第六話 経験値と魔法と超レア魔法
コボルド、二十体の討伐クエスト。報酬を三人で割って一万ガルズ。
コボルド、百体の討伐クエスト。数が多い為、報酬は二十万ガルズだが、参加した四人で割って五万ガルズ。
危険スポットと言われ続けた縄張りの解体によるボーナス報酬、四人で割って二十五万ガルズ。
エイジは異世界に来た初日、昼食の代金、千二百ガルズを差し引き、所持金が三十万八千八百ガルズとなっていた。
それは、エイジが頑張った証しでもあるのだが、ライセンスカードに書かれたエイジの冒険者レベルは三と、あまりレベルアップをしていなかった。
「これが現実か…。命懸けだってのに、ソシャゲのガチャより辛いな……」
ギルドの席に座るエイジが呟く。
確かにエイジは、縄張りのボスを倒して活躍したのだが、ボスと言ってもコボルドはコボルド、経験値は少なく、大したレベルアップに繋がらないのは当然の事だ。
しかも、レベルが二に上がったのはアックスオーガを倒した時で、コボルドの無双とクエストクリアで一のレベルアップ。
強い魔物と難易度の高いクエストでしか大きな経験値をえる事ができないのは明白で、イニティウムの街周辺で大きな経験値を得ることができるのは、やはり、鬼種の魔物となる。
しかし、それを受ける為にも高いレベルが必要となり、実質、イニティウムでのレベリングは望ましくない。
冒険者レベルが二以上になったエイジは、受付嬢から、高難易度クエストへの挑戦以外の特典を聞かされていた。
複数存在するが、その中でも重要なのは、レベルにみあったダンジョンへの挑戦許可と、強力な魔法の発動許可だ。
この世界の魔法には、初級、中級、上級、超級の四段階存在する。
初級は主に生活に使う魔法で、戦いに使う様な魔法は中級以上の魔法になる。
しかし、上級や超級の魔法は危険な為、一般人は発動できず、冒険者か特定の職業にのみ許可される。
許可の降りかたは職業によって違う。
「ダンジョンに入りてー」
「じゃあ、最低でもレベル十五以上は必要となるね。僕はダンジョンなんか興味ないけどね」
「意外ですね。カイトさんはダンジョンにある特殊固有魔法、ユニークには興味ないんですか?」
「無いよ。だって、僕はユニークを持ってるからね」
「私もだよー」
「そうなんですか!?」
「はーい、質問です! ユニークってなに? ダンジョンにある特殊…特殊……超レア魔法なんだろ? なんでカイトとシルヴィアが使えんの?」
特殊固有魔法を言えずに超レア魔法と言ったエイジの質問に、街に入ってから再びフードを被っていたフィルディアが答えてくれる。
「ユニークと言うのはですね、四段階の魔法とは別魔法で、生まれつき持っている人もいるんです。この場合は、圧倒的な魔力を保有している証拠ですね」
「なるほど! だからカイトは、バカみたいに魔力を無駄に使ってたのか!」
「酷い言われようだな」
「当たってるけどね。お兄ちゃんの魔法は、中級ギリギリの高火力広範囲ばかりだもん。それだから、連携がとれずに夕食をおごる事になっちゃったもんねー」
「はっはっはー! 報酬が多かったから構わないとも!」
意外と多かった報酬で財布が潤っているカイトからすれば、ギルドで皆の夕食をおごる事など余裕の事で、強気だ。
「…なぁ、カイト。なんでお前はダンジョンに興味がないんだ? 二つ目のユニークとかヤバくないか!」
高火力を求めるカイトならば、きっと複数のユニークを欲しがると思っての質問だった。
「ユニークを持てるは一人一つ。当然、ダンジョンの最新部までたどり着く必要があるし、この世界でダンジョンの攻略者は二人だけ。難易度だけなら僕も興味があるよ」
ダンジョンにもレベルが指定されており、難しく強い魔物が多いダンジョンほどに強力なユニークがあるとされており、冒険者がそのダンジョンに入るには、そのダンジョンのレベルを上回っているのが条件だ。
もし、ライセンスのレベルが上回っていない場合、もしくは一般人が入ろうとした場合は、ダンジョンを守る結界によって弾かれてしまう。
「攻略されているダンジョンは、どれくらいの難易度なんだ?」
「攻略されているダンジョンは、レベル二十と七十で、七十の方はこの世界の王様だよ」
(この世界の王様? 国じゃなくてか?)
「なぁ--」
エイジが気になった事を質問しようとしたが、
「お待たせしましたー!」
このタイミングで注文した料理が届く。
「どうしたの、エイジ君?」
「いや、なんでもない。じゃあ、食べるとするか! いただきます!」
エイジが注文したのは昼と同じで、今度は冷める前に食べ終えることができた。
夕食後、四人でギルド内で他愛ない話で笑いあっていたが、外が暗くなっているのを見て、エイジは今日泊まる宿をとってなかったのを思いだし、ここで解散する事になった。
「じゃあな、三人共! 久しぶりに楽しいと思えたよ。ありがとな!」
そう言い残して、エイジはギルドを出ていった。
カイトがとっている宿は人気の宿で、空きの部屋が無く、エイジがその宿で部屋を借りることはできないだろうとカイトに言われ、エイジは別の宿を探していた。
「さてと、案内図の場所に行くかな」
街の事をほとんど知らないエイジは、一度世話になった案内図の場所を目指して歩みだす。
しかし、そんなエイジをある人物が呼び止める。
「エイジさん、待ってください!」
その人物とはフィルディアだ。
エイジは既にギルドから離れた場所にいるが、フィルディアはエイジの後を走って追いかけてきたのだ。
「どうしたんだ、フィルディア?」
「はぁ、はぁ、ちょ、ちょっと待ってください。息を、整えますので…」
そう言ったフィルディアは、深呼吸をして息を整え、フードを下ろした。
「あの、 エイジさんは何処から来たんですか?」
「…………!?」
その質問はエイジの考えていなかったもので、エイジは返す言葉に困ったが、あることを思い出し、それでその場をやり過ごすことにした。
「俺はここで、勝者の命令権を使う。答えられない。すまんが、それで納得してくれ」
「……分かりました。では、もう一つ。これはお願いになりますね」
「なに?」
「私とパーティーを組んでください!」




