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双剣の記憶

鞘に双剣を収め背中に担ぐと突然、目の前の景色が変わった。


抜けるように晴れた青空に不釣合いな黒いマントに身を包んだ大勢の騎士が1つの墓石の前に集っていた。

墓石の一番傍には黒いベールを目深に被った黒いロングスカートに身を包んだ女の人が赤ちゃんを抱いて立っていた。

女の人の右側にはその手を握る黒い服を着た黒髪に金色の瞳の幼い少年が並び、左側には王冠を被った40代くらいの男の人、服装からどこかの国の王様だろうと男の人と雰囲気の似た成人したばかりの少年、こっちは王子様だろうかが並んで立っていた。


「母さん、父さんはどうして死んじゃったの?」


幼い少年が女の人に尋ねるが、女の人は顔を伏せて答えず、代わりに王様が答えた。


「そなたの父君は我の息子を救うために犠牲になられた」


「王子様のために?」


少年が王子の方を見ると王子は顔を伏せていた。


「私が未熟なばかりに…」


そう言う王子の声は涙声だった。


「父さんは王子様を救ったんだよね」


「そうじゃ、父君は立派な騎士であられたぞ」


「父さんは立派な…騎士だった…」


そこまで言うと少年の涙腺は決壊し、大粒の涙を流していた。少年の胸には濃い翠地に金の紋章が描かれた1対の双剣が抱えられていた。



『……か?、おい、大丈夫か?』


大きく肩を揺すられ、わたしははっとした。


『え、あぁ、大丈夫です』


いつの間にか青空と大勢の騎士は消え、先ほどまでと同じ薄紫の霧に覆われた森の景色が映し出された。

あの光景は一体?あれ?再度、光景を思い出そうとしても思い出せない。わたしは何を見ていたんだ?思わず、頭に手を当てていると、


『本当に大丈夫なのか?』


そう聞いてくる騎士の声はわたしを心配しているものだった。


『本当に大丈夫です。ただ、…』


『ただ?』


『何かを見た気がするんですけど、何を見たのか思い出せなくて』


『そうか、意外とひょうんな時に思い出すかも知れんぞ』


『そうですね』


小さく笑い、今は見た光景のことは一先ず置いておくことにした。



そういえば、騎士の名前を聞いていなかったことを思い出した。わたしが尋ねようと口を開きかけると、騎士も同じ考えだったのか、わたしの名を尋ねてきた。


『ところでお主、名はなんと言う?』


『アステルと言います』


『アステル…』


小さくわたしの名を呟くと騎士は何か考え込んでいるようだった。


『わたしの名が何か?』


『いや、なんでもない。その名、誰から貰った?』


『薬師のラミアのラミナに貰いました』


『そうか。良い名を貰ったな』


言う騎士の声は微笑ましいものを見たような朗らかな声だった。


『貴方はなんと言う名なのです?』


わたしが尋ねると騎士は暫く考え込んでから、


『今のわしに名乗るような名前はないのう。呼ぶなら翁とでも呼んでくれい』


『おきな?』


「おじいさんってことよ。マスターもセンスないですわ」


わたしの疑問にパナが呆れ声で答えてくれた。


『しがない隠居ジジイには丁度良かろうよ』


カッカッカッと翁は楽しげに笑い、パナはまったくこの人はと眉間に皺を寄せ腕を組んで呆れていた。


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