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1.始まり

初めまして、河伯と申します。

なろうで読む専門だった人間が作品の投稿に手を出してしまいました。


拙作であると自覚しつつも読んでいただいた方からか批評をいただければと思います。


それでは、読者の方の暇つぶしの一助になることを祈りつつ、本編へどうぞ。

「お先に失礼します。お疲れさまでした」


 水無 隆(みずなし ゆたか)は、普段通り定時に職場を後にした。

 いつも通りにやって来る時間の電車に乗り、いつも通りの何も変わらない生活を送っていた。


「ふー、今日は水曜日か。あと、二日出勤すれば土日か」


 平時にはほぼ定時に上がれ、残業がごく偶にある程度でとてもホワイトな会社に勤め、平均的な収入、何の不満もないが面白みもない独り暮らしの30代前半の男は、面倒に思いつつも自身の作った料理を食べ、ネットサーフィンで時間を潰し、床に入った。



---ユリオマグス大帝国 - 宮殿---


 内部の床面が複雑な模様のようなものに覆われた円筒形の大きな石造りの建物の中に、高位の者と思わせる装いをした3人の男とその他複数の人影があった。

 その中でも最も豪奢な衣服を身にまとった男が、飽きたように、そしてどこかなげやりにしゃべっていた。


「宰相よ、ようやく此度の儀式で終いか。予は幾度もこの召喚魔法擬きの立ち合いのために時間を取られている。今はこのようなことにかまけているような時間はないのではないか」


「陛下の貴重なお時間を頂戴したこと深くお詫び申し上げます。ですが、この度で当初計画しておりました全十回の『強兵招聘計画』は今夜で最後となります。計画に基づき集められた贄を消費しなければならないこともあり、予定通り十回目の儀式を行わせていただければと存じます」


 宰相と呼ばれた男は、冷たい目を建物の内壁に鎖で繋がれた人々に向けていた。


「この者どもには今回の儀式で贄として消費され、存在した痕跡を消してもらわなければなりません。それに、最後に当たりを引く可能性も無きにしも非ず」


「モーリッツ、俺たちがどれほど苦労してこいつらを集めたと思ってる。姿が消えても騒がれそうにない奴を帝都中で探し回って、毎晩毎晩こそこそと気絶させて、袋詰めして輸送。俺たちは騎士であって、人攫いじゃない。それでその結果が”可能性も無きにしも非ず”じゃたまったもんじゃないぜ」


 一際大柄な男が身に纏った鎧をガシャガシャと鳴らしながら不満げに口を出した。


「今回の君の仕事ぶりには感謝している、ルートヴィヒ。問題は君ではなくこの古代の魔法陣であろうな。そして、十分に解明されていないものに頼ってこのような計画を進めた私の失策だ」


 ユリオマグス大帝国はヨルン大陸の南部に存在し、ヨルン大陸の中で最大の国力と軍事力を有する帝国である。そして、建国時からの悲願である大陸の統一を目指し続け、400年余りたった現在でも達成されていない状況にある。

 その悲願を阻むものが人の立ち入ることを拒む大森林と険しい山々などの厳しい自然環境、そして、それらを帝国との国境とした複数の小国によって発足された大ヨルン同盟である。


「予の代にて帝国の悲願を成就せんがため案を求め、予がそなたの示したものを採用したのだ。そなたに責はなかろう。それに、最近技術省より新兵器開発を大いに進めるであろう発見があったと報告があった。この”新兵器”を帝国の全将兵に装備させた暁には、うるさい同盟連中を滅することは容易であろう」


「あの”新兵器”がものになりゃ軍の地力が格段に上がる。そうなりゃ越境の時に出る損耗も抑えられる。おい、モーリッツ早く予算を回して全軍配備してくれ」


「”新兵器”はすでに形はできてるが、最終的な調整が必要だ。それに・・・」


 言いかけたモーリッツ宰相はたたずまいを正し、皇帝え向けて頭を下げた。


「そうだな、モーリッツ宰相。この話は儀式ののちに詰めよう。それでよいなルートヴィヒ騎士団長。では騎士団長よ、魔法陣を起動せよ」


「承知!」


 そう言いルートヴィヒが懐から模様の刻まれたタイルを取り出し、足元の魔法陣が欠けている部分にはめ込むと魔法陣が赤く光りだした。

 すると贄として繋がれていた人々が細かい痙攣を起こしたあと、声にならない叫びを上げながら全身を液体状に溶かし姿を消した。


「陛下、魔法陣は無事に起動いたしました」


 そんな人々を観ながらモーリッツは皇帝に魔法陣の起動を報告した。


「期待をせずに待つとするか」



---???---


「どうなってんだ」


 水無 隆(みずなし ゆたか)はホワイトアウトしたような空間で程々に驚いていた。


「こんな感じの夢は見たことがないな。そもそも夢だなんだと考えている時点で夢じゃないか。だとしたらここはどこだ」


『開示不可』


「ん? 誰かいるのか。すみません、ここはどこですか」


『開示不可』


 なんだ? さっきから聞こえるというか頭に響く声は。俺が置かれてる状況はわからないけど、一つ推測できるのは・・・


「元の世界へ戻してほしい」


『不可』


 やっぱり、異世界に転生とかの類か。まいったな、こういうのは物語として読んでる分には楽しいけど、自分で体験するのは避けたい。でも、この機械みたいな返答を聞くと戻れないんだろうな。なら、異世界に転生か転移か知らないが、とにかく生き残るために必要な情報を集めたいな。


「質問。俺はこの後、異世界に転生されるのか。その世界には魔法などの異能があるのか」


『二つの問いに対し共に肯定。ただし、転生ではなく転移に類似する手法を使用』


「質問。この転移はだれの意志によるものか」


『転移先世界の現地人』


「質問。その世界において人類あるはそれ類するものが危機的状況に置かれたため、現地人は転移を行ったのか」


『否。当該世界の人類種は良好な状況を維持』


 はぁ~、異世界に放り込まれるのは確定か。それにしても転移を行う理由がろくでもない気がしてならないな。異能があるらしいからそこに期待か。


「質問。俺には魔法など異能があるのか。また、それは何か」


『肯定。じどう』


『情報体の転送シーケンス開始』


「っ! おい、重要なことが聞けていない」


『情報体の再構成、情報体の外殻再構成、完了』


『/[@;-\^\への転送開始』



---ユリオマグス大帝国 - 宮殿---


「ふむ、今回も召喚は順調にできたようだな。では、ルートヴィヒ騎士団長お願いします」


 モーリッツ宰相は魔法陣の中心に倒れている人間を観ながら、ルートヴィヒへ次の指示を出した。


「おう、今回は歯ごたえがあるといいんだがな。包囲を開始しろ!」


 ルートヴィヒがそう叫ぶと扉から12人の騎士たちが完全武装で魔法陣の中心に倒れる人物を囲んでいった。


 重要な話も聞けず隆は唐突に頭痛に襲われた後、冷たい床面に放り出された。


 くっそ、あの機械みたいな奴め、俺の頭に何か入れたな! あんな頭痛経験したことないぞ。しかし、また周りの環境が変わったな。次から次に面倒くさいな。


 隆が起き上がり周りを見ると十数人の西洋風の鎧を纏った連中が周りを囲い、少し離れたところに隆を囲っている連中とは異なる装いをした3人の男が立っていた。


 最悪だ。さっきホワイトアウト空間で聞いて考えられる状況の中でも最悪の部類の状況じゃないか。


 隆が状況を打破する方法を考えていると一際豪華な服装をした男が話しかけてきた。


「異世界人よ、よく来た。余はアロイジス・ユリオマグス、ユリオマグス大帝国第18代皇帝である。まず、お前の力を見せてみよ」


 すると、隆を囲む連中の一人が剣を投げてよこし、自分を切ってみろと言わんばかりに前に出てきた。


 なんだ、なんだ、このおっさんはいきなり無茶苦茶なこと言いだしたぞ。さすがの俺もテンパるぞ。剣なんて持ったこともないのにどうしろって言うんだ。ここは会話をして状況の確認だ。


「これは皇帝陛下、ご尊顔を拝し恐悦至極にございます。しかしながら、私は剣を持った経験がなくご期待に副うことができないかと。つきましては、諸事情をお聞かせいただければ剣とは別のことにてお役立てるかと」


「ふん、よく回る口だな。泣きわめく者どもよりはましだが、まずはそこの騎士と戦い力を示せ。それが叶わなければこれ以上に話すことはない」


 っち、会話にならない、力ってお前らは蛮族が何かか! こうなったら、さっきの空間で確認し損ねた異能が剣での戦闘に関係することを祈ってやるしかないか。


 隆は投げ込まれた剣を手にふらつきながら目の前の騎士に斬りかがるが、異能という淡い希望は無残に散り騎士が片手で持った剣で防がれ、そのまま腹に蹴りを入れられてしまった。


 それを見ていたモーリッツ宰相は床面の魔法陣のもう一つの機能を起動させ始めた。


「陛下、残念ながら今回の儀式も失敗でございました。失敗作の廃棄を行わせていただければと思います」


「ふむ、やはり時間の無駄であったな。無力な異世界人よ僅かな間だろうがこの世界の大自然を楽しんで逝くとよい」


「痛っ、容赦なく蹴り入れやがって。廃棄ってなんだ。勝手に呼びつけておきながらふざけるなよ!」


 魔法陣は起動し、隆は光を発しながら部屋から姿を消した。



---大森林---


「くそ、ふざけやがって。恩には恩を、仇には仇を。絶対奴らに仇を返してやる」


 そういって、隆が自分の周囲を見渡すと見るからに豊かな森が広がっていた。


「こうして見る分には生きていくのに問題なさそうな環境に思えるが、あいつらがここに放り出したからには何か問題があるんだろうな。って、いきなりか!」


 隆の視線の先には全身の毛が抜け落ちて赤黒く変色したサルのような生き物が、大きな石を持って走ってくる姿があった。


「明らかに友好的な存在じゃないし、速い! ならば」


 隆は周囲を見ると上りやすそうな木を見つけ、慣れぬ様子で登って行った。そして、サルもどきは隆を地面から見上げると手に持った石を木の幹に打ち付け始めた。


「ちっ! 見るからに二足歩行に特化してたし、サルとゴブリンの混ぜ物みたいな姿だから木登りは得意ではないかと思ったが、まさかこんな方法で来るとは。力が異常だ、もう木が耐えられない! くそ、くそ、くそ。だれか! だれか、いないか! だれか、助けてくれー!」


 隆がそう叫ぶと嗜虐的な目を向けながら石を打ち続けているサルもどきの後ろに、黒い靄のようなものが集まりだし、次第に人型の何かが現れ始めた。


「なんだあれは、マネキン? いや、アブストラクトマネキンってやつに近いか? って、今はマネキンの種類なんてどうでもいい。あれが俺を助けてくれるものなら、サルもどきの注意を俺に完全に向けさせないと」


 隆は手近にある枝を折ってはサルもどきに投げつけ挑発をすると、サルもどきは激高し今まで以上に力強く手に持った石をユタカの登っている木の幹に打ちつけ始めた。そんなサルもどきの背後にマネキンは静かに近づき頭と顎を両手で掴むとそのまま首を折ってしまった。

あらすじにも書きましたが、なろうには数多くの作品があります。読む専門だったころには「好きじゃないな」「更新が遅すぎる」などと思う時もありました。

でも、今回作品を書いて思ったことは物語を書くことの大変さが想像以上だったということ。この拙い作品を一話投稿するだけで、休日を丸々使って10時間以上はPCの前にいました(上手な人はもっと早いのかな?)。

結論としては、楽しみにしている作品の作家さんはすごい労力と時間を使って作品の投稿準備をしているのだから、1週間でも1か月でも待つ、このことしみじみと理解しました。


誤字・脱字、語句の選びの間違いの指摘いただければと思います。

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