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名前をもらいました

身体に魔力が十分に行き渡った頃、隣の部屋から赤ちゃんを抱いて女性が戻ってくるとわたしと対面するする位置の椅子に腰掛けわたしに微笑みかけ「ばたばたして自己紹介もまだだったわね」と自己紹介を始めた。


「私はラミナ。ラミナって呼んで。それからこの子は≪ソアレ≫」


ラミナは抱いていた金色の髪の赤ちゃん、ソアレの頭を愛おしそうに撫でながらわたしに尋ねた。


「それで貴方の名前は何ていうの?」


名を問われ、わたしは黙るしかなかった。

名乗る名前がないのだ。


『…わたしには名前がない』


「そうなの。じゃあ、私から貴方に名前を贈って良いかしら?」


ソアレを抱きながら立ち上がったラミナは優しくわたしの頭を撫でた。


『良いのか?』


戸惑い気味に尋ねるわたしにラミナは笑顔で頷き、


「ええ、勿論よ。私もたいそうな魔物じゃないからそんなに加護はないけど」


と茶目っ気たっぷりのウインクを添えた。


「貴方に≪アステル≫この名前を贈ります」


そう、ラミナが言うと胸の奥がぽっと暖かくなった。


『なんだか胸が温かくなったんだがこれが加護なのか?』


「そうよ。それが炎の加護。少しだけど火の耐性が上がったり、寒さに強くなるわ」


『ありがとう』


わたしが感謝を述べるとラミナは頭を撫でていた手でわたしの手を握った。


「こちらこそ、私のところに来てくれてありがとう。これからよろしくね」


これからもよろしくということはわたしはここにいて良い?

赤ちゃんを助けることしか頭になく、助けたその後の事など全く考えていなかった。


『これからもって、わたしはここにいて良いのか?』


何を当たり前のことを聞くのかとラミナの顔は半ば呆れていた。


「勿論、ここにいて色々手伝ってもらいますからね。子育ては両親がするものですから」


両親ということは、母親がラミナならわたしは父親ということか。


『了解した。立派な父親になれるよう努力しよう』


「その意気。その意気。でも、今日はまだ休んでいて。貴方も生まれたばかりで頑張ったのだから」


生まれたばかり?

そうか、だからわたしは名前も持たず、自身についても知識がなかったのか。

納得すると同時に、急激な疲労感と睡魔が襲ってきた。


『どうやら…頑張りすぎたみたいだ…』


言い終わる前にわたしの意識は闇に飲まれていた。

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