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第20話 らしくない二人

 あのアナウンスは、()の言葉なのか。


 能力発現に関わるインタフェース設定はともかく、私が無意識にあそこまでの言葉を仕込むとは思えない。他ならぬ私が言うんだから間違いない。

 とはいえ、実は運営側の演出でしたというのはいまさら過ぎる。当時の社長さんやユリシーズさんの驚きは本物だった。


 やっぱり神の領域だけに、神様がいるのだろうか? それにしては、このことだけ妙に穴となっているところがあやしすぎて―――


「ねえ、ミナ、大丈夫…?」

「え、あ、ご、こめんなさい。ちょっと、考え込んじゃって。それだけ、だから」

「そう? なら、いいけど…」


 前島さんの手が近づき、あの時(・・・)と同じように、私の頬に触れる。


「なんか…怖かった。ミナらしく、ない」

「そんな顔、してた?」

「うん、してた」


 怖かった…か。確かに、私らしくない。こんな状況の時は、おどおどするか、あせってあわてるか、あきらめて開き直るか。それがいつもの私…霧雨(きりさめ)美奈子(みなこ)の姿だ。


 でも、今の心境はどちらかというと、『ミリアナ・レインフォール』としてクエスト攻略している時に近い。立ち塞がる壁を、いかにして突破するか。ただそれだけを考え、ひとりで挑んでいく。

 たかがゲーム、されどゲーム。仮想世界の中だけの存在でしかなかったそれは、いつの間にか現実世界よりも現実っぽくなっていて。私は確かに(・・・・・)ここにいる(・・・・・)と思わせてくれる、安心感。


『霧雨さんは、仮想世界で誰よりもリアリティを感じているのかもしれませんね』


 いつか聞いたユリシーズさんの言葉を思い出す。私にとっての『ファラウェイ・ワールド・オンライン』は、もうひとつの現実だ。他の人もそうだと思っていたんだけど…ソロの弊害かな。


「む、ミナ、他の人のこと考えてる?」

「え? そ、そんなことないよ?」

「そうかなあ…。神秘的な佇まいもミナの魅力のひとつだけど、心ここにあらずなのは、寂しい」

「…ごめんなさい。って、神秘的?」


 神秘がどうとかはよくわからないけど、今の前島さんは、私のことをよく見てくれている。一方的に喋っているように見える時も、いつも相手を観察していろいろと気遣ってくれる。それは、わかる。


 だから、


「でも、ありがとう」

「え、お礼を言われるようなことしたっけ?」

「したよ。今もこうして、見てくれるから」


 現実世界も、もちろん私の現実だ。大切にしていかないとね。


「あの、お客様…」



 電器店を出て、あらためて映画館に向かう。


「結局、よくわからなかった…」

「前島さん、本当に機械とか苦手なんだね」

「いや、ボクもここまでとは思ってなかった…」


 なんでもそつなくこなすと思っていたから、ちょっと新鮮だ。学校では、頼りになるリーダーって感じだけに。


「それじゃあ、映画見て、お昼食べたら、前島さんの家に行く? 私が直接設定してみるよ」

「ふえ!? い、いや、それは、ちょっと…!?」


 えっ、なに、これまでになく動揺したその様子は。前島さんのセリフじゃないけど、らしくないよ?


「ごめんなさい、なれなれしかった?」

「い、いや、そんな、そんなことはないよ!? ただ、今日はちょっと…」

「あ、用事があるんだね。じゃあ、次の機会に」

「う、うん」


 なんか、会話のやりとりがいつもの逆っぽくなってしまったような。しどろもどろの前島さんも新鮮でちょっといいかも…というのは、やっぱり失礼かな?


「…相手にされていないことはわかっていたけど、ここまでとは…」

「ん?」

「なんでも、ない…」

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