表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/61

第1話:現世にて降り立つ。

初日なので2本投稿です。

 俺は、知らない場所で女になってしまった現状をどうにか理解しようと、とりあえず周囲を見渡す。


 風化して、ところどころに苔を生やしたレンガが積み上げられた、まるで中世建物の一室のような空間。

 レンガ作りの壁には、古い彫刻やレリーフが彫られており、まるで自分が実際に見たこともない、中世ファンタジーの世界に入り込んだのではないかと錯覚する。

 

 壁面にある、いくつかの窓は割れており、そこから不規則な光が光芒として漏れることで、どこか幻想的な雰囲気を作り出している。


 光を頼りに天井を見てみれば、古びた木製の梁が頭上に架かっており、総合的なひび割れや変色具合から、やはりこの建物らしきものはかなり古いものであると推察できた。


「……んだこりゃ、マジで意味わからんくて笑う」


 俺が今いる場所は部屋の中でも小高くなった場所のようで、部屋の壮観を一望できた。


 壁と同じく、古いレンガの床には、木製の古い椅子が散らばる。その背もたれは曲がりくねったアーチのようなデザインで、日本ではあまり見ないデザインだなと思う。


 レンガ作りの建造物で、中世な窓や、何かを見るためだったのか大量に配置された椅子。


「……まるで、教会みたいな。と言うか、ここ教会だろ」


 どうやら、俺はマジで知らない教会にいるらしい。


「どういうこったいねん……。よっこいせ…」

 

 立ち上がってみれば、視線に映る景色がいつもよりも低い。


 再び視線を落とす。


 ーー目に飛び込んできたのはやはり、川畑優樹(かわばた ゆうき)のいかつい胸筋(自称)ではなく、若干の起伏のある、しなやかな体と、それを上から包む淡い薄紫色のローブ。


「へ?」


 どこか見たことのあるその服装に、脳に電撃が走る。

 その拍子に頭が動きーー視界の端に映る、幾つもの細い、クリーム色の糸。

 それに触れようと、手を伸ばすとーーそこには細く美しい指先と、小さな手のひらが広がっている。


 その瞬間、俺の中にある思いが心臓を激しく揺さぶり、一気に興奮する。


「ーーっっまさか、鏡はないか!」


 地面に散らばる、割れたガラス。

 上に積もった埃を、その美しい手ではらい、自分が反射するように向ける。


「……まじか」


 反射するガラスの向こう、映り込むのは美しいクリーム色の長髪と、きらめく青の瞳を持つ、美少女と言って差し支えない者の姿。

 彼女はガラスの向こうからこちらを覗いており、呆然としている。

 その姿が自分自身であることは間違いないのだが、受け入れることに時間がかかる。


 興奮混じりに息を吐きながら言う。


「俺は、俺は今……ルウ・ブランになっているんだ…」


 間違いない。ガラスに映るのは、頭の先から足の先まで、何度も、何度も見た、作った、カスタムしたマイ・フェイバリット・ロリ。


 ルウ・ブラン(もう一人の自分)、その人だ。


「……んかわぃぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃいいいい!!!!!」


 俺はそこから数分間か数時間か、ガラスに映る自分を見ながらため息を漏らすのだった。



▶︎▷▶︎▷▶︎▷▶︎▷


side:ルウ・ブラン



 ーーガラス片で自分の姿に見惚れてからはや数時間。


「……大体の状況の把握は、終わりましたかね」


 やっぱり可愛いいい! ロールプレイは最&高。すなわち最高。


 俺はコッテコテのロールプレイを楽しんでいた。

 

 とりあえずわかったことは、この体は間違いなく、俺がAlhantriskで愛玩していたゲームアバター、ルウ・ブランで間違いがないと言うこと。


 容姿はガラス片で確認したし、後に紹介する〈ストレージ〉から引っ張り出した鏡で確認したけど、やっぱり最も尊きルウ・ブラン様、そのまんまでしたわ。はい最高。

 

 ほいで、動きを確認するために小走りしたんだけど、これが結構問題だった。

 ていうのも、俺、もといルウ・ブランの身体能力は、233Lvの状態になってるっぽくて、小走り程度のつもりが教会内を埃まみれにするスーパーダッシュになっちまったのよ。

 何が問題かって…? 俺、ハウスダストアレルギーなんだよ!


 …んなことはどうでもよくて、真の問題は、この力加減が結構難しいってことね。

 多分今、飲食店でバイトをしたら皿洗いで皿を割りまくると思う。ガソスタでも、洗車に力込め過ぎてフロント凹ませちまうかもな。


 まあ…徐々に慣れよう。

 

 ちなみに、レベルとかなんでわかったかっていうと、自分のステータスを確認したからな。


「……口にするのは恥ずかしいですが、〈オープン・ステータス〉」


 するとほれ、自分の情報がフローティングキャストになって、空中に表示されるのよ。ジロジロみんなよ、俺の嫁のステータスだぞ。



★ーーーーーーーーーーーーー☆

・名前:ジョブ:Lv/【ルウ・ブラン:魔法剣士:233Lv】


〈種族〉

・夢渡り


〈能力値〉

・[HP:31,530/30,530](+1,000)

・[MP:18,030/18,419]

・[筋力 :554](+250)

・[器用さ:433](+150)

・[耐久度:191](+350)

・[素早さ:324](+150)

・[賢さ :398](+200)

・[魅力 :507]


〈カスタムスキルツリー〉+3

◆【ソード・マーグヌス】

[かぶとわり][ビッグバン][葬送無双][雷鳴破裂斬][急所突き]

◆【オール・エンチャンター】

[オール・エンチャント][エンチャント持続時間+120秒][常時属性ダメージ][オーバーダウン][重ねがけの技法]

◆【極域風魔術】

[ウィグリッド][ベイグルーン][カタストロフ・タイフーン][常時風属性ダメージ][風属性ダメージ+150%]


〈パッシブスキル〉+3

◇【魔法剣士】

[エンチャント強化][エンチャント速度up][被ダメージ-10%]

◇【ソーサラー】

[魔術ダメージ+200%][魔術被ダメージ-30%][低域魔術全使用可能]

◇【ホーリーナイト】

[ホーリースマイト][ヒーリングレイン][ディバインシールド]


〈装備〉

●【頭:アストラル・バンド】

[消費MP-5%][オートヒール][賢さ+120]

■【体:リュクス・ガーブ】

[属性被ダメージ-10%][耐久度+200][HP+1000]

〓【腕:アルトラル・バングル】

[詠唱短縮][器用さ+150][賢さ+80]

▼【脚:リュクス・グラディエーター】

[状態異常耐性][耐久度+150][素早さ+150]

▲【武器:エレドリームレイピア】

[属性ダメージ+50%][防御貫通][筋力+250]

◆【外套:ー】


〈装飾品〉+5

★【光の指輪】

[被ダメージ-5%]

★【魔術師のペンダント】

[魔術ダメージ+50%]

★【神秘の崩壊石】

[ラスト・フレア]

★【天使のはね】

[被ダメージ-5%]

★【縁起のブレスレット】

[オート・ヒーリングレイン]


〈付与効果〉

・ー


☆ーーーーーーーーーーーーー★



 あ、これ一応【夢幻廻廊】の高難易度ボス向けに組まれた、魔術系統特化のガチ構成ね。

 ……とは言っても、本物のガチガチのガチには到底敵わないんだけども。


 夢幻廻廊は素材やら装備が手に入るコンテンツね。説明いるか? ま、説明出しとくか。



⬛︎ーーーーーーーーーーーーーー

・マップ/【夢幻回廊】

〈説明〉

場所は【原初の夢(アルハントリスク)】の上空に浮かぶ門の先である。

かつて神は、現世で争う天使と魔人を、無限に続く夢の中へと封じた。

廻廊に点在する天使・魔人を倒すことで装備強化素材や能力値強化アイテムなどが手に入る。※アイテム〈夢のかけら〉を捧げることで、戦う相手を指定可能。

ーーーーーーーーーーーーーー⬛︎



 てな感じね。本当はこれ行きたかったのに、トラックに轢かれて知らんところ来てわけわかめって感じ。


 んまあ、とりあえず今は現在の説明が先ってことで。ステータス確認後に、ステータスが開けるならその他の機能も使用可能かなって思い立ったのよ。


 んで、〈ストレージ〉を呼び出してみたわけ。


「…〈ストレージ〉」


 そう呟いたら、俺の前に、ゲーム内でよく見る2D画面の正方形のスロットがそのまま空中に貼り付けられたような形で出てくんの。ちょっとシュールで草生える。


 スロット確認した感じ、アイテムはゲームの時のまんま入ってたわ。


 アイテムを使用するには、どうやらこの2D画面を指でタッチすればいいらしくってさ。なんでそこだけアナログなんだって思う。


 でまあ、試しに〈王宮のベッド〉やら〈鏡〉なんかを出してみたのよね。


 あ、ここで鏡使って俺自身がルウ・ブランであるかの詳細な確認をしたんだけど、その説明いる? 結構ハードなことまでーー閑話休題。


 出したアイテムは、アイテムに触れながら「…〈ストレージ〉」と呟けば、最初からそこに何もなかったかのように消えた。どうやら、ストレージに戻ったらしい。


 そんなこんなありまして、容姿と動きの確認やら、ステータスやらアイテムやらの確認も済んだと共に、俺自身がルウ・ブランになっていると確信したのだった。

⬛︎ーーーーーーーーーーーーーー

・アイテム/【薬草】

〈説明〉

森林や草むらなど、ある程度植物が群生する場所であればどこにでも生える、生命の持つ回復力を促進させる成分を持つ草。その種類は様々あるが、回復力を持つ草、もしくは精製後薬効を呈する草木は総じて“薬草”と称される。

ーーーーーーーーーーーーーー⬛︎


ルウ「…序盤の回復アイテムといえば、これですよね。店でも安価で売られていますし」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ