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7:初めての剣


 人生を振り返ると腑に落ちる事が多々ある事に気づく。人は日常を疑わない。何故ならそれが普通だからだ。そう……じーちゃんは自由にポリュス王国の城へも足を踏み入れる。特にお店に顔を出しても当たり前の様にタダで飯を食べるしお酒も飲む。その様子はじーちゃんが無理強いしている訳でも無く。お店側から快く誘っていた。


 ただし、それは年齢が近かったりポリュス王国に住んでいるドワーフやエルフのお店に足を運んだ時だけだった。その光景は見慣れた物で、葉桜からの目線だとじーちゃんは人気者だなぁという程度。


 じーちゃんもとても仲が良さそうにしているので疑問を持つ事さえ無かった。葉桜も一緒に夕飯を食べる事もあったし……それが話を聞くとじーちゃんはばーちゃんと二人で魔王を倒して人類が頂点だと世界に知らしめたらしい。そして、他の種族を陥れる訳でも無く。このポリュス王国には他種族で溢れている。生活しやすい様に分け隔てない国がこのポリュス王国だった。


 さらに話を聞くとばーちゃん――坂上璃桜(さかがみりおう)はローテク王国の王族であり、人類が力を合わせる為にハイテク王国と力を合わせてこのポリュス王国が生まれたとの事……。


 葉桜は歴史に疎かったがじーちゃんとセラの話を楽しく聞いていた。


「じーちゃんはそのままばーちゃんと旅をして結婚したんだね。まさかばーちゃんが一国の姫だったなんて……」

「はん。まぁそんなとこだ。ばーちゃんも王の娘ってだけでパパっと抜け出してじーちゃんとゴロゴロ生活してたって訳よ」

「葉桜……私は知ってるわ。確かね。紗月は魔王を倒して勇者と呼ばれた後にポリュス王国の王になったのよ」


 セラは葉桜と年齢が変わらないのに凄く物知りだなぁと思う反面、じーちゃんが王様だった事に驚いていた。


「それはあんまり言いたくないんだけどよぉ。葉桜……じーちゃんな。王とかめんどくさいんで全部投げ捨てたんよ。二日で」

「三日も持たなかったの!? 王様ってとっても凄いと思うんだけど……」


 じーちゃんは自由な人だと知っていたがここまでの人だとは思わなかった。


「おうよ。でもまぁめんどい事は世話になったばーちゃんの……そのなんだ。説明が難しいな。ポリュス王国の前の国がここから南にめちゃくちゃ行った所にあったんだけどよぉ! もう滅んだローテク王国だな。そこの王とくっつく事になったハイテク王国の王族を集めて適当に任命してじーちゃんは自由に行き来する権利だけ貰って自由を手に入れた訳よ。わざわざ、椅子に座って仕事なんてやってらんねぇわ」


 じーちゃんらしいや……そんな話をして弟子入りした初日は終わった。それからも葉桜はじーちゃんとこの森で修行を行っていた、基本的には体力の向上と筋力の向上がメインで体を動かしては体力が尽きるまで動く日々を一週間くらい過ごしているとじーちゃんが唐突に葉桜の知らない王国の話題を振ってきた。


「そういえばよぉ葉桜。ポリュス王国の騎士団に新人が来たらしーぞ。年齢は葉桜と同じで十五歳だってよ」

「そうか! 僕はじーちゃんに声を掛けずに騎士団に入る道もあったんだ!」

「おいこら! じーちゃんの方が絶対にいいと思うぞ! 今まで誰かを育てた事ってのはねぇけどよぉ。それでな、ポリュス王国の騎士団長って知ってるか?」


 ポリュス王国の騎士団長は能力も高く人望も厚い。何より、騎士団長でありポリュス王国の王子でもある。その存在はもちろん葉桜も知っていた。


「確か名前はレビィって人だったっけ? とっても強いって聞いてるよ」

「おう、まぁ。じーちゃんと比べるのは可哀そうだがな!」


 がははと自信過剰ないつものじーちゃんの言葉が今は冗談でも無くその通りなのかもと葉桜は思った。


「んで、その騎士団上レビィの元に新人が入ったんだけどよぉ。入る前に模擬戦をやったらしい。しかもその結果が辛うじてレビィの奴が勝てたらしいぜ。まったく、新人に負けかけるってのも変な話だがよぉ。どんなハンデを与えたのやら」


 実際に葉桜はレビィ団長が戦っている所を見たことは無い。噂レベルでしか知らなかった。でも、自分と同い年でそれほどの実力者がいる事実に驚いている。


「それでよぉ。名前はなんだっけなぁ……確かその新人の名前がー。あれだ。霜月正人(しもつきまさと)って奴だな」

霜月(しもつき)……正人(まさと)……聞き覚えは無いかな」


 葉桜にとっては知らない人だった。


「じーちゃんも知らない奴だけどよぉ。話を聞いたってくらいなんだが、この国の奴じゃなくて外から来たらしい。どっかの小さな村出身かもなぁ」

「ふーん」


 そんな他愛ない話をした後に葉桜とじーちゃんは毎日の日課をこなしていた。少しずつ運動強度を上げて葉桜の体づくりを行っている。体が疲れ果ててこれ以上動けなくなったら次のレッスンが始まる。


「葉桜。今日もお疲れ様。汗だくでよく頑張ったわね」


 じーちゃんと葉桜の修行には何故かセラも付き合ってくれている。アレからよくわからないけど、セラは一人暮らしのじーちゃん家で過ごしているらしい。葉桜の隣に住むのは驚いたが、じーちゃんも最初はめちゃくちゃ嫌がっていたが最近は気にしていないっぽい。そして、じーちゃんよりかは魔力に関してセラの教え方が上手い。


「じゃぁ。今日も暫くは瞑想しましょう。瞑想には良く分からないけど疲労軽減の効果があるらしいわ」

「良く分からないんだね……」


 じーちゃんよりは教えるのが上手いだけで、セラも感覚的な面がとても大きい。魔術師と呼ばれる職業の人達も攻撃的な魔法から補助的な魔法等があり様々な分野に区分されると葉桜は知った。魔力を駆使して怪我や疲労が回復するなら、上手く瞑想することにより疲れが無くなるのも分かるような気がする。


「さぁ。始めましょう」

「分かった」


 じーちゃんの教え方は集中力を高めれば上手くいくって事だが。葉桜には良く分からなかった。でも、セラの言う通りにすると身体に存在する魔力を感じれる様になった気がする。気持ち的に気がするレベルだけど、じーちゃんも止めてないしきっと効果があると葉桜は信じることにした。


 実際、セラは魔法が使える。目の前で赤い人差し指と同じくらいの大きさを誇る真っ赤な槍を生成し湖に打ち放った。とても攻撃的な魔法だったけど、葉桜にとって感動が大きく。セラの説明に耳を傾けるには十分な材料となる。


 葉桜は剣を握りたかったがじーちゃんの方針によると暫くは体力の向上が一番との事で触ることが無かった。そんな生活を約半年くらい続ける頃には葉桜の体にも成長が見られて少し筋肉質に変わったと思う。そして、やっと剣を握る日がやってきた。


 じーちゃんと葉桜とセラの三人で修行している森へじーちゃん行きつけの飲食店亭主――ドワーフのスミスさんが現れた。


「小僧。頼まれていたもんを持ってきたぞ」

「よぉ、スミスのおっさんありがとなぁ!」


 葉桜にとってドワーフの年齢は良く分からないがスミスさんから見るとじーちゃんは小僧らしい事だけが分かった。そして、じーちゃんがドワーフから受け取った物が葉桜の振る剣となる――木剣だった。


「ほら、葉桜の剣な!」

「……じーちゃん剣と言ったら鉄じゃないの?」

「はん……お前にはまだ早い!!」


 じーちゃんはもしかすると過保護かもしれない。葉桜はそう思った。


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