4.サルもどきの利用法
夜が明け、太陽がだいぶ高いところまで上がってきたと頃にユタカは寝不足気味の頭を撫でながら目を覚ました。そして、ゆっくりと目を開けると十人だろうが百人だろうがその姿を目にすれば全員が振り向くであろう美少女が黒い軍服のような服を着て座っていた。
「おはよう、ゼクティア」
「おはようございます、ユタカ。昨晩は特に襲撃もなく平穏なものでした。って、なんですかユタカ、何か私についてますか?」
「ねえ、なんだかゼクティアってマネキンの時に比べて背が縮んだよね」
「それは、自動人形の肉体を構成する物質の量は一定だからだと思います。受肉の際に各部に物質が振り分けられましたので」
「なるほど」
返事をしながらユタカの目は完全にゼクティアの胸の部分に釘付けになっていた。「こりゃー背が縮むわ」としみじみと感じていた。しかし、これ以上はセクハラ案件になるということを徐々に動き始めた頭で理解し、急いで話題を変えようとした。
「申し訳ない、訴えないでほしい。あ、ゼクティアはずっとその態勢で一睡もしてないのか?」
ゼクティアの姿勢は昨晩ユタカが眠りについた時と全く変わっていなかった。
「?、自動人形に睡眠などは不要です。加えて、食事もできないこともありませんが、必須と言うより味覚を刺激する娯楽的な面が全てです」
睡眠や食事が必要ないって本当に人形なんだな、でも食事が必要ないってどうやって動力源を得てるんだ?核融合じゃあるまいし、あの動きを見るに相当なエネルギーを必要としてるぞ。
そんな疑問についてユタカが考えているとゼクティアが今後の方針について確認を求めてきた。
「今後の方針だけど、まずここを拠点としたときの目的は俺の力の研鑽。そして、その先にあるのが森からの脱出なんだよ。いくらおいしくても一生この木の果実を食べ続けるのはさすがに辛すぎる。でも、森を脱出するにしてもそれを阻むものがいくつかある。1.どこに出口があるか、2.出口までに要する食料の調達・輸送、3.移動を阻む危険生物ってところか。1.についてはどうしようもないってところが痛い。空を飛んで森が切れる場所を探すわけにいかないから、でも最低限一定の方角に進み続ける術を手に入れられれば解決する可能性はあると思う。2.と3.については解決策は一緒だと思う」
「『自動人形召喚・指示』の段階を進める。これによって、輸送要員と戦闘要員の数を増やすことですね」
「うん、ゼクティアが飲食を必要としないなら今の状態でも食料面の問題は解決できるかもしれないけど、この森にいる生物はサルもどきが最強種であると推測するのはあまりにも楽観的過ぎる。そこで、必須になるのが戦力の強化、『自動人形召喚・指示』の段階を進めるということだけど、今までのように現れたサルもどきをゼクティアに殺してもらっても、段階が進むのがいつになるか分からないから積極的に行こうかと思う」
「積極的にですか。私が一人で森を偵察しますか」
「いや、情けない話だがゼクティアが離れたら俺はサルもどきにすぐに殺されてしまう自信がある。そこで、奴らの方からここに集まるように仕向ける。ゼクティア、今から言う物を集めてくれ」
そう言うと、ユタカはゼクティアにツルのような植物と太い木の枝を数本持ってこさせた。そして、ツルのような植物をツリーハウスのある巨木の周囲の草地に握りこぶし一個分の高さに調整して張り巡らせた。太い木の枝は十字架のように組んで巨木のそばの地面に刺した。
「ふー、準備だけで一日使ってしまった。ゼクティア、ツルの張ってある位置はすべて記憶すようにして、それと、今度サルもどきが現れたときは一匹だけ四肢の腱を切断して生かしておいて」
「わかりました。ご指示の通りにいたします」
「さて、作戦は明日実行するよ。今日は早めに寝るとしますか、ゼクティアおやすみ」
「ヴゥー、ヴゥー・・・」
翌朝ユタカは聞いたことのない音を聞きながら目を覚ました。音の鳴るところを見ると仰向けに倒れ、口の奥まで太い枝を押し込まれたサルもどきの姿があった。
「ゼクティア、おはよう。ずいぶんと活きが良いのが捕れたね。これなら、今回の作戦もうまくいくはずだよ」
「おはようございます、ユタカ。あまりにうるさいので口に枝を押し込んでおきました。それで、あれをどうするのですか」
「ゼクティア、準備はいい?これから、釣りを始めるよ。友釣りのようなものの始まりだ!」
そういうと、ユタカはゼクティアの手を借りながら捕らえていたサルもどきを枝で作った十字架に括りつけた。そして、おもむろに事前に用意しておいた先の尖った枝を両手で持ち、サルもどきの太ももに突き刺した。
「ギャーーー!ギャーーー!」
周囲に響き渡るサルもどきの悲鳴も気にせずユタカは突き刺した枝を左右に動かし、傷口をえぐり始めた。
「ギャーーー!ギャーーー!ギャーーー!」
「ゼクティア、周囲をよく見ておいて。そろそろ、こいつの仲間が集まってくるよ。そうしたら、俺をツリーハウスに運んだあと駆逐してくれ」
「ユタカ、その見た目でかなりえぐいことを思いつきますね」
ゼクティアは中学生の見た目で、ためらいなくサルもどきを痛めつけるユタカの姿に若干引きながらも指示通り、周囲の警戒を行った。
「ギャー、アーーーー・・・」
この森に俺が放り出されてすぐに何も危害を加えてないのにも関わらず襲ってきた報いだ。俺はやられたことは忘れないぞ。
「お前らの仲間は徹底的に駆逐する。ッチ、声が小さくなってきたな、これはもう使えないか。」
「ユタカ!私に掴まってください」
「来たか!」
周辺の警戒を行っていたゼクティアは数十匹のサルもどきの姿を発見し、素早くユタカをツリーハウスへ移動させた。そして、一番近いサルもどきから仕留めに入った。
数が多すぎる!いくら弱くてもこれだけいると突破され、ユタカが危険にさらされてしまう。ユタカはこの数を予想できていたの?
ゼクティアが続々と現れるサルもどきの数の多さに危機感を感じていると所々で異変が起きた。
なぜ、あそこでコケている、昨日仕掛けたツタに引っかかたの?でも、最初にあの辺りを走っていた奴は何事もなく通過してきたのに。
「どうなっているの?」
よし、何とか予想通りの結果になったな。握りこぶしほどの高さのツタにはほとんど引っかからない。でも、足の置いた位置や移動の仕方によっては引っかかる奴も出てくる。もし、全員が引っかかるように設置したらあいつらのことだ、すぐに探し出して罠を解除されてしまう。引っかかる奴が時々にしか出ないから、異変に気付きにくいし、もし変に思ってもこの草むらで、低く張られた罠を見つけようとするのは、ゼクティアを前にしている状況では自殺行為に等しい!
「ゼクティア!余裕のある時は四肢の腱を切断するだけでいい。囮として使うから完全に殺すなよ」
「了解しました!」
すごい、あのツタのおかげでこの数の敵を相手にしても討ち漏らしをだすことがない。それに、私と対峙したときに敵がすり足で移動しようとしたんコケてしまうから、一匹一匹を仕留めるのに無駄な時間を取られなくて済む。
それからというもの、ゼクティアはひたすらにサルもどきを討ち、あるいは囮として処理していった。
一方のユタカといえば、ツリーハウス内にある果実をかじりながら周囲で行われている駆除作業を見学していた。
「ゼクティアが自動人形で疲れ知らずとわかっていても、何とも言えないものがあるな。この状況をはた目から見たら俺って女の子に敵を殺させて、自分は食事しながら見物してるだけのクソ野郎じゃん。殴られても文句が言えないな」
順調に進む駆除作業を前にユタカは「次の自動人形は男でありますように」っと真剣に祈っていた。
時間が経ち夕方を前にサルもどきの出現が完全に止まってしまった。そして、ツリーハウスのある巨木の周囲には死体の山が築かれていた。
「ゼクティア、もうこの辺りのサルもどきは全滅したようだから囮にしてたやつを仕留めて帰ってきて」
「了解しました!」
囮を仕留める作業から帰ってきたゼクティアは満面の笑みを携えていた。ユタカが「うわ、殺しまくってハイになってるのか」と若干引くと、焦った様子でゼクティアがユタカの想像を否定した。
「違います!ユタカの采配に感動していたんです。あの罠は素晴らしかった、罠のおかげで安全に作戦を遂行できました。サルもどきの集め方には若干思うところはありましたが、素晴らしい戦術眼かと」
「采配って大げさだよ。あと、俺は自分で言うのもあれだけど腹黒だからね。あんな方法しか思いつかなかったんだよ。それと、ゼクティアの様子を見るにそれだけが笑みの理由じゃないでしょ」
「よくお分かりになりましたね。それでは、」
すると、ゼクティアは人形のような表情に戻り、直立不動となると、
「水無殿、『自動人形召喚・指示』の段階が進行したことをご報告申し上げます。現在行使可能な力は、完全体1体の召喚、不完全体2体の召喚となります」
「予想より早く進んだな、もう一回この作業を行わないといけないかと思ってた。まあ、順調に越したことはない。早速召喚といこう」
ユタカがマネキン2体が現れるイメージを組み立てるとツリーハウスのある巨木の前に黒い霧のようなものが集まりだした。
何とか活動報告どおり投稿ができました。
次回は8月26日午前0時の投稿となります。
誤字・脱字、語句の選びの間違いの指摘いただければと思います。




