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異世界コンティニュー ~ユグドラシルの奇蹟~  作者: 星神凛花
第一章 「異世界からの冒険者編」
32/45

第三十一話 始まりは終わる

 ダンジョンの外では、アーサー達とグリムリーパーの戦いが今も続いていた。

 ベディヴィアとマーリンは殆ど戦闘不能な程に魔力と体力を消費しており、グリムリーパーとアーサーの一騎討ち状態である。


 両者共無傷であるが、三人を相手にして無傷なグリムリーパーが優勢で、このまま戦いが長引くのであれば、勝つのは間違いなくグリムリーパーといえるだろう。

 その一番の理由は、やはり体力である。


「はぁ……はぁ………」


 グリムリーパーという強敵を相手にしたアーサー達の消費スタミナは大きく、ガンガンと消耗して行くが、それに対するグリムリーパーはあまり消耗していない。

 いや、魔力や体力が化け物なのだろう。

 

「終わったみたいだな………」


 ダンジョンを見上げながら呟くと、


「逃がすかッ!!」


 創り出した空間の裂け目へと姿を消し、アーサーの攻撃はむなしく空を切る。


「くッ…………クソッ!!」


 アーサーは、悔しさのままに聖剣を地面に突き立てた。




 ――合成魔法は消え去り、その威力が残した爪痕が姿を表す。

 魔法が通過した場所に地面は残っておらず、最上階はボロボロである。


 魔法の直撃を受けた魔物は、割れた地面から十九階に落ちて床に倒れている。

 息はあるものの、体を動かす事はできない程にダメージを受け、魔力も底をついていた。


「勝った……みたいだな」


「ああ、僕達の勝ちだ!」


「やった……やったぁ!!」


 カイトはガッツポーズをとり、シルヴィアは可愛く跳び跳ねる。


 初めてユニークを発動したエイジは、体力を思った以上に消費しており、よろけて倒れそうになったが、フィルディアが優しく支えた。


「お、サンキュー、フィル」


「い、いえ………」


 恥ずかしさからか、エイジの顔から目をそらしたフィルディアは、二人をジッと見つめていたシルヴィアと目があってしまった。


「な、なんでしょうか?」


「私がいない間になにがあったか知らないけど、その立ち位置は譲らない! だから譲ってよ!」


「ええ!? む、無理です! お断りします!」


「ノー! お断りをお断りします!」


 火花を散らしてぶつかり合う二人を他所に、カイトがエイジに肩を貸してやる。


「はは、流石に無茶しすぎたな……」


「そうだね。でも、まだ終わりじゃない」


 カイトがエイジに向けてそう言ったが、そのセリフに対して言葉を返してきたのはエイジではなく、別の誰かであった。


「街の人達を助け出す為、かァ?」


「「!?」」


 その声が聞こえたのは下、十九階のガラムが倒れている辺りからで、エイジとカイトはそこを見下ろす事の可能な場所まで移動した。

 その瞬間、二人はある光景を目にし、それを見せまいと、駆け寄るフィルディアとシルヴィアをその場で止めた。

 二人が見た光景とは、そこに現れたローブ姿の人物、グリムリーパーが、倒れていた魔物の体を死霊の鎌で切り裂き、息の根を止めた光景である。


「何の躊躇もなく殺しやがった………」


「当然だ、使えなくなった駒はゴミだからな。コイツにリサイクル価値はねェよ」


「お前ぇ!!」


 怒りを抑える事が不可能となり、武装魔法を発動させ、即座に合成魔法を使って一つの銃へと姿を変え、それを掴んで下のグリムリーパーへと構える。

 しかし、銃を構えた瞬間、そこにグリムリーパーの姿はなく、一瞬でエイジとの距離を詰めきり、腕を上へと蹴りあげられ、銃を手離した瞬間に回し蹴りを決められた。


「うわッ!」


「エイジ! くッ、火属性――」


「――遅ェよッ!」


「うわああああああああああッ!?」


 魔法を発動させようとしたカイトの肩を、落下してきた銃を手にしたグリムリーパーが撃ち抜き、その衝撃でカイトは倒れた。


「よくもお兄ちゃんを! 『バインド』!」


「『アイシクルスピア』!」


「二人共止めろ!!」


 拘束魔法の鎖と攻撃魔法の氷の槍が同時にグリムリーパーを襲ったが、鎖は力だけで断ち切られ、複数放った氷の槍は全て死霊の鎌で破壊された。


「かかりましたね! 『エターナルバインド」


 砕かれた氷で拘束用の鎖を作り、相手を捕まえようとしたのだが、指を弾く音と同時に展開した魔法の障壁が全てを防ぎ、炎魔法によって溶かされ、再生不能とされた。


「お前らは引っ込んでろッ!」


 魔法を自分へと向けた二人目掛け、炎魔法の球体を放つ。

 見た目はさほど大きくなく、サッカーボールやバスケットボールぐらいだが、感じ取れる魔力はとてつもない。


「させるか! ――があッ!!」


 二人を守るため、限界を超えてユニークを再び発動し、二人の前に移動して攻撃から庇う。


「今のはなかなかいい速さだ。それが、お前の持つユニークの能力か」


 地に膝を着いていたエイジは、再び立ち上がると、その速さで距離を詰めて殴りかかるが、その拳は容易く受け止められ、強く掴まれた。


「だが、まだ未熟だ。故に、戦いはお預けとしよう」


「何を言ってやがる!」


 エイジがそう言うと、右手に持っている銃へとグリムリーパーが魔力を込めて見せる。


「褒美だ。この引き金を引けば、街の住人達のいる空間に出口ができる。だが、お前が戦う事をここで選択した場合は………」


「くッ………分かった」


「懸命な判断だ」


 そう言ってエイジを蹴り飛ばし、倒れたエイジの足元に銃を投げ捨て、移動用であろう空間の裂け目を創り出す。


「次に会うときが楽しみだなァ! 特に、お前とはなエイジ! お前なら、俺を殺せるかもなァ」


 それを言い残し、グリムリーパーは異空間へと姿を消していった。

 そして、それを止める術がない悔しさで、エイジは拳を強く握りしめる。


「エイジさん………」


「大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。それより、シルヴィアはカイトの傷を回復してやってくれ」


「あ、うん」


 素直にカイトの元へと走り行くシルヴィアを見送った後、エイジは上を見上げ、手を伸ばした。


「遠い……遥かに遠い………。だが、その距離も詰めきってやる! だから、力を貸してくれるか? フィル」


「はい!」


 この日エイジは、何れ必ずグリムリーパーを倒すと自分に誓い、新たに異世界ですべき事を見つけた。

 その結末がどんなものであるかは、神ですら予測が不可能な未知数の世界だ。




 ――薄暗い異空間をグリムリーパーは一人歩いており、ある場所にて足を止めた。

 この空間はグリムリーパーの本拠地ともいえる空間で、足を止めた場所にはある街の模型が置いてある。


「次はこの場所で遊ぶとするか」


 そういい、模型にあった城の部分を拳で粉砕した。

 そう、これはミズガルズの王都、キャメロットの模型である。


「もっと俺を楽しませろよ、異世界から来た冒険者、桐山英志!」


 グリムリーパーはフードを脱ぎ、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。


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