第十六話 愚策の二乗
複数の魔法発動による爆発は、入り口付近の建物どころか、外壁の入り口部分まで破壊していた。
十人の敵、魔導兵士達は、爆発風によって巻き上がっている砂ぼこりから少し離れた位置に立ち、爆発の中心地にいた抹殺対象であるエイジ達に警戒をしている。
そして、その砂ぼこりの中から、その抹殺対象であるエイジの声が聞こえ出す。
「全部で十か…。俺達を攻撃した事、後悔するなよ!」
声が聞こえた瞬間、十人の魔導兵士達が対象を砂ぼこりの外から囲み、声のする方に向けて攻撃の魔方陣を展開させた。
だが――
「遅い!!」
サーチエリアで全員の位置を把握しているエイジは、攻撃モーションに入り、防御出来ない状態の魔導兵士達に、視界の悪い砂ぼこりの中から、魔法銃の最大威力で放ち、その全てを外す事なく命中させた。
その後、砂ぼこりは直ぐに落ち着き、無傷のエイジとフィルディアが姿を表し、回りには何故か砕けた氷が散らばっている。
「助かったよ、フィル。あれを防ぐって、フィルの魔法はスゲーな!」
「褒めるのは魔法だけなんですね」
そう話す二人に、魔導兵士達が個々で向かってくるが、魔導兵士の放つ魔法を、エイジが魔法銃で相殺していく。
エイジが銃口を向けた方向とは逆方向からの魔法攻撃は、フィルディアが水属性魔法で迎え撃つ。
相手は魔法を連発して使うが、その速さも手数もエイジの魔法銃が勝っており、魔法攻撃を的確に撃ち落としつつ、魔法を放つ魔導兵士をも狙って引き金を引く。
フィルディアは、エイジ程正確には離れた相手を狙えず、街への被害を考えて魔法攻撃は極力控え、水属性魔法で相手の魔法攻撃を防ぎ、反撃に転じるエイジのサポートを行う。
魔法銃のおおよその威力を理解しだした相手は、低威力の魔法で手数多く攻撃する方法を辞め、中級魔法でも高い威力である魔法の攻撃へとシフトする。
「しまった!?」
左右の二方向からくる高威力の魔法を魔法銃で相殺できず、相手の魔法がエイジに迫ってきたが、フィルディアの水属性防御魔法がエイジを守った。
「サンキュー、助かった!」
「守りは任せてください!」
魔法の相殺が難しくなってくると、エイジとフィルディアは次第に押されだし、フィルディア頼りの防戦一方へと戦況が変わりだす。
さらに、相手が高威力の魔法を一直線に放つ為、魔法銃の射線が通らず、反撃に転じる事が出来ない。
「…すまん、フィル! 五、いや十秒だけ防御を全て頼む!」
「…頑張ってみます!」
相手の放つ魔法攻撃の対処を十秒の間フィルディアに全て任せ、フィルディアを信じて任せたエイジは目を閉じ、現状打破の方法を考える。
新しい攻撃魔法、この状況でそれに頼るのは現実的ではない。性能が低下した新しい武装魔法に頼るのも現実的ではない。
どちらも愚策だ。
だが、この状況で、エイジはその二つに大きな可能性を感じとり、それ以外の方法が全く思いつかない。
エイジは、まだ魔法銃を通してでしか魔法をまともに使えず、今の魔法銃に頼って新たなる魔法を使ったとして、それは威力不足。
新たなる武装魔法の場合、デメリットのせいで性能が論外なうえ、エイジがパッと思いつく武器がない。
もしも、武装魔法にデメリットがなく、雷刃程の性能を魔法銃が秘めていた場合、今の状況は別のものになっていたかもしれない。
そんな事を考えた瞬間、エイジの中で、可能性を秘めた新たなる魔法が生まれた。
エイジは、現実的ではない愚策の二乗で、この現状に挑む。
「フィル、今から十秒で終わらせる! もう少しだけ守備を頼む」
エイジは左手に雷刃を出し、自信に満ち溢れた表情と声で言い、自分の成功を信じて疑わず、失敗を考えない。その姿が、フィルディアに安心感をあたえ、勝利を確信させる。
「分かりました! では、しっかりとカウントしますからね」
「え!? ちょ、カウントはいらないから!? オーバーしてたらカッコ悪いだろ!」
「一、二…」
「本当にちょっと待って!?」
「三…」
フィルディアがカウントを辞めてくれない為、エイジは覚悟を決め、新たな魔法、誰もがやった事のない魔法を発動し、残りの時間で魔導兵士に挑む。
「武装合成魔法!!」
強い魔力を放つ魔方陣がエイジの前に現れ、両手に持っていた武装魔法で出した武器が魔力に還り、魔方陣に吸い込まれる。
そして、さらに強い魔力を放ち出した魔方陣から、エイジは新たなる武器を創り出す。
それは、合成のメインとした武器を、武装魔法で出せる最大の性能を超えた最高武器。
今回、エイジが選んだメインは魔法銃だ。
その能力は、自由な弾丸の創造。
「行くぜ! 雷式魔力バレット・『ホーミング』」
引き金を引かれた魔法銃は、進化したラピッドファイアー機能により、速射弾数が増え、十発を前よりも速く放つ。
放たれたその弾丸は、相手の魔法や建物をかわし、ロックオンした魔導兵士に向かい、被弾した瞬間、中級中位程の威力で属性の爆発を起こし、十人全員をたった一撃で倒した。
そして、フィルディアの使った無属性魔法の『バインド』をイメージし、進化した魔法銃を通してホーミングをプラスして発動。
「よっしゃ、成功だ!」
「十五秒です」
「………」
「あ、バインドの時間を除いての十五秒です!」
「いやいや、理不尽なスタートじゃなかったら、ピッタリ十秒だって!」
「残念でしたね、エイジさんが魔法を使い出してからでも、十二秒はかかってましたよ」
「そこはウソでも十秒ですって言ってくれよ! 本当にカッコ悪いだろ!」
(その発言の方がカッコ悪いような……)
フィルディアはエイジに気をつかい、それを口にはしなかった。
十人を相手にした戦いは終わったが、エイジとフィルディアは違和感抱く。
それは、街中での戦いだというのに、全く騒ぎになっていない事だ。
二人は、戦い始めたぐらいより、街にいる住人達の声を一度たりとも聞いていないのだ。
「サーチエリアに敵以外の反応が無い」
「とにかく、今は屋敷を目指しましょう」
フィルディアが進みだし、エイジも進みだそうとしたその時、発動させていたサーチエリアで異常を感じる。
「……消えた!?」
サーチエリア内にあった十人の反応が一瞬で消え、別の魔力の反応を一つだけとらえた。
その魔力は一度感じた事がある魔力で、反応はエイジとフィルディアの後ろ十メートルの地点、街の壊れた外壁の方からだ。
エイジが振り向くと、そこには黒色のローブを身に纏った男が立っていた。
「よォ、エイジ。また会ったな!」
「グリムリーパー!?」




