第四話 そして食卓へ・・・
「クエストのクリアを確認しました、お疲れ様です。こちら、報酬の三万ガルズになります」
「どうも」
コボルドの討伐クエストをクリアし、ギルドのカウンターで報酬を三分割し、一万ガルズをエイジは受けとる。
「待ってエイジ君! 私はクエストに正式に参加した訳じゃないし、なにもしてないから受け取れないよ!」
自分の分け前を受け取り、ギルドで食事をしていたエイジにシルヴィアが言う。
口に入れた肉をよく噛み、飲み込んでからエイジは答える。
「いやいや、十分な活躍だったじゃないか? コボルドにボコられた俺の傷を回復魔法で治してくれただろ?」
鬼との戦いの後、雷の音のせいでクエストの指定討伐数を超える程にコボルドが集まり、雷刃を使って戦っていたエイジは、カイトの魔法に巻き込まれ、その後、コボルドにフルボッコにされた。
「本当にごめんなさい! お兄ちゃんに悪気は無かったの! お兄ちゃんはただバカなの!」
「バカってなんだよ! 僕はいつも全力なだけだよ!」
「加減を知らないバカでしょ!」
エイジが食事をとる席で兄妹喧嘩が始まった為、エイジは食器を持って席を離れる。
席を外したのは良かったのだが、ほとんどの席が酒を飲む冒険者で埋め尽くされ、その他の場所も打ち合わせをしている冒険者パーティーなどが座っており、空いている席が無い。
その為、エイジに残された選択肢は戻るか相席のみだ。
エイジは周りを見渡し、座っている人数が少ない席を探し、隅の方に一人しか座っていない席を見つけ、迷わずその席に向かう。
その席に座っている人物は、羽織っているローブのフードを深く被って顔を隠しており、怪しさが溢れる為、エイジ以外の誰も近づかない。
「すいません、相席させてもらってもいいですか?」
「え!? はい! 構いませんよ、どうぞ!」
その人物は、自分の座る隣の椅子を引く。
「えーと、向かいの席で構わないですよ?」
「あ!? すすす、すいません!!」
「いえ、気にしないでください」
そう答えると、エイジは向かいの席に座り、食事の続きをとる。
(声を聞くまで分からなかったけど、まさか女性だったとは……。ナンパと勘違いされてなければ良いけど)
そんな事を考えながら、エイジは料理を次々に口へと運ぶ。
しかし、
「あ! エイジ君発見!」
またしても食事の邪魔が入る。
「エイジ! もう一度クエストに行こう! 僕がちゃんと連携できるところをシルヴィアに見せるんだよ!」
「!?」
シルヴィアと言う名前を聞き、エイジが相席している女性が一瞬反応したことにエイジは気づいた。
「どうしたんです?」
「すいません。自分の名前に似ていたもので、自分が呼ばれたのかと……」
「なるほど」
「エイジ君! お兄ちゃんが連携できない事を証明してあげて!」
「どんな証明だよ。てか、俺は食事中なんだが?」
「じゃあ、エイジ君のライセンス貸して。先にクエストを受けとくから」
「まあ、それなら。ほれ」
シルヴィアにお願いされ、エイジはパーカーの内ポケットからライセンスカードを取りだし、シルヴィアに渡す。
「ありがとう、エイジ君! それじゃあ、クエストを選んでくるね!」
「僕も行ってくるよ」
クエストボードの方に二人が向かったのを確認すると、エイジは相席相手に話しかけた。
「喧しくして悪いな。俺は席を移すよ」
「気にしないでください。賑やかなのは良いことですから!」
「そうか」
エイジはお言葉に甘え、そのまま食事を再開する。
しかし、
「エイジ君! お兄ちゃんがキングアックスオーガの討伐を受けようとしてるんだけど!」
またしても邪魔が入る。
余談だが、エイジの倒した鬼がアックスオーガで、鬼種でも特に弱い方である。
カイトの受けようとしているのは、イニティウムの辺りに生息するアックスオーガのボスの事だ。
角が大きく鋭い程強い為、強いか弱いかの見分けるのは楽である。
「アックスオーガって、火属性魔法に弱いからお兄ちゃんが有利になっちゃうよ!」
「連携ができない事の証明じゃなかったのか?」
「エイジ! キングのクエストを受けよう!」
「却下」
即答し、皿の上にある肉をフォークで口に運んで食べる。
エイジの料理はまだ半分も減っていないが、温もりを失いつつある。
「仲が良いんですね。パーティーですか?」
「いいや、カイト達とは今日会ったばかりだ」
「え!?」
当然のリアクションをスルーし、エイジは邪魔が入る前に食事を終えようと食べ続けるが、
「エイジ!」
思いの外、戻ってくるのが早い。
「クエストはコボルドに決めたよ。さっきと同じ方が差が分かりやすいからね」
「普通、一番最初にその答えにたどり着くだろ」
エイジがカイトの方を向いて言うと、カイトがクエストの張り紙を二枚持っているのに気がつき、カイトに問う。
「もう一つのクエストはなんだ」
「キングアックスオーガ!」
「却下!!」
「そう言うと思って三枚目も用意してある!」
そう言って、カイトは後ろに隠していた三枚目の紙をエイジに見せた。
「三枚目は、キングアックスオーガの亜種!」
「絶対に却下!!」
エイジにハッキリと断られ、カイトが二枚を戻しにいくと、シルヴィアが別のクエストを持ってくる。
「エイジ君!」
「却下!」
「メタルベアーの討伐!」
「無視かよ! てか、食後にハードなクエストはやめてくれ!」
「……まだ食べてたの?」
「誰のせいだと思ってんだよ!」
「まあ、それは食べるのが遅いエイジ君だよね」
「よし! ライセンスを返せ、クエストには行かないで宿で寝る」
エイジは右手をだし、シルヴィアに渡したライセンスカードを取り上げようとする。
「冗談冗談! もう食事の邪魔はしないから!」
そう言い残したシルヴィアは、もといた席の方へと逃げていった。
カイトは、二枚のクエスト用紙を戻した後、既に席に戻っており、戻ってきたシルヴィアと言い争いを始める。
「うふふ…。あなたを含め、本当に仲が良いですね」
「確かに、それは否定ねぇよ。二人は最高の友逹だからな」
エイジは満面の笑みで答え、再度料理と向き合い、フォークでさした肉を口に運ぶ。
「………冷めてる」
エイジの顔から笑顔が消えた。




