表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/173

16

 神代の家と、凌の処遇を巡ってもめにもめている様子。その元凶を家に引き込んでしまった良光は、話にどう関わればいいのか悩んでいた。

「お? 凌。おはよう……どうした? 学校だろ」

「だるいからサボる」

 パジャマで降りてきた凌に、良光はあっそと呟き、朝食を再開させる。

「あれ、凌くん。学校は」

「だるいから行きたくないんだそうだ」

 お弁当箱に蓋をしようとした彩香の手が止まる。電話横にある引き出しを開けると、体温計を探しはじめる。

「あった、ほら」

 差し出された体温計に、凌は舌打ちした。

「体温計の使い方くらいわかるでしょう。ほら、脇上げて」

 凌の襟首を引っ張った彩香は、体温計を差し込むと腕を叩いた。

「仮病だと思ってんですよね。もういいです。行きますから」

 引き出しという引き出しを開けている彩香は、凌の抗議を手のひらでかわす。

「どれ、見せてみろ。あー、おふくろ。結構熱あるぞ」

「ちょっと、待って。どっかに病院のチラシが……」

「片付けないから、そんなことになんだよ」

 彩香は引き出しを漁る手を止めて、良光の手元をのぞき込む。

「あらやだ、ほんと……チラシ、探しとくから、二階からお布団持ってきてあげて」

「おふくろ! クローゼットの中?」

「そう! いつもチャタちゃんが寝てるやつ」

 二階に上がった良光は、余っている布団を抱えて階下へおろすと、畳コーナーに敷いた。

「まだ、チラシ探してんのかよ。捨てたんだろ」

「あった、ありましたー」

 息子の呆れた声に、彩香はチラシを掲げ見せる。

「凌くん、お弁当作っちゃったから、食べられないなら容器取り出して冷蔵庫に入れておいて。冷凍庫に、レンジで温めるだけのうどんがあるから、食欲なかったらそれ食べなさい」

「え、あ、はい」

「熱、三十九℃近いから、もし途中で具合悪くなったら遠慮せずに電話してくるのよ。今日、早く帰ってくるから。病院は一人で行ける? 大丈夫よね? はい、じゃぁ行ってきます」

 あっという間に行ってしまった彩香は、凌の頷きも見ていなかったことだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ