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帰路

お腹も一杯になり遊びつかれた子供達は皆、敷き布の上で薄手の毛布をかけられ、すやすやと眠っていた。傍らには片付けを終えたラミナとポーラが優しく子供達の頭を撫でていた。


私はと言うと、子供達が起きるまで食材調達という使命で湖の辺で釣りをしていた。そんな私の後ろの少し離れたところからリーリエが湖を眺めていた。

私とリーリエの間に言葉はなく、木々が風で揺れ葉が擦れる音と時折湖から飛び上がった魚が着水するが音がする程度だった。


そこそこの大きさの七色魚が釣れ、木桶に移していると


「その、…あの時は疑って悪かった」


聞こうとしないと聞き逃してしまうような小さな声でリーリエは私に謝罪した。

あの時は少しばかり腹が立ったが、デイジーのもつ能力を知って、致し方ないとも思えた。あの能力は偽ることで富や名声、悪事をなそうとするものには邪魔以外の何者でもない。亡き者にしたいと思われてもしかたのないものというのは私でも分かる。おそらく、幾度も命を狙われたのだろう。過剰なほど心配するのも頷けた。


『デイジーが大事だからなんだろ?もう気にはしてない』


「そうか、ありがとう」


小さく礼を言うとリーリエは私の隣に座った。


「…アステルは強いな」


『まだまださ。師匠に言わせれば卵がやっとヒヨコになったくらいだそうだ』


私が苦笑するとリーリエは目を丸くしてした。


「あれだけ強いのにか?」


『上には上がいる。守るべきものがいるなら常に精進しないとな。そうだろ?』


真っ直ぐリーリエの金色の瞳を見つめると、しっかりした意思の篭った瞳で見つめ返された。


「そうだな。落ち込んでる暇があるなら精進するのみだ」


力強く微笑むリーリエからはもう、ソフィアの家に滞在していた時の後ろ向きな雰囲気は消し飛んでいた。




「皆、起きたからそろそろ帰りましょう」


木剣を交える私とリーリエにラミナが後ろから声をかけた。

あれから話の流れで私はリーリエに剣の稽古をつけることになった。

彼女の剣はその性格と同じく真っ直ぐだ。悪いことではないがそれだけでは敵を倒せない。リーリエの性格にあったアドバイスをいくつか出すと、直ぐにそれを反映させてきた。才能という伸びしろはまだまだある。リーリエはもっと強くなれるだろう。


『稽古はここまでだな』


リーリエに貸した木剣と自身の使っていた木剣をポーチに納めラミナのほうに向き直った。


『リーリエの息が整ったら行くよ』


「分かったわ」


私の返事を受けてラミナは子供達の元に戻っていった。


『もう、歩けるかい?』


「もう少しだけ待ってくれ」


両膝に手を置き、肩で大きく息をしながらリーリエは答えた。

リーリエの息が整うのを待つ間、私はお土産の入った木桶を回収していた。




行きと同様に七色湖から西都までの間はデイジー達には目隠しをさせてもらった。行きは不安げだったリーリエとポーラも帰りは落ち着いたもので私の引く荷車の心地よい揺れに少しばかりうとうとしていた。

西都についた頃には日はだいぶ傾き、空を茜色に染め、白い月が少しばかり顔を覗かせていた。

関所に着くと顔なじみの衛兵が気さくに声を掛けてくれた。


「お帰り。そうそう、そちらのお嬢さん方に用がある人が表で待ってるよ」


衛兵に言われ、関所の表に出るとぱりっとした黒の燕尾服に身を包んだ片メガネ着けた品の良さそうな老年の男性執事が豪華な馬車と共に控えていた。


「お嬢様方、お迎えに参りました」


デイジー達にこれぞお手本という綺麗な礼を執事がするとリーリエが一歩前に出た。


「爺、迎えありがとう」


「迎えが遅くなったこと誠に…」


男性の言葉に被るようにリールエは話す。


「構わないさ。とても良い経験をさせてもらった」


「それは、良うございました」


老執事はリーリエ達に微笑み向けた後に、私達の方に視線を向け一礼した。


「この度はお嬢様方の危機を救ってくださり誠にありがとうございました。後ほど旦那様よりお礼をとの言伝を給わっております」


『お礼なんて。困っていて手助けが出来たからしたまでのことですよ』


「お礼をされるような大層なことはしてないわ」


私とラミナが困惑していると男性執事は優しげに微笑んだ。


「無欲なのは素晴らしいですが、貰える物は貰っておくものですよ」


戸惑う私達に老執事は変わらず笑みを浮べていた。


「それではお嬢様方参りましょうか」


そう言って執事が荷台の扉を開く。


「世話になった」


短く礼を言うと木桶を手にリーリエは荷台に乗り込み、


「また、お会いしましょう」


可愛く一礼してポーラに手を引かれてデイジーも荷台に乗り込み、最後にポーラが「ありがとうございました」と一礼して荷台の扉を閉めた。

「それでは失礼します」と老執事が一礼し、御者台の御者の隣に座ると馬車はゆっくりと進みだした。

馬車を見送り、私達も岐路に付き、家に着いたときには二つの月が煌々とよそらに輝いていた。



あれから、数日後。

どのような経緯をたどったのか1通の手紙が届いた。

手紙の内容は来月行われるデイジーの誕生日会の招待状だった。

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