表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なろうラジオ大賞4短編集

俺の妹は天才になりたいらしい

作者: ミント

「何やってんだ、香奈子」


「見てわかるでしょ。逆立ちしながら、足でやかんを持とうとしているの」


「わかるけどわかんねーよ」


 言葉通りの行動をしている愚妹に、俺は溜め息をつく。香奈子はそんな俺に、ひっくり返ったままぎゃんぎゃん喚き散らした。


「聞いてよお兄ちゃん。今日、クラスの男子に名前をさんざん馬鹿にされたの。『大場香奈子はお馬鹿な子』って」


「『大場』っていう苗字でそんな名前つけた両親が悪いな」


「ムカついたからその男子たちの股間を思いっきり蹴り上げてやったわ。全員、蹲ってしばらく動かなかった」


「ごめん、やっぱ父さんと母さんは悪くない。悪いのはこの妹の頭だけだ」


 そんな俺をよそに香奈子は、自慢のロングヘア―を床に垂らしたまま話し続ける。……頭に血が上らないのだろうか?


「だけど、私わかったの。馬鹿だ、って言われるぐらいなら頭が良くなればいいって。天才になって、アイツらを見返してやるんだから」


「……それがなんで逆立ちに繋がる?」


「馬鹿と天才は紙一重って言うでしょう? だから私もこうやって、凡人が思いつかないようなことをやっているの」


「今のお前を見たら十人が十人、『馬鹿がいる』と思うぞ」


 そこでようやく、妹が「なんですって!?」と言いながら逆立ちから体を起こす。


「っ天才は周囲に理解されないものよ……だから私も人と違うことをすれば、天才になれるはず……」


「んなワケねーだろ、っていうかやっぱり立ち眩みしてんじゃねーか」


「日本の教育制度は、個性を潰す傾向にあるわ……」


「まず、俺のツッコミを潰さないでくれるか」


 ふらふらする妹は、俺に支えられながらそれでも持論を展開し続ける。


「エジソンもアインシュタインも、学校では落ちこぼれだった……だから私にも、学校では見つけられない凄い才能が隠されていると思うの」


「まぁ、学校だけが全てじゃないってのはわかるけどな」


「私も秘められた才能を開花させれば、天才美少女として周囲に崇め称えられるはずだわ……」


「そういうのを『早計』っていうんだぞ」


 やいのやいの言っていれば、台所についたのでとりあえず俺は妹を座らせる。それから、何か飲み物を探そうとすれば――




「お兄ちゃん、アイスコーヒー作って。前に開けたインスタントコーヒーが約47杯分残ってるはずだから。お湯と水の比率は3:5ぐらいよ。よろしくね」




 細かく注文してくる妹に、俺は呟く。


「やっぱコイツ、天才かもな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです! 全く最初から『凡人が思いつかないようなこと』でした(笑) にしても数字に強い女子ですね~理系か!?(笑) 読ませていただきありがとうございました。
[一言]  冒頭から引き込まれますね。逆立ちして足でやかんの妹…その謎を解こうと読み進めて「んな、アホな」で最後に「ええ~っ」です。  面白く読ませていただきました。ありがとうございました。
[良い点] バカにされれば股間を蹴り上げ、 逆立ちをしてみる妹…かっこいいですね。 将来は大物になりそうだな、と思いました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ