14:昇格
三人は依頼を終えてポリュス王国へと戻っていた。その道中に葉桜がセラへ注意を促す。
「セラは出来るだけ僕の見える所に居てね。本当に心配したんだから」
「葉桜は心配性……そこは紗月に似ているのね。大丈夫、私に心配しなくてもいいの」
「配だよ。それにしてもあのオークは何で死んでいたんだろうね」
「さぁ、オークにも不幸な目に合う時があるかもしれないわ。あそこで死ななくても正人が殺していたんでしょう? あのオーク達は不幸ものね」
高く評価されて嬉しいよと正人は言った。そして、正人は友人になろうと言って前に出した手を葉桜は快く掴んだ。
そんな会話をしているとポリュス王国に到着した。エルザに報告すると、オークキングの存在に驚いていた。もしも、正人以外が向かっていたら流石にガルフレベルの冒険者じゃないと百匹近いオークの相手は出来ないらしい。そのランクで自由が利く冒険者は不在で本当に助かったとの事だ。報酬も危険度が跳ね上がっていたので、ギルドから追加報酬が支払われる事になった。正人は追加で打診する。
「葉桜くんも十分活躍してくれたから、報酬よりも……そうだな。Dランク冒険者からスタートにしてくれないかな。彼の実力ならそれくらいあってもおかしくなかったよ」
そんなことがあり、葉桜はDランク冒険者となった。この事実はギルド内に広がり、駆け出し冒険者では異例のケースとなり皆が驚いていた。その場にはもちろんガルフ達もいる。
「あとは、この薬草を……」
そう言って正人から摘んだ薬草を受け取った。それを葉桜はエルザに手渡して報酬を受けとる。
「それと、数日後に大規模なダンジョン攻略があるんだけど。葉桜くんも参加しないかい?」
その声を聴いていたギルド内のメンバーが歓声を上げた。あのAランク冒険者の正人が駆け出し冒険者を誘うなんて一大事だ。
葉桜は正人の申し出に快く承諾した。セラもついていって良いか尋ねると是非来てくれと正人も言った。
その様子に拍手する者も居れば、中には妬みを込めた眼差しで見る者もいる。
これが葉桜の冒険者として初めての依頼だった。想像していたよりも大きな事になったけど、葉桜自身は自分の剣術が魔物に対して有効だと知る事が一番の大きな出来事で、この一年の成果となる。オークについて正人から聞いた話だと、騎士団のメンバーでさえ単独でオークを相手するのは困難とのことだった。今の段階でもし仮に、葉桜が騎士団へ入団しても即戦力として活躍できると正人が言っていた。
この結果を抱えて葉桜は家に帰る。そして、まっすぐじーちゃんに報告した。
「はん。そりゃ最強のじーちゃんが育てた最強の弟子だからな! それくらいやってくれねーとな!」
がははと笑いじーちゃんもなんだか嬉しそうで葉桜は満足した。そして、その時にじーちゃんも冒険者になればいいのにと言葉を零す。
「それは少し話が変わってくるなぁ。じーちゃんが冒険者になったらその……正人って奴を超える冒険者になるだろうよ。でも、この時代を支えるに値しねぇ。こんな老人に頼ってねーで自分達でなんとかしろってこった」
この時代に生きる葉桜や正人が表に出るべきだとじーちゃんは笑いながら言っていた。その言葉を聞いてセラがじーちゃんに声を掛ける。
「とかいいつつ私は知っているわ。紗月はめんどくさいからやりたくないだけで、それっぽい理由を言っているのよ。私にはお見通しなのよ」
「はんうぜぇなぁ。五百ギルやるから団子でも勝ってこい」
そう言ってじーちゃんは嫌々セラにお金を渡した。受け取ったセラは目が輝いている。
「紗月もたまには良い事をするのね。そういう所はいいと思うわ。じゃぁ、私はお団子を買いにいくわね。安心してね葉桜。エルザから受け取ったお金もあるから葉桜の分も買ってくるわ」
そう言ってとてとてと駆け出して行った。
「……そのエルザさんから受け取ったお金は薬草とオーク討伐の報酬だったはずだけど……まぁいいか」
葉桜の初仕事は全てお団子に消えていった。




