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13:オークキング


 三人で移動用の馬車により訪れたのはポリュス王国から東に四時間以上離れた小さな村。アイル村だった。そこでは、二百人に満たない村人が過ごしている。土地の差が影響しているのか作物が良く取れる土地でポリュス王国に卸しているらしい。その村から少し離れた場所でオークを見かけたとの事で依頼を出している。


 オークは知能も低く暴力的で普通の人間では対処が難しい。そういう時こそ、冒険者が依頼を受けるのが好ましいのだが収穫時期を過ぎて仕込みの段階であるアイル村に報酬を払う余裕がそれほど多くなかった。


 だからこそ、大きな報酬額を出せずに仕事内容と報酬の差が大きく手を出す者は少ない。さらにポリュス王国から離れすぎているのも影響していた。


「薬草を摘んでおこうか」


 正人が薬草を積み葉桜達に提案した。この薬草は魔力がこの世界に溢れてから見かける草で、回復アイテムであるポーションの材料となる。錬成が得意な灰魔術師はこの薬草を元にポーションを作成して売っていた。パーティに白魔術師が居るのは稀なことであり、他の冒険者はポーションを買う事により危険な依頼を受けている。


 ポーションにもランクがあり、効果が高い物ほど高価になっている。背に腹は代えられない冒険者はポーションをいくつか保持する費用と仕事の報酬を考えて赤字にならないよう動かなくてはならない。


 そして、最低ランクで駆け出しの冒険者が初めに行うのは薬草の採取だった。どこでも生息する薬草は良い収入源になる。その額を葉桜が尋ねるとじーちゃんの木こりよりは稼げないと知った。


「私のアイテムボックスに入れておこう、依頼が終わったら全部葉桜くんに渡すよ」


 そう言った正人にセラと集めた薬草を預けた。そして、さらに森の奥に進むとゴブリンが現れる。三人で物陰に隠れて様子を見ていた。


「葉桜くん。あれがゴブリンだ。緑色の肌で身長も一メートルちょいしか無いのが特徴だ。そして、集団で活動しがちである。あのゴブリンはEランク相当の魔物でね、大人なら一人を相手にすることが出来る。今は五匹が視界に映っているね。四匹を倒すから一匹を倒して貰っていいかな? 大丈夫。助けて欲しい時は私を呼んでね」


 そう言った後に正人が飛び出した。


「雷の檻!」


 ゴブリンの周辺を八本の電撃が囲んだ。その雷はゴブリンを閉じ込める鳥かごの様になっている。そして、電撃に触れたゴブリンは体がビクンとはねて動きが鈍くなっていた。その隙に正人は剣を取り出し動きが鈍いゴブリンの細い首を切断。電撃に怯んでいたゴブリンは仲間が殺される場面を見た後に痺れるのを覚悟で雷の檻から飛び出した。


 体が痺れて上手く動けないゴブリンを次々と殺していく。正人の振る剣に当たれば簡単に腕が消えて命を絶つ。四匹目のゴブリンを殺すのと最後の一匹から痺れが無くなるのは同時だった。それでも、必死で逃げようとするゴブリンを正人は蹴り上げる。


「葉桜くんも冒険者ならこれが日常になるよ」


 その言葉を聞いて葉桜も姿を現してゴブリンの前に立った。腰に下げていた木剣を取り出す。


 逃げ場を失ったゴブリンが正人と葉桜を交互に見ていた。そして、ゴブリンが逃げる為に出した答えは一つ。


 弱い方を殺して逃げる。明らかに弱いのは葉桜だった。化け物から逃げる為にゴブリンは死に物狂いで手に持ったこん棒を力いっぱい握りしめて葉桜に向かう。その相手に対して葉桜は木剣の先をゴブリン定めて腰を落とした。


 そして、狙いを定めて真っすぐと最速で相手に近づき勢いを乗せて木剣をゴブリンに突き刺した。あまりの勢いにゴブリンも握りしめたこん棒を手放して胸に突き刺さった木剣からするりと抜けて数メートル先まで吹き飛ばされる。


 じーちゃんから教えて貰った型の一つ『一閃(いっせん)


 これは、じーちゃんがばーちゃんと初めて模擬戦をしたときに受けた型で最速の型だった。


「葉桜くん流石だね」


 その様子を見ていた正人も満足な表情をしている。


「沢山練習したからね」


 じーちゃんの言葉通り何度も反復した動きは想像以上に実践でもスムーズに動けていた。


「そんな葉桜くんに朗報か分かんないけど、今回のターゲット。オークの登場だ」


 正人が指をさした所から二メートルを超える身長に、セラの胴よりも太い腕が姿を現した。ゴブリンはオークよりも下位種でオークを背に暴れる事が多いらしい。そんなゴブリンの近くにオークが居たのだ。


「さぁて、これは少し驚いた」


 葉桜が絶賛オークの姿に驚いていたら更に大きなオークが現れる。身長は三メートルに達しようとするオーク。


「オークキングだね。まさかこんなところに居るなんて……葉桜くん。どっちも私が相手をしようか? オークは流石に荷が重いと思うけど……」


 じーちゃんの背よりも二十センチ程おおきいオーク。そのうしろにはキングが歩いて近づいていた。その目は怒り狂って口からは汚い唾液が流れている。


「ううん。いずれは戦うんだ。僕もやるよ」

「うんうん。じゃあ、私がオークキングを相手しよう。さぁ、オークがきたよ」


 大きな拳を握りしめてオークが葉桜目掛けて走ってきた。その後ろのキングは様子をみている。二匹が襲ってきたらと思っていたが葉桜の心配は杞憂に終わった。


 今は目の前の敵を倒す事に集中した。さっきのゴブリンへやったように腰を落とし、簡単にゴブリンを殺した『一閃』を放つ。


 しかし、今度はオークを狙わずにその脇目掛けて一直線に駆け抜ける。相手は葉桜よりも遥かに大きく、重いオークに向かって急所を狙う自信は無かった。もし外したら体重差で押し負けてあの大きな腕にやられるだろう。


 葉桜の目論見通り、オークの横を抜けた時に大きな拳は空振っていた。後ろに回った葉桜を追う為に振り返ったオーク目掛けて木剣を上から振り下ろす。


 じーちゃんがセラのお気に入りを斬った型……こっちは魔力を剣に込めて相手を切り裂く『撃』だ!


 振り返ったオークの左脇から右の腰に掛けて木剣は簡単に肉を切り裂く。


 あまりの痛みにオークは雄たけびを上げた。その隙を逃す訳も無く、葉桜は下から首元を目掛けて木剣を突き刺した。勢いのある雄たけびがぷしゅーと空気が抜ける音に変わりオークは動かなくなった。喉を突き刺した木剣は首の骨ごと断っている。


「想像以上に葉桜くんは強いね。私からギルドに申請しよう……Fランクから始めるには勿体ない。さーて、私も頑張ろうかな」


 葉桜達の結果を見ていた正人とオークキングは動き出した。


「葉桜くんは剣術を学んでいただけあって接近戦も得意なようだ。私も接近戦は自信があるけど……魔法も好きでね」


 そして、正人は魔力を込めた。


「魔剣創造!」


 正人の周辺に様々な形の剣が姿を現す。その剣は浮遊していて正人の指示でオークキングへと向かって行った。十数本の剣がオークキングの腕や足……腹や肩に突き刺ささる。丸太の様な太い筋肉の鎧を意図もせず、突き刺さった個所から様々な能力が発揮されていた。足からは炎が噴き出て腕はどろどろに溶け始める。腹に刺さった剣からは小さな爆発が起きて大きな穴が開いていた。


「やはり、剣と魔法の世界は最高だね。葉桜くん。私はこんなに便利なスキルを持っていて最高だよ」


 あっさりと正人はオークキングを倒してみせる。その様子を見た葉桜は素直に自分との実力差を実感した。


 葉桜はこの人が二年後……傍に居ればじーちゃんも死なないかもしれない。そんな希望が湧いてきた。


「あぁ、そうだ。オークキングは他のオークとは違って大勢のオークを従える習性があってね。近くにまだオークが沢山いるかもしれない。おや? セラさんは?」


 葉桜も周りを見渡したらセラの姿が見えなかった。ゴブリンとオークの相手をするのに必死で彼女を忘れていた。この場でセラと大きな声を出して呼ぼうと思ったがその声に釣られてオークが集まってくるかもしれない。


 そんな事が葉桜の頭の中でぐるぐるとし始めたらひょっこりセラが姿を現す。


「あ、セラ。そこにいたんだ。心配したよ」

「大丈夫よ。私はここに居るもの」


 二人はセラの姿を見て安堵した。そして、先に進もうと正人が森を抜けた瞬間。


 目を疑う光景が姿を出した。百に近いオークが既に死んでいた……正人が近づいてオークの亡骸を観察すると、どの個体も脳天を鋭い何かで的確に貫かれてる。そして先ほど死んだ様に見えた。


 正人が二人を見ると、この光景に葉桜がとても驚いている様子が伺えた。そして、正人から乾いた笑いがこぼれる。


「本当に、この世界は面白いなぁ」

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