異世界でも男女が仲良くしてるのを見ると、この後どうなるのーって応援したくなるよね?
今の状況はこうだ。
集落の近くの森の中、私たちはゴザちゃんに魔法について教えてもらっている。
相変わらず植井君とゴザちゃんは仲良くていい雰囲気だなーって……。
なんだか応援したくなってきちゃったよ。
「ゴザちゃん、私にも魔法って使えるのかな?」
「うーん、使えてる……けど使えないっていうのが正しいかなぁ」
「たぶんお姉様はもう身体強化の魔法を使えてるんだと思う」
「まぁ……あんな戦鎚を振り回せてるもんね」
「詠唱なしで発動しっぱなしってのは聞いたことないけどねー」
異世界転移特典だから特別なのかもね。
「それとは別に、火や水を操るには適性がいるの」
たしか、魔法適性というのはギルド登録の際に調べていた。
その結果がドッグタグに刻まれている。
「私は火が[C+]で土が[C-]だよっ」
「だから爆発と岩なんだね、私は土属性が[E+]だって」
「ウェ……俺、全属性適性無いんだけど」
「ぷぷっ、ウェイくんザコ……ざぁこ…」
「うるせぇこのメスガキ!」
「何よ私の方が歳上なんですけどーっ!」
どうやら魔法が使えるのは[D]以上らしい。
「まぁ……適性があっても訓練しないと無駄なんだけどねー」
「ってことはお前、訓練かなりサボってたろ?」
「ウェイくん失礼すぎっ!私の華麗な魔法見てなかったのー!?」
「見てたから言ってんだよ、悔しかったらマトモな魔法使ってみろウェーイ!」
「なんだとこのやろーっ!」
この二人は本当に仲がいいなって思う。
なんだかお似合いって感じだ。
「そもそも魔法って何なの?」
「うーん……たしか先生は“自然界の使役”って言ってたかなー?」
この様子だと、あまり真面目にお勉強してたわけではないみたい。
「やりたい事を強くイメージして“体内の魔力”で“自然界の魔力”にお願いするの」
「そんじゃ呪文詠唱って何なの?カッコつけてるだけ?」
「ウェイくん感じ悪いよ?イメージを固めるの手段なの!」
想像と現実を重ねて現象を起こすのが魔法ってこと…?
なら、イメージが具体的で理論的なら成功率がグンと上がるのかもしれない?
「植井君って化学の成績悪くなかったよね?」
「まあ…普通に平均点だったけど」
「その辺にあるもので簡単に爆発起こせるのって何かな?」
「ウェイ……どゆこと?」
これは仮説だけど、爆発のイメージが曖昧だから成功率が低いんだと思う。
なら、ゴザちゃんに爆発の原理を教えれば威力と成功率が上がるかもしれない。
たぶんだけど、術者が結果を確信しているのが重要なんだと思う。
「火薬抜きなら天然ガスか粉塵か…いや、水素もいいかな、電気分解のやつ」
「とりあえずどれでもいいや、ゴザちゃんに教えてあげてくれる?」
「まぁいいけど……」
――数分後――
「さんそ……すいそ?なにそれわっかんないよー!」
ダメでした。
悪魔とか魔力とか言っている人に化学の話は分からないよね。
まぁ、私も半分くらいしか分かんなかったけど……。
はい、見栄を張りました。
ほとんどわからなかったです。
「そんなに爆発に詳しいなら自分でやればいいじゃんさーっ!」
「それができねーからお前に説明してんだろ?」
「何か、植井君のイメージをダイレクトに伝える方法でもあれば……」
「「「ある!!」」」
本一冊分の情報量でさえ一瞬で流し込める“ウェイ”ならそれができるはずだ。
「ウェイ!」
「なるほど!……なるほど?」
何度“ウェイ”しても、覚えたそばから忘れてしまう。
ウェイ直後は成功率も高いけど、時間が経つほどに成功率は下がってしまった。
数時間の試行錯誤の末にたどり着いた結論はこうだ。
魔力が高まって魔法を発動する瞬間に、爆発の原理と結果のイメージを“ウェイ”で流し込む。
ゴザちゃんはそのイメージを“自然界の魔力”に伝えるだけでいい。
「ウェイくんやるよーっ!『ウェイ!』10連発破ぁ!」
結果は大成功だった。
10発中10発全部が“大当たり”。
これはすごい成果だと思う。
「でも、相変わらず射程ゼロなんだよな」
「まさかウェイくん、魔法使いに前線に出ろとかいわないよね?」
「はっ……お前と一緒に?心中はゴメンだぜ」
「その時は死ぬのはウェイくんだけだよっ!盾につかったげるー」
「お前こそ自分の爆発で死んだりするな……ん?」
植井君がゴザちゃんの顔を覗き込んでジロジロ見ている。
年頃の女の子に対してちょっと良くないんじゃないかな?
「ほぼゼロ距離で何度も爆発してるのに、なんで怪我がないの?」
言われてみればそうかもしれない。
爆発しているのは手に持った短いステッキの先端だ。
めいっぱい腕を伸ばしても怪我は免れないと思う。
「近接爆破に指向性をもたせるのは基本中の基本だけど?」
言われてみればそうかもしれない。
爆発を使うならなんて危なくて使えたものではない。
「指向性……圧力……射出……」
植井君がブツブツ言い始めた。
「なあロリっ子、爆発の指向性ってもっと絞れるか?」
なんだかすごく楽しそう。
まるで悪だくみする子供みたいだ。