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それはある冷たい雨の振る日でした後編

不意に二人の笑い声とは別に小さな悲鳴と地響きの音が混じりだした。

あっという間に地響きは大きくなり音のする方にわたしが振り向いた時には得体の知れない何かに突撃され凄まじい衝撃とともに吹き飛ばされていた。


宙で2,3回横転した後にうつぶせの状態でわたしは地面に叩きつけられた。

突撃されたわたしの背面と地面に叩きつけられた前面には細かい罅が入り周りを見ようと肘を立て起き上がろうとすると全身を激痛が襲った。

「あぐぅ」うめき声を上げながら上げた視線の先に映ったものはガレキの山と化した村長の家とその中心にはわたしより二周りほどもある体長の黒光りする甲羅を背負った黄土色の巨大なワニ亀の姿があった。

何だあれは?


「地竜の幼生だ!」


「戦えないものは逃げろ。戦士は武器を持て!!」


「なんでこんな所に地竜が」


わたしの疑問に答えるかのようにゴブリン達が口々に叫んでいた。


アネモスとルルビと村長は?

痛む身体で立ち上がり崩壊した村長の家を良く見ると動く小さな人影があった。アネモスとルルビだ。二人の無事を確認したのもつかの間、地竜が二人の方へ顔をむけ鋭い牙の並んだ口を大きく開け迫った。


『アネモス!!ルルビ!!』


届かないと分かっていても手を伸ばさずにはいられなかった。

地竜が顔を上げるとその口元にはアネモスが咥えられ、少し離れたところにルルビが転がっていた。あの瞬間にアネモスがルルビを突き飛ばし、ルルビは難を逃れたのだろう。

しかしアネモスは…


『アネモス!今、助けるから』


直ぐにでも駆け寄りたくても1歩足を踏み出すたびに全身がバラバラになるような痛みが襲ってくる。それでも駆け寄ろうとするわたしにアネモスは悲しそうな笑顔を向けた。


「ルルビのこと頼むわ」


これがアネモスの最後の言葉になった。


地竜は咥えていたアネモスを軽く頭を上に振り、宙に放り上げ落下してくるアネモスを口を大きく開けて待ち構えた。


バクン


地竜はアネモスを一飲みするとモゴモゴと口を動かす。静まり返った空間にバキ、ゴキという硬いものが砕ける音が響き、鋭い牙の並ぶ口の歯の隙間から紫色の液体が零れその口をつたっていた。


『…ぁぁぁぁ』


嘘だ。こんなの現実じゃない。アネモスが死んだなんて。

事実を受け入れられず、呆然とするわたしの耳に怒りに満ちた叫び声が聞こえた。


「よくも弟を!!!」


声の主は細いながらも鍛えられた筋肉を持った槍を構えた戦士ゴブリンだった。彼のほかにも剣や斧といった武器を構えた戦士ゴブリンが6人、地竜を囲んでいた。

戦士ゴブリン達は地竜の目や喉といった致命傷を狙える所と動きを止められる間接部分を重点的に攻撃していった。

戦士達の攻撃は地竜に少しずつダーメジを蓄積させていたが、地竜の反撃で戦士達もまた少なからずダメージを負っていた。

槍士ゴブリンの槍の一撃が地竜の目を抉った。ゴブリン達が有利になったと思われた瞬間、地竜の太く頑強な尻尾が槍士ゴブリンと近くにいた2人の戦士ゴブリンを張り倒した。

残り3人が倒れた3人を庇う様に地竜に攻撃を仕掛けるが、痛みに怒り狂った地竜の突撃で1人、また1人と戦士達は倒され、彼らの持っていた武器は地面に散らばり、いつの間にかこの場に立っているのはわたしだけになっていた。


片目から紫色の涙を流し、反対は怒りに満ちた瞳がわたしの左隣を凝視していた。

視線の方を向くとルルビが倒れていた。やつの狙いはルルビか!

大きな口を開けて地竜がこちらに向かって走ってくる。

すぐさまルルビを左脇に抱え逃げようとするが、地竜は何事もなかったように追ってくる。

逃げ切れない。ならばとる行動は一つしかない。

落ちていた剣を右手で握り、地竜の口から脳天目掛けて突き上げる。地竜も気づいたのか慌てて口を閉じようとしたがわたしの突きの方が早く肉を突いたグニャリとした感覚と骨の硬い感触が右手に伝わっていた。

剣から手を離す余裕はなかった。


バックン 地竜の口が閉じ


バキン 金属の砕ける音


地竜の巨大な口がわたしの右腕を肩口から飲み込み食いちぎった。


『…!!!!』


今までの痛みとは比べられない激痛に声にならない絶叫を上げていた。

遠のく意識の端に地面に倒れ伏した地竜の姿を確認したところで世界が暗転した。

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