小日向綺麗の独白【一】
望月くんを初めて見た時、最初に抱いた印象はなんだっただろう。
などと考えてしまうくらいには、望月くんに対する印象は、はっきり言って薄い。
というより、いっそ「無」って感じ。
むしろ無味無臭?
いや、こんなこと言ったら失礼かもしれないし、本人に言うつもりもないけれど、それくらいなんにもないのだ。
でも、こればっかりは仕方ないと思う。
だって望月くんは、あたしを含め、だれとも交流しないタイプの男の子だったから──。
一応言っておくと、別にイジメられているわけじゃなく、ましてハブられているわけでもなくて、望月くん自身が独りでいたがるのだ。
なんて知った風に言っているけど、望月くんにオタバレするまでは、正直なんとも思っていなかった。
それこそ、名前すらろくに知らなかったくらいに。
だから、あたしが隠れオタクだって事を秘密にしてくれると言った時、自分の耳を疑った。
だって、自分でも言うのなんだけど、あたしみたいなギャルがニチアサ枠の幼女向けアニメに夢中になっているなんて、どう考えても話のネタにされそうなのに。
それはまあ、望月くんがあまり友達を必要しないタイプだったから、わざわざだれかに言いふらす気もなかっただけかもしれないけれども。
だからこそ、望月くんから「友達になってほしい」と頼まれた時はすごく驚いた。
なにか事情があるみたいだったけれど、それでもあたしみたいなタイプに頼み事するなんて──いくらあたしがオタクだって言うことを秘密にしてくれる代わりになんでもすると言ったとはいえ──望月くんが友達を欲するとしたら、もっと大人しいタイプの子を選ぶとばかり思っていたから。
そしてこの日から、あたしは望月くんに興味を抱くようになった──。