第二十六話 支配者の力
「絶対ニ勝ツダト? ソノ状態デヨク言エタナ。デハ、ヤッテミセロ!!」
戦闘モードのガラムの前に、緑色の魔方陣が展開し、先程と同じ魔法の『スフィアゲイル』が放たれた。
それに対し、カイトは『ケルベロスフレイム』を発動させようと魔方陣を展開したが、その魔方陣は魔法を放つ事無く消えてしまう。
「なに!?」
魔法を発動出来なかったカイトは、風属性魔法の攻撃を右側へと飛び退いてかわし、エイジとフィルディアは左へとかわした。
着地と同時に走り出そうとしたエイジだが、体力が限界ギリギリの為、体が思うように言うことを聞かず、先に次の攻撃を放たれたてしまい、反撃のタイミングを失う。
魔力切れを気にする事無く、連発される風属性の攻撃魔法を避けながら走るカイトは、反撃の為に魔法を使おうとするが、やはり発動できない。
「やっぱりか!」
魔法攻撃を走りながら避けるなど、そんな事が出来る程の体力が無いエイジは、フィルディアと共に祭壇の後ろに回り、障壁を盾としている。
「風属性魔法・『カマイタチ』!!」
ガラムはまた違った魔法を発動させ、魔方陣から現れた鋭い刃物の様な風が辺りに放つ。
そのカマイタチは、祭壇を通過したあたりでカーブを見せ、後ろに隠れていた二人を左右から襲う。
「くッ!?」
完全には避けきれず、微かにかすったエイジの左微から血が流れ、それを右手で拭いた後に武装魔法を発動させ、
「雷式魔力バレット」
魔法銃を出し、引き金を引いた。
その弾丸は全て命中したのだが、今のエイジの魔力では大した威力は無く、ガラムは全くの無傷だった。
エイジとは別の方向に飛び退いていたフィルディアも攻撃を仕掛けるべく、魔法を放つ。
「水属性魔法・『アブソリュートウォーター』」
その魔法は発動こそ出来たが、ガラムに届く前に消滅してしまった。
「そんな!?」
驚いているフィルディアの方を向き、魔方陣を展開させる。
フィルディアは再び魔法を発動しようとするが、今度は発動すら出来ない。
「オ前カラ脱落ニシテヤル!」
「させないよ!」
ガラムの展開していた魔方陣に、カイトは自分の発動する魔法の陣を重ね、ガラムの魔法を暴発させた。
流石のガラムもこれには驚き、僅かにうまれた隙を、武装魔法の剣『クリムゾンフランヴェルジュ』を手にしたカイトが攻める。
だが、
「甘イ!!」
「があああああああ!!」
魔物の豪腕で、ガラムは自分に攻撃を仕掛けてきたカイトを殴り飛ばした。
その瞬間、ガラムの背後に回っていたエイジが新に発動した武装魔法の雷刃で斬りかかるが、
「ギコチナイ連携ダ」
「がはッ!?」
攻撃はかわされ、ガラムに蹴り飛ばされた。
「水属性魔法――」
「無駄ダ。風属性魔法・『スフィアゲイル』」
フィルディアは魔法を放とうとしたが、案の定発動せず、ガラムの魔法だけが発動した。
とっさに無属性の防御魔法を発動させたが、ガラムの魔法が何倍も勝っていた。
「きゃああああああああああああ!!」
当然、フィルディアの防御魔法は破られた。
三人が倒れている姿を見たガラムは高笑いを上げ、一番近くに倒れていたエイジを踏みつける。
「があああああああ!? ――くッ! 調子に乗んじゃねぇよ!!」
自分を踏みつけるガラムの右足を両手で押さえたエイジは、自分の魔力を雷に変えて大放電を起こし、自分もろとも攻撃する。
「ナッ!? グッ――!?」
「……ッ! うッ! がああああああああ!!」
この攻撃は予想以上にガラムへとダメージを与え、驚きの表情を見せ、不味いと感じたガラムは、エイジをさらなる力で踏みつけ、痛みで手を離した瞬間に蹴り飛ばした。
倒れるエイジの元にフィルディアとカイトは駆け寄り、エイジの前に立つ。
「二人に聞いてほしい事があるんだ」
カイトは前方に立つガラムを警戒しながら話だし、その表情は険しいものだ。
それにより、重要な話だとさしった二人は黙ってカイトの話を聞く。
「たぶん……いや、百パーセントの確率で、ガラムはシルヴィアのユニーク、『ルーラー』の力を使ってる」
「確かに、それならありえますね。ですが、何故他人のユニークを?」
「分からない……」
フィルディアは『ルーラー』というユニークの能力を知っている様だが、エイジはその能力を知らない。
しかし、ガラムがやっていた事から、能力は魔法の無効化だろうと予想出来ていた。
だが、エイジもフィルディアやカイト同様に、ガラムがシルヴィアのユニークを使っている理由だけは分からないでいる。
「シルヴィアを助けれたなら、ガラムから『ルーラー』の力は失われると思う……。でも、それにはガラムを倒さないとダメだ……!」
「矛盾、ですか……」
剣を握るカイトの右手に力が入る。
武装魔法。現在、それだけが頼みの綱と言えるカイトは、勝つための方法を考えるが、全く思い付かない。
そして、残された時間は二分と無い。
「話シ合イハ終ワッタナ。ドウダ、絶望シタカ?」
その言葉を前に、カイトとフィルディアは何も言い返せず、拳を握りしめる。
少なからず、現在に絶望を抱いている為だ。
だが、エイジは二人とは違って絶望を感じておらず、歩きながらガラムに向かう。
「黒髪……エイジ、ダッタナ。一番ズタボロダト言ウノニ、何故絶望シナイ?」
「勝負を諦めて無いからだ」
「マダ勝ツツモリカ?」
「当然だ!」
余裕を見せるガラムの問いに、足を止めたエイジがそう答え、雷刃を前に構えた。
そして、今のエイジからはグリムリーパー戦同様に、とても強い魔法を放っている。
しかし、エイジの残り体力と魔力では、この状態も一分ともたないだろう。
「カイト、俺に『ブースト』を使ってくれ。自分でもよくは理解出来てないけど、俺のこれは魔法だと思う。なら、カイトのユニークで強化できる筈だ」
「待ってくれ、エイジ!? 許容量を越える力は自滅に繋がる! 危険だ!」
「エイジさん……」
エイジは振り返る事なく、ガラムの方へ走りだし、ガラムの放った『スフィアゲイル』を切り裂き、一気に距離を詰めた。
「何ダ、ソノ力ハ!?」
「俺にも、分っかんねぇよッ!!」
魔法銃を上に投げ、魔力を纏わせた拳でガラムをぶん殴る。
その威力は絶大で、ガラムをダンジョンの奥の方へとぶっ飛ばした。
(今の力!? サンキュー、カイト!)
投げた魔法銃をキャッチしてから走りだしたエイジは、自分の前方に魔方陣を展開させ、それへと両手に持つ武器を投げる。
そして、その魔方陣を自分が通過し際に、合成した刀を右手に掴み、雷属性の斬撃を放つ。
「ソンナ魔法、無効化シテヤル!!」
「無駄だ!」
ガラムはユニークの力をエイジの攻撃へと向けたが、その攻撃を無効化する事は出来ず、エイジの言う通りに無駄であり、
「ガアアアアアアアアァァァッ!!?」
直撃した斬撃が、ガラムの胴体に深い傷を刻み、溢れた血が飛散した。
斜めに刻まれた傷を押さえ、エイジへとガラムが叫ぶ。
「何故ダ、何ヲシタァ!! コレハ、魔法ヲ支配スル最強ノ力ナンダゾ!!」
「その力にも例外が、支配出来ない特異点があったって事だろ? あと、自分の力みたいに語ってんじゃねぇよ!!」
「ゴフッ!?」
怒るエイジが拳でガラムの腹に一撃を入れ、斬撃を放ち吹き飛ばす。
「はぁ、はぁ、はぁ………うッ!?」
ガラムを倒せてはいないが、エイジの肉体はほぼ限界を向かえ、能力の低下が始まる。
(もう限界か……。けど、この場所まではこれた。ダンジョンの最奥まで……。あとは――)
「これで、俺の役目は終わりだ」
最後の力を振り絞り、エイジは刀へと残る魔力を集中させた。
そして、その刀で斬撃をガラム――ではなく、ガラムの後ろにあった扉へと放ち、破壊した。
「ナッ!? 何テ事ヲシヤガッタァァァァ!!」
扉を破壊され、怒り狂ったガラムは、エイジへと膨大な魔力を込めた『スフィアゲイル』を、
「約束、守れなさそうだな………」
全ての力を使い果たし、意識を失って倒れたエイジに向けて放った。
「エイジ!? くッ! 間に合えぇぇ!!!」
「お願い、間に合って!!」
エイジの後を追いかけていた二人は、ガラムが倒れたエイジに魔法を放つ事に気づき、その魔法を相殺すべく魔法を放つが、ガラムの魔法がエイジを巻き込むのが早いだろう。
「終ワリダ、冒険者エイジ!! オ前ハ絶対ニ殺ス!!」
間に合わない。カイトとフィルディアの両方がそう思った瞬間、奇跡が起きた。
「「「!?」」」
その光景には、カイトやフィルディアだけでなく、ガラムでさえも驚きを隠せない。
何故なら、カイトやフィルディアの魔法、および、膨大な魔力を込めて発動されたガラムの魔法全てが、一瞬にして消滅したのだから。
そして、それを行った人物が口を開いた。
「私を救ってくれた恩人を、アンタ何かに殺させない!!」
「シルヴィア!」




