすがた。
「…何しているんですか、アリさん」
「……やだ」
「…タコヤキ君、戻ってください」
タコヤキ君の足元に現れた魔法陣の上で光の粒となって消えるタコヤキ君のそばでは、どこまでも響くような大声が鳴り響いたのだとか。
ーーそれから数日後。
7日目の朝、ついに朝霧がかった平野の向こうに聖ゴーフレット王国の全貌が見え始めた。
石造りの高い城壁が反り立ち、荘厳で巨大な建造物も視認できる。
「…ついに、見えましたね。聖ゴーフレット王国が」
俺があまりの光景に呆然と呟くと、俺の後ろでアリとホークも同様の呟きを漏らしていた。
「ホーク、すごいね。私たちが木の上で見ていた国、こんなに大きかったんだ」
「…本当に、圧巻だ……」
その他、誰しもが眼前の光景に圧倒されながら、達成感と感嘆の息をつく。
ついに旅が終わろうとしているのだ。
その事実にルウは心を躍らせ、村人たちも複雑な思いを胸に、心を躍らせる。
「…さて、もう一息です。がんばりましょうか」
ルウの声に、村人たちは頷き、牛車を引くガロウルスに鞭を打つ。
ルウたちの通った後には、ソテー村から続く長い轍が引かれていた。
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・アイテム/【遡行魔術の砂時計】
〈説明〉
ゴーレムなど、魂を持たぬものに使用することで壊れた状態から元の姿に戻すことができる砂時計。
砂に見える一粒一粒の光は、生と死を繰り返す不死鳥の灰であると言われている。
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ルウ「……これ、めちゃめちゃ高いんですけども、それでいて消耗品なんですよね…。なのでルウさんは、同じ効果で何度も使えて、尚且つ比較的簡単に手に入れられる〈遡行魔術の短剣〉を推しますかね」




