玉座を目指して
城門を潜り、私達は一直線に王のいる王城の玉座の間を目指す。
アイナを抱えながら駆け抜けるノティヴァンが申し訳なさげな声で前面に比べれば棘の少ない背中にキキを背負って併走する私に声をかけた。
「さっきはすまなかった」
『物凄く痛かったですよ』
半ば笑いながら少しばかりノティヴァンをいじめるような言葉を私は返す。結果から見れば作戦は成功に終わった。それでも物凄く痛かったことの仕返しを少しぐらいしても許されるだろう。
「本当にそれは悪かった。詫びるだけで足りないなら_『冗談ですよ、話はこれまで。急ぎましょう』
本当に反省しているのにこれ以上ノティアヴァンをいじめるのは流石に可愛そうだ。尚も謝ろうとするのを私は笑って言葉を遮り話を終わらせ先を急かした。
アイナとキキを下ろし踏み入れた城の中は見るも無残な有様だった。元は純白に輝いていた白い壁は灰色に煤け、廊下に敷かれた鮮やかな真紅であったであろうビロードの絨毯はくすみいたるところに黒い染みを浮かばせている。
美しかった頃を知るアイナはこの光景に口に手をあて涙を流した。しかし、彼女は深い悲しみに襲われても懸命に前に向かって走る足を止めはしなかった。
「絶対にこの国を救うからな」
アイナの手を握るノティヴァンの手に力が篭る。
長い廊下を駆け抜けた先には大広間に続く豪華な装飾の施された扉。大広間を抜けた先に玉座の間はある。目的地まであと少し。はやる気持ちで扉を開いた先には大広間を埋め尽くす程の軽鎧に身を包み剣と盾を手にした骸骨騎士とその後続には闇色の鎧の一団の姿があった。
ほんの一瞬、ノティヴァんの顔がげんなりしたものになる。骸骨騎士の数はざっと見ただけでも数えるのが嫌になる。少なく見積もっても1000体はくだらないだろう。
この数を相手に余計な事は考えてる暇はない。思うところは多大にある。あるが、今は考えるのを止めよう。覚悟を決め双剣を構える私の隣には真面目な面持ちに戻ったノティヴァンが槍を構えていた。
「もう、壊れてるんだし、少しくらい壊しても誰も怒らないよな?」
言って大きく横なぎに振るわれた槍は骸骨騎士を5人ほど纏めてなぎ払い大広間の壁に叩きつける。半ば壁にめり込んだ骸骨騎士達が壁から抜け出そうしている間にノティヴァンは骸骨騎士に肉薄すると石突の一振りで5体の頭蓋骨と核晶を叩き割った。
私も双剣に光の魔力を纏わせ迫りくる骸骨騎士に振るう。淡く白色の光を放つ双剣に触れた瞬間、骸骨騎士の骨はパラパラと白い粉になり砕けていった。
半数ほどの骸骨騎士を倒したところで「これくらいで良いだろう」とノティヴァンが穂先を見つめながら呟く。見れば大量の闇の魔力を吸収した穂先は闇色の暗い光を放っていた。
ノティヴァンは闇色に輝く槍の先端で宙に自身と同じくらいの円を描く。描き終えるとそこには闇色の巨大な球体が出現し地表から僅かに浮いていた。
「飛んでけー!」
浮かんだ球体にノティヴァンは投擲の姿勢で思い切り石突を叩きつけると球体は物凄い速さで前方に向かって飛んで行き進むごとに巨大になっていく。
最終的には元の5倍ほどの大きさに膨らんだ球体はバキバキメキャメキャとそこらへんの骸骨騎士を轢き砕きながら球体は進む。後続に控えていた生きる鎧達を棒倒しの棒のように跳ね飛ばしドーンと派手な衝突音をたて大広間の壁に激突してやっと球体は進むのを止め、ふわりと霧のように消え去った。
球体の通り過ぎた後には無数の骸骨騎士と生きる鎧の残骸が散らばる。
「全部相手にしてたら面倒だ。このまま駆け抜けるぞ」
言うのと同時にノティヴァンはアイナを脇に抱えて球体の作り出した玉座の間までの道を駆け出す。私もキキを脇に抱えるとその後を追った。




