表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/173

158

 都合二ヶ月半ほどの入院後、良光はリハビリ施設に移ることになった。

 みどりは、自分の母親の手を借りながら三人の子育て中。今年予定されていたライブのうち、残り三十本ほども吹き飛んでしまっている。それもあって、早く動き出さなければと良光には焦りがあった。

「神代さん、どこか体勢辛くはありませんか?」

「大丈夫です。リハビリっていつからですか? 子供たちにも早く会いたいし」

 民間の救急車を利用して、良光は転院移送された。送ってきた元の病院の医療スタッフと施設のスタッフ総出で、ベッドからベッドに移される。

「結局、名前何にした?」

 越智の質問に、良光がベッドサイドに手を伸ばす。それを見て、近くにいた看護師は写真盾を取って手渡した。

「生き返った後、病室から見えた夕日が綺麗だったから……あかね。早く会いたいな」

 リハビリはいつごろからだろうと、良光は質問に答えない人たちの顔を見る。

「みっちゃん、体の具合はどう?」

「アイス食べたい。アイス。ねー? 食事制限ないんだろ?」

 食べたいと言い続けて、二ヶ月半。普通の食事は諦めるから、いい加減食わせろと言いたくもなる。

「アイスはもう少し我慢してくださいね」

「どりちゃん、アイス食べたい。アイス、アイス食べたい!」

「先生に聞いてあげるね? 我慢しようか」

「やーだ、アイス食べたいの。アイスがいい!」

 みどりに宥められた良光は、機嫌が悪そうにプイッと顔を背けてしまう。

「皆さんちょっと……神代さん、何かあれば、ナースコールを押してくださいね」

 外に出されたみどりと彩香、それから児玉や生田とメンバーは、主治医と名乗る坂本を囲む。

「えっと……ご家族だけの方がいいですかね?」

「いや、全員で聞きますけど……何かあったんですか?」

 言いづらそうな坂本に、生田が心配そうな顔をして質問をした。

「かなり後遺症が重いと申し送りで聞いていましたけど、今見ただけでも結構重いと思います」

「……え?」

「心停止の影響によって脳にダメージがあったみたいで、感情の抑制が効かない状況なのかもしれません。それから、リハビリしても寝たきりのまま――」

 室内から聞こえてきた物音に、坂本は口をつぐむ。その場にいた人たちを近くの会議室へと招き入れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ