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ある王の終わり

そこには何もない。ただただ白い空間に闇よりなお暗い闇色の鎧の巨躯が膝を抱え項垂れ座り込んでいた。


『私の何が悪かったのだろう?』


顔を上げ、弱々しく茜色の光をともす魔鎧王の視線の先には私の姿があった。彼の問いに私は何と答えれば良いのかわからず沈黙を貫いた。先ほどの光景が事実なら魔鎧王に非はない。それでも不幸な事故だと言って片づけられるものでもない。ふと、骸骨神官スケルトンプリーストのヒエレウスの言葉が思い浮かぶ。


『爺達はもう、この世にいてはならない存在なのです』


不死者アンデッドはこの世界に存在することすら許されないのだろうか。それでも存在したいと願うのは身勝手なわがままなのだろうか。私達アンデッドは…どうすれば良かったのだろう。


答えが出ないまま沈黙が空間を支配する。


『もう一度、愛しい者達に会いたいなどと分に合わぬ願いを持ったのがいけなかったのかもしれぬな』


『その願いのどこに非がある』


もう一度会えるのなら会いたいと思うことの何がいけない。そんなささやかな願いさえ私達アンデッドには許されないのか。


『非はないだろう。しかし、不死者アンデッドが望んではいけない願いだったのだろう。死んだ者は死んだ者として、正者の生きる世界に戻ってはいけなかったのだよ』


話す魔鎧王の声は諦めと絶望に染まり深く沈んでいた。


『私は…生きている。死んでなんかいない。嬉しいと喜び、悲しければ悲しいと感じる心が私達アンデッドにだってある。人の死とは違うかもしれないけれど、始まりがあって終わりがあるならそれは生きているといえないのか?』


私の言葉に魔鎧王の茜色の目が瞬き、しばらく顎に手をあて考え込んだ後ふっと笑ったような視線を私に向ける。


『そうだな、貴様は生きているな。私は貴様が羨ましいよ。…貴様は消えていった者たちの分も悔いなく生きよ』


『勿論』


私が大きく頷くと魔鎧王も満足げに頷き立ち上がると足元から少しずつその姿が消え始めていく。


『む、そろそろ時が来たようだ。ひとつ詫びねばならぬな。友を殺めるよう命じたこと本当にすまなかった』


謝罪の言葉と共に深々と私に向かって魔鎧王は頭を下げた。私は許すとも許さないとも答えない。暫くして頭を上げた上げた魔鎧王は自嘲気味に話し出した。


『詫びて全てが許されるなら苦労はないな。地獄があるなら甘んじて罵倒されてこよう。さらばだ、闇夜に煌めく星のような騎士よ』


最後に別れの言葉を口調で魔鎧王は言い終え手を振るとその身は跡形もなく消えうせ、ただ何もない白い空間がだけが広がっていた。

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