第四十一話 二人の意思
「ねぇ、本当に行かないとダメ? 病院」
事件後日の早朝、家のリビングにあるソファーに座り、そのような情けない事を言う人物がいた。
エイジである。
「本当に行かないとダメです」
エイジの隣に座り、病院に行くよう促しているのがフィルディアだ。
しかし、フィルディアが何度も病院に行くように言うが、
「本当の本当に行かないとダメ?」
この調子で行こうとはしない。
「何度も言いますが、病院に行ってください!」
「何度も言うが、骨折程度で病院なんて行きたくないんだ!」
「行く理由としては十分じゃないですか!」
お互いに譲らない二人の会話に、エイジの向かいに座っていたシルヴィアが口を挟む。
「ねぇ、エイジ君。私が一緒に行ってあげようか?」
「いえ、私が同行しますので結構です」
フィルディアが即答で答えた。
「でも、フィルディアさんは王族だし、病院に同行させるとかは失礼ですよ~」
すかさずカウンターを入れるシルヴィア。
「あのー、俺は病院に行くとか言ってないんですけど…」
低く手を上げ、言い争う二人に恐る恐る主張したのだが、二人同時に睨まれ「何でもないです」と情けなく答え黙り混む。
心の中でカイトに助けを求めるが、先程出掛けたばかりで望み薄だ。
「エイジさんは私のフィアンセですから、同行するのは当然ですよ」
勝ち誇ったかの様などや顔見せた自称フィアンセに、流石のシルヴィアもとうとうキレてしまう。
「何がフィアンセよ、この女狐!」
「誰が女狐ですか!?」
「あなたに決まってるじゃない! 昨日の夜だって、エイジ君の様子を見るだけって言ったくせに、しれっと添い寝してたじゃない!」
「そ、それは……寝返りで腕が痛まない様に、エイジさんの隣で見張ってたんですよ! それに、今その事は関係ないじゃないですか!」
フィアンセの単語一つで、戦場は大きく荒れだす。
お互いに譲れないものがあり、その為に退くことはできない。
「な、なあ、喧嘩は止めようぜ。な?」
「エイジさんは黙っててください!」
「エイジ君は黙っててよ!」
「はい、すいません……」
二人同時に言われ、エイジは小動物の様に縮こまり、
(早く帰ってこいよ、カイトーー!!)
心の中でそう叫んだ。
結局、カイトが帰ってきたのはこの後一時間後であった。
帰宅して直ぐに助けを求めすがり付いてきたエイジと、リビングで喧嘩する二人の会話で状況を理解し、カイトが病院に付き添うと言うことで話は決着した。
最初は病院を嫌がっていたエイジだが、この状況を長引かせるよりはましであるとの判断のうえ、大人しく病院へ向かう事を選んだ。
午前十一時、診察を終えたエイジが、待合室で待っていたカイトと合流し、病院を後にした。
「で、どうだった?」
「先生がめっちゃ美人だった。でも、フィルには劣るな。そもそも、美人に可愛さを兼ね備えている時点で無敵だね! そりゃ、一目惚れだってしますとも」
「僕が聞いたのは腕の事なんだけど。それに、無理に元気のフリをするのは止めろよ」
「誰が無理に――」
「病院に来て現実を知ったろ? 一日までに腕が治る事はないって」
「それは……」
考えない様にしていた、確信を持つ事が嫌であった辛い現実。
病院に行けば、それは嫌でも理解させられてしまう。
折れた腕を即座に完治させられる程、回復魔法は便利ではないのだ。
その事実に、エイジは薄々気づいていた。
回復魔法で折れた腕が治せる場合、ティアやシルヴィアが既に治しているからだ。
「戦いに参加しても、今の状態では勝てない。無駄に傷つくだけだ」
「無駄かどうかなんて、やってみるまでは分からないだろ……」
「なら、試してみる?」
隣を歩くカイトはそう言って、エイジの前に移動して道を塞ぎ、
「僕と勝負しろ。君に、僕が現実を教えてあげるよ」
何時もとは違った雰囲気でそう告げた。
意見を通せるのは勝者のみ、エイジがカイトを、カイトがエイジを納得させる方法はただ一つ、
「いいぜ、カイト。その戦い、受けてやる!」
戦って勝つことだ。
久しぶりの投稿になりますが、次の話は直ぐに投稿しますので、是非とも読んでくれたらと思います。
第42話の内容は自分なりに良いものに成ったと思っていますので、ご期待ください。




