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王との会見と謎の声

 光に包まれ白一色に染められた世界に色が戻ると、そこは金色の壁に囲まれ豪奢な調度品や装飾に彩られた大広間。

 中央には豪奢な玉座が据えられ、そこには縦に半楕円型の装飾の施された帽子を被った少しばかり疲れた顔の褐色の中年の男性が腰かけていた。男性の衣服は一見しただけでも質の良さが分かる火の国の民族衣装に手足首を飾り立てるのは輝く黄金や宝石に彩られた装飾品の数々。おそらく、彼がこの火の国の国王なのだろう。

 私達の乗った小船は玉座から少しばかり離れた室内に作られた池の真ん中に浮かんでいた。池からは真っ赤な絨毯が王の座る玉座まで伸びている。

 案内の男性に引き連れられた私達は王の御前まで行くと、その場で深く跪く案内の男性に倣いその間に跪いた。


「面を上げよ」


 頭を垂れた私の頭上から声が降りかかってくる。その声は表情と同じ、どこか疲れた覇気のないもの。

 顔を上げ、間近で見た見た国王の顔は疲れ切った病人のようだった。これまで水の国、地の国と王を見てきたが、こんなにも疲れ果て覇気のない王を見たのは初めてだ。これほど王が気をもむほどにこの国は問題が山積みなのだろうか?

 私が疑問を浮かべていると王はなんとか作り上げた笑みをノティヴァンに向けた。


「よくぞ来てくださった、勇者殿」


「訪れるのが遅くなり申し訳ございません」


 王に形ばかりの謝罪をし、頭を下げるノティヴァン。その横顔は明らかに面倒ごとが待っているのを察したのか既にげんなりしている。


「実はそなたに頼みがあってな……」


 あ……、ノテイヴァンの目が半目になった。そんなノティヴァンにかかわらず王は話を続けた。


「我が国の秘宝、火の宝珠が蛇人族ラミアによって奪われた。諸悪の根源、蛇人女王ラミアクイーンを討伐し奪い返して欲しい」


 この言葉に私の隣にいたラミナが青ざめ、注意していても周りの音にかき消されてしまうほど小さな声で「そんな、お母様がそんなことするはずが」と呟くのが聞こえてしまった。

 ラミナの母親がラミアの女王ならラミナは……。王の言葉は私を動揺の渦に叩きこむ。

 その時、玉座の間に凛と通る男性の声が響いた。


『それは嘘だ!』


 温かみのある良く通る澄んだ声。慌てて私は声の主を探したがどこにもその姿はない。聞けば誰でも声の主を探したくなるような声のはずなのに私以外に声に反応したものはいなかった。


「どうした、アステル?」


「何事だ?」


 王とノティヴァンが不思議そうに私を見つめる。慌てて私は頭を下げ二人に謝罪した。


『何でもございません』


「うむ、そうか。して勇者殿、討伐引き受けてくれるか?」


 王の言葉は疑問形であるがほぼ命令に近い。


「謹んでお受けいたします」


 ゆっくり頭を下げるノテイィヴァンの姿に王は満足げな笑みを浮かべた。


「討伐の暁には宴を開こうぞ。今日は宮殿で英気を養うと良い」


「お心遣い感謝いたします」


 ノティヴァンは謝辞を述べ、再度頭を下げると「こちらです」と先導する案内の元へ向かう。私達もその後に続き玉座の間を後にした。



 客間に向かう途中の私達の表情は誰も明るいものではなかった。顔を伏せ今にも泣きだしそうなラミナに寄り添う私、そんな彼女を心配げに見守るソアレとキキ。

 険しい表情のノティヴァンの隣ではバートのゼェゼェと浅い息遣いが聞こえる。元々、バートは口数が少ないほうだが、火の国入ってから彼が言葉を発している所を見ていない気がする。


『バート、大丈夫か?』


 心配になり声をかけたと同時にバートの巨体がぐらりとかしぐと、そのまま膝から崩れ落ちガシャンと派手な音をあたりに響かせた。


「バート、しっかりしろ」


 うつ伏せに倒れたバートに慌ててノティヴァンが声をかけても返答はない。兜から洩れるのは浅い息遣いだけ。


「アステル、手伝ってくれないか」


『分かった』


 焦りを含んだノティヴァンの声に私はすぐさま応える。ラミナの方を伺いみると彼女も心配げな面持ちで行ってあげてと言うかのように小さく頷いていた。左右、二人がかりでバートの巨体を背負うと私達は客間に急いだ。

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