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無属性の六流星

「おい!なんだこの店!ここには店員がいねえのか!」


入り口から怒鳴り声が聞こえる。

入ってきた男は上背が高くてガタイもいい、力こそが全てと言わんばかりの体格をしている。

私はこの人を知っている。

とてもめんどくさい相手で、今一番会いたくない人物だった。


「お、おう、すまんな兄ちゃん。今いくよ」


ちょうど近くにいたオスカーさん(ギルド所属の冒険者)が対応しにいく。

だが何が気に入らなかったのか、男はオスカーさんを蹴り飛ばす。

オスカーさんはそのまますっ飛び、近くにあったテーブルやイスは破壊されてしまった。


「て、テメェ!何しやがる!」

「お前こそなんだその態度は?俺を|《六流星》《ステラ》が一人、格闘王(インファイター)のロックと知っての狼藉(ろうぜき)か?」

「んな!?《六流星》だと!?なんでこんなところに…」

「別に俺がどこにいたっていいだろうが。おっさんには関係ねえ」


《六流星》


先程ヤマトさんにも説明した、この世界に住む人なら誰もが知っている称号。

この世界に存在する5つの属性(火・水・土・風・雷)と、どのカテゴリにも当てはまらない6つ目の属性(無)があり、人はみんなこのいずれか6つの属性を必ず持っている。

そのそれぞれの属性の頂点に立つもののみが与えられる最強の称号が《六流星》なのだ。

《六流星》の称号を与えられたものは国と同等の権力を持ち、国家間の問題にさえ口を出せるほど偉いのだ。


「なんかあれこれ話してるうちに向こうから来たね」

「そうですね…。私、《六流星》の中でもあの人が一番苦手なんです」

「傍目から見てたら俺も苦手なタイプだなって思う」

「他の人もクセは強いけどまだまともなんですよ。とにかく、ヤマトさんは極力関わらないようにお願いしますね」

「なるべくならそうしたいけどね。ってかあいつなんかこっち向かってきてない?」


ヤマトさんと話しているとロックさんがこっちに向かってきている。

近くにつれ、私は憂鬱な気分になる。


「ソニア!会いにきてやったぞ!」

「あらロックさん、お疲れ様です」

「なあソニアよぉ、今暇ならちょいと付き合ってくれねえかい」

「いえ、お仕事があるので…」

「仕事なんていいじゃねえか。どうせまともに動ける冒険者なんていねえんだからよ」


私の都合お構いなしにナンパを仕掛けるロックさん。

どこかの国で流行っているジコチューという言葉にこれほど当てはまる人物もいない。

私は自分でもわかるくらいには顔引きつってると思う。


「別にいいじゃねえか。一晩付き合ってくれるだけでいいからよ。満足させるぜ?」

「いえ、私はそういうことに興味はないので…」

「ちゃんと礼はするぜ?上に掛け合ってここのギルドに冒険者呼び込むし仕事だって回してやるよ」

「あなたにそこまでしてもらうつもりはありません」

「なんならここにいる奴らを他のいいギルドに引き取って貰ったっていい。あんただってここにいるよりかは楽できるぜ?」

「っ!私はこのギルドがいいんです!いくらあなたでもそれは…」

「ごちゃごちゃうるせえ!」


あらゆる誘いを断っている私にロックさんも痺れを切らしたのか、ブチギレて近くにあったテーブルを壁ごと粉砕した。

その出来事に私は一瞬何が起こったのかわからなかった。

ただ同時に、脅されているという事実を突きつけられる。


「別にお前の都合なんてどうだっていいんだよ。俺は《六流星》だぞ?俺がその気になりゃ今すぐにだってこのギルドを潰すことだってできる。他の奴らも俺に逆らった罰で牢獄行きだな」

「そ、それはやめてください!」

「頭を使えよソニア。お前には選択肢なんてねえんだよ。早く答えねえと…潰すぞ」

「っ!」


血の気がひいていくのがわかる。

それもそうだ。

目の前にいるクズは権力を振りかざして無茶振りをふっかけている。

こんなやつに自分の人生が台無しにされるのだ。

吐き気を催すぐらいには良い展開とは言えない。


「わ、私は…」


目から涙が出る。

せっかくここまで頑張ってきたのに。

お父さんがいなくなってからはギルドから去っていった冒険者もいた。

それでも残ってくれる人はいて、ギルドの経営に協力してくれた。

それでも、権力の前ではそんな苦労も水の泡だ。

私は今まで培ってきたものを手放そうとした。








「あらよっと」






突如ロックさんが目の前で尻餅をついた。

いきなりの出来事に周囲が沈黙する。

一体何が起こったのか、尻餅をついた本人ですらわかっていなかった。

だけど私は目の前で見ていたからわかっていた。

だってそれは…



「ぷっ、あっははははははは!いきなり転ばされてどんな気分?ねえ、どんな気分?」



この状況を見かねたヤマトさんが目の前のロックさんに足払いをかけて転ばせたのだから。

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