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レコーディングや撮影を慌ただしく終えての旅行。
子供二人を彩香に預けて、みどりも帯同することが決まった。
「次あるとしたら、先生の結婚式か」
「俺は」
「どう? 順調?」
顔を真っ赤に染める井戸に、面白がった良光が頬をつつく。
「俺には聞かんのか」
「いや、香月に付き合いきれる奇特な女性がいるとは思えん」
「良光に付き合いきれる奇特な女性がいるなら、俺にだっているかもしれないだろ!」
「ない。香月くんは、もう少し計画性を持って行動してよね。それに、こんな優しいみっちゃんとは全然違うもん」
「それは、どりちゃんが俺に優しくしてくれるからだよ」
相変わらず、周りが見えていない。生田は、搭乗時刻を告げながら良光を引きはがした。
随分と賑やかな一行に、離れて見ていた越智が笑う。
「本当に仲いいわね」
「そう? イネちゃんは、お友達とああはならない?」
横にいるイネスの友達である二人を見やる。一人は、越智とも集まりで顔見知りのえりな・グレーコ。もう一人は、今日初めて会った多田亜香里という女性。二人とも現役のモデルである。
「皆で写真撮りたいなぁ」
「かまいませんよ」
さっきからソワソワしていた多田に、越智が訊いてみると引き受けた。
出発前に写真を撮った多田が、その映りを確認して嬉しそうに頷く。
「これ、アップしても?」
「どうぞ」
おっとりとほほ笑む女性に、おっかない集団じゃないかと怯えていた多田の緊張も緩む。
「やっぱり行かない」
「俺だって飛行機十時間も乗りたくないんだ、我慢しろ!」
行きたくないとごねる香月に、良光が呆れた。