表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/22

12:Sランクの武器


 別室に迎えられた葉桜(はお)とセラは椅子に座っていた。向かいには霜月正人(しもつきまさと)が座っている、その様子を見てエルザはお茶の用意を始めていた。


「葉桜くんとセラさんに声を掛けたのは個人的に興味を持ったのでお時間を少し頂くよ?」

「はい。大丈夫です。今日は冒険者登録をして簡単な依頼を受けようと思ってたくらいなので……」


 エルザがどうぞとお茶をテーブルに置いた。そして、葉桜に声を掛ける。


「正人さんはポリュス王国では高ランクの冒険者でとっても凄い人なんですよ」

「少しだけじーちゃんから名前は聞いたことがあります。レビィ団長と色々あったとか……」


「良く知ってるね。私も名前が大きくなってきたのかな? さて、エルザさんは席を外してもらってもいいかな?」

「はい。分かりました」


 三人となった部屋で正人が話しかける。


「葉桜くんはどうして冒険者に?」

「僕はじーちゃんから剣術を学んできました。なので、あとは実践が必要ってことで……悪い魔物を退治できる冒険者になろうとしています」


 実戦経験が足りない。そして、お金を稼ぐことも出来る冒険者は葉桜にとって都合の良い機会だった。その話を聞いて正人は口を開く。


「ふむ……まぁ、理由は私と似たような感じかもね。剣術を学んでいたって事だけど、だから木剣なの?」

「これはじーちゃんから貰った木剣で……半人前の僕にはまだこれで十分らしいです」

「ふむ……これを見て頂きたい」


 そう言って正人は懐から剣を取り出した。


「おや、その様子だとこのアイテムボックスは知ってるのかな?」

「じーちゃんが持ってるので見たことはあります!」


 少し緊張気味の葉桜と二人のやり取りをぼーっと眺めているセラはとても対照的で、正人は少しだけこの二人についても気になり始めていた。


「結構レアな物で初めて見た人はとっても驚くから期待してたんだけど……それで、この件は私が騎士団に入っていた時に使った剣でね。流石にレビィさんの剣と比べたら何ランクも落ちるけどそこそこな剣なんだ。出来ればこの剣と葉桜くんの木剣を交換しないかい?」


「あ、ええっと……」


 突然の申し出に葉桜は戸惑った。どう見ても木剣よりも正人が持つ剣が優れている。それを提案されるなんて想像もしていなかった。


「あなたは葉桜の剣が欲しいのね。でも、それはどうしてかしら? わからないわ」


 セラがいつもの調子で正人に尋ねる。


「そうだね。んー。正直に話そう。私には武器鑑定のスキルがあるんだ。この力を使えば武器の性能が分かるんだよ。例えば切れ味とか耐久性とかね、それで葉桜くんの持つ木剣はSランクだ。この騎士団の剣は精々Cランクってところでね」


「ふぅん。ランクは高い方がいいってエルザから聞いたのよ。そのランクなら葉桜の持つ剣はとても優秀なのね? うーん。それなら葉桜が交換に応じる意味が分からないわ。それに、その情報を提示する意味も分からないの。私は貴方がわざわざ不利になる情報を言ってる様にしか思えないんだけど……」


 セラの言う事は的を得ていた。武器のランクが存在するのも鑑定というスキルも初めて聞いた言葉で葉桜は上手く理解できていないが、じーちゃんから貰った木剣が優秀だという事が分かった。


「そうなんだけど、武器のランクは葉桜くんの持つ木剣が高い。でも、なぜ高いのか分からないんだ。切れ味も耐久性もこちらが高い、単純な武器としては全てが上回っている。唯一差があるのは魔力との親和性が負けているね。その木剣にはユグドラシルの加護と言われる特性がついているらしい。なので……興味が沸いたのが正直な所だね」


「あのー、多分僕が普通の剣を持つよりもまだこの木剣がいいと思うので交換は断らせて頂きます!」


 正人はあまり落胆せずに葉桜の言葉を飲み込んだ。


「少しだけ、触らせてくれないかい?」


 剣の交換は断ったが葉桜も別に触らせるくらいならと木剣を正人へ手渡した。


「不思議だ。私が持つとこの剣のランクが下がる……何かが足りないのかな? ステータスオープン」


 正人がまた聞きなれない言葉をつぶやいた。


「必要な筋力補正も足りている……というかこの木剣を扱うのに必要な数値は低いなぁ……なのになんでだろう?」

「あのー、ステータスオープンってなんですか?」


 葉桜の素直な疑問にも正人は快く答えてくれた。


「私は自分の能力値を数字で見る事が出来る。それをステータスと言ってレベルが上がると自由に補正値を上げる事が出来るんだ。それで持てない剣もどれくらいで持てる様になるのかが分かる便利な物でね」


 葉桜には何を言ってるのか良く分からなかったがとりあえず凄いと感じていた。


「さぁ、これは返すよ。私には扱えない物らしい。何て言っても私が握った瞬間にFランクに落ちちゃったからね。葉桜くんは特別な何かを持ってるのかもしれないね」


 優しく正人が笑っていた。そして、葉桜には嬉しい提案をしてくれる。


「この後も空いてるんだったら私と一緒に依頼を受けないかな? 一応、Aランクの冒険者だから力になれると思うよ」

「それなら是非、お願いします!」

「よし、そうと決まったら冒険者三人でDランクの依頼でも受けてみようか。報酬も君達の二人で分けて貰って構わないよ」


 経験者と依頼を受けれるなんて想像もしていなかった。そして、ポリュス王国での実力者なら安心だと判断している。そんな葉桜の隣でセラは正人に話しかけた。


「私は冒険者じゃないの。だから、報酬は葉桜一人ね?」

「そうだったのか……セラさんは葉桜くんの付き添いと思っていていいのかな?」

「そう、葉桜の様子を隣で眺めようと思ってるの」


 あははと正人は笑っていた。そして、深くは突っ込まないらしい。ランクの低い冒険者向けに危険が少ない依頼も存在する。そんな中で依頼を受ける冒険者のお手伝いとしてバディを組める制度もあるらしい。この時は魔物を倒す依頼を達成しても冒険者分の報酬しか支払われないので、単純に分けると貰える取り分が半分になってしまう。


 高ランクの依頼になると人数が必要な物も出てくる。その際に報酬は人数分が元々設定されていて分配はパーティの中で自由に決めることも可能だった。


 もしもの為に必要な白魔術師は来てくれるだけでもありがたく報酬は少し多めに貰える。かと言って攻撃手が居なければ命が危険に晒されるのでバランスが大事との事だった。低ランクの冒険者パーティに白魔術師は少ない。だからこそ、代用品も存在する。


「さぁ、行こうか」


 そう言った正人に二人はついていく。エルザから依頼を受けてギルドを後にする……その時にガルフが葉桜達を見つけ手を挙げて振っていた。その隣に居た女性の目つきが鋭いのが印象的だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ