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少女と霊槍

東に向かって歩き始めてから丁度1オーラ(時間)程、森が開け屋敷が1邸ほど建てられる平地とその左手側には平地の1/3のほどの大きさの黒い水のたまった池がわたし達の前に現れた。

少女の探すマスターが居るならこの辺りなのだが、それらしい人影はまだ見えない。

ん?一瞬、池の辺で何かが動いたように見えた。

よく見ると丸太で組んだテーブルと長いすに誰かが腰掛けているようだ。


『あそこ、人影が見えないか?』


少女に声をかけ池の方を指差すと


「!!この感じ、マスターに違いありませんわ!」


風見鶏を私に押し付けると今までとは比べ物にならない速さで少女は人影に向かって進み始める。慌ててわたしも駆け足で少女の後を追った。

徐々に人影の姿が鮮明になっていき、その姿はいぶし銀の鎧をまとう騎士の姿だった。


「マースーター!!」


少女の叫び声でいぶし銀の騎士が此方を見ると、少女はスピードを落とすことなく騎士に抱きつこうとしていた。


『パナ!』


少女の名前だろうか?一声叫ぶと騎士は少女をしっかりと受け止めた。


「会いたかった。会いたかったですわ」


涙声で少女は騎士に抱きつき顔を胸甲にこすり付ける。そんな少女の頭を騎士は優しく撫でた。


『すまんかったのう。1人にして』


「もう、私を1人にしないでくださいな」


『そうしてやりたいんじゃがのう…』


騎士の声は困り果てているようだった。


いつの間にかふわりふわりと小さな光の粉がわたし達の周りに舞いだした。どこから湧いてきたのだろ?周りを見回し、粉の正体にわたしはただ、動揺するばかりだった。


『あの、その…解けてますよ』


光の粉の正体は騎士の鎧だった。少女が触れている部分から騎士の鎧は解けて細かい光の粉となり宙に舞っていた。

動揺するわたしに対して騎士は落ち着いた口調で


『ああ、なに問題ないさ』


言葉通りに解けた鎧は解けたそばから修復されていた。

これは一体どういうことなのだろう?

わたしが尋ねようと口を開く前に騎士はわたしに向かって一礼し礼を述べた。


『パナを連れて来てくれてありがとう。この森でパナに触れて大丈夫なものがおるとは思わなかったわい』


『それはどういう意味です?』


『どうもこうもこういうことじゃよ』


騎士は解けた自分の身体を指差した。


『…彼女に触れると解けるということですか』


『普通はな』


普通ということはまるでわたしが普通ではないと言われているようだ。たぶん、わたしは普通のリビングアーマーのはずだ。


『彼女は一体なんなんです?』


少女に会ってからずと抱いていた疑問を騎士に投げかけた。


『こやつは、光の女神から賜りし霊槍パナポナイフィシティアシーじゃ』


『霊槍?え?でも少女じゃ…』


目の前の少女と自身が握っている槍を交互に見る。


『そっちが本体じゃよ』


騎士はわたしの持つ槍を指差す。


『これが本体…ならそこにいるのは?』


『槍に宿る精霊、まあ槍の意思と言ったところかの』


槍から視線を少女の方に戻すと少女パナは騎士の横に座らされていた。

少女に対する疑問は晴れたが、今度は自身に対して疑問が生まれた。


『なら、霊槍に触れても大丈夫なわたしは?』


今まで静かに聞いていたパナが口を開いた。


「貴方、分かってなかったの?」


その声は驚きと呆れの混じったものだった。


『分かってないって、何のことを?』


「属性よ。ぞ・く・せ・い」


『属性?』


困惑し、騎士の方を見ると


『魔物は皆属性を持っていて、大体は住まう土地の属性を持っておるんじゃよ。水に住むモノなら水属性、森に住まうモノなら森属性といった感じでな。まれに2属性持ちというものもおらんでもないがの。でだ、わしらのような不死人は基本闇属性なんじゃよ』


騎士の丁寧な説明で属性のことは理解できた。


「今のマスターの話でも分からないの?」


それでも分かっていない事が何なのかはいまだに分からない。いや、待てよ、もしかしたら…


『わたしの属性は光ということなのか?』


「やっと、分かった」


『そう言うことじゃな』


パナはパチパチと小さく手を叩き、騎士はうんうんと頷いていた。

わたしの属性は光なのか…。納得しかけて矛盾に気づいた。


『魔物が光属性というのはおかしくないか?』


魔のものを生み出したのは闇の男神。光のものを生み出したのは光の女神。光の属性は女神が生み出した人のみが持つもので魔物は持つことが出来なかったはず。


「ええ、おかしいわね。でも、何事にも例外というものはあるわ。その例外が貴方であり、前例がないわけじゃないわ」


『前例?』


「御伽噺に出てくるぐらい昔にいたそうよ。私も直接会ったわけじゃないから詳しくは知らないけど」


『そうなのか。会ってみたかったな』


「こればっかりは、巡り会わせがなかってことね」


『そうだね』


わたしは肩をすくめ、パナも残念そうな微笑を浮かべていた。

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