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その他いろいろ

風に舞う桜の花びらのように

作者: 鈴本耕太郎
掲載日:2017/04/17

 美しく咲き誇っていた桜が散ってしまうように、全ての事にはいつか終わりが訪れる。

 永遠なんてない。

 そんな事は初めから分かっていた。

 でも……。

 

 僕らの関係が終わりを迎えるのは、もっとずっと先の事だと思っていた。


 春、僕らの目を楽しませてくれた桜の花が、風に吹かれて舞い落ちる。

 いくつもの花びらが宙を舞い、最後の一瞬まで美しいままで。


 儚いから美しいのか。

 美しいから儚いのか。


 それはまるで僕らの関係のように。

 

 いつものように君を迎えに行き、

 いつものようにデートをして、

 いつものように送り届け、

 いつものようにキスをして、

 いつものようにおやすみと手を振る。


 もう戻らない君との時間。

 何気ない日常が幸せだった。

 何でもない事が楽しかった。


 僕の一生の中で最も輝いていた時間だった。


 それがどうして……。

 どうして君だったのだろうか。

 どうして他の誰かではなかったのだろうか。


 どうして君が、死ななければいけなかったのだろうか。

 どうして僕を、連れて行ってくれなかったのだろうか。


 どうして。

 どうして……。


 風に舞う花びらを見る度に思い出す。

 君と過ごした儚くも美しい季節。


 僕は後何回、この景色を一人で見なければいけないのだろうか。

 僕は後どれだけ、君の事を覚えていられるだろうか。


 僕はいつになったら君の元に行けるのだろうか。


 僕は。

 僕は……。


 桜の木に結び付けた一本のロープ。

 丁度僕の頭が入る程の大きさの輪。

 目の前のロープを掴んで首へとかける。

 後は足元の台を蹴れば、それで終わり。

 君の元へと行けるはずだ。


 今行くよ。


 足に力を入れようとしたその時。

 一陣の風が吹き、一斉に花びらが舞った。

 目の前の景色を埋め尽くす程の桜の乱舞。

 春の終わりを告げる、一度きりの美しい舞。

 それはまるで、最後の一瞬まで気高くあろうとしているかのように。


『私の分まで幸せになって』

 

 君が残した最後の言葉。

 大切な大切な君との思い出。

 僕が叶えなければいけない君の願い。


 今まで霞がかったように、思い出す事が出来なかったその言葉が、今になって僕の胸を締め付けた。


 溢れ出した涙が頬を伝う。

 君がいなくなってから、枯れる程泣いたはずなのに。

 こんなに温かな涙は、初めてだった。

 

 涙の向こうでは、たくさんの桜の花びらが、今もまだ舞い続けている。

 地に落ちるその瞬間まで美しくあろうとしているように。


 美しくも力強いその姿は、あの日の君を思い出させた。

 最後の最後まで必死で生きようとしていた、強く美しい君の姿を。


「わかったよ。僕は生きるから。生きて君の分も幸せになるから……」


 ――だから。


 だから君は、安心して待っててよ。


 いつか君の元に行くその時に、胸を張って会えるように。

 僕は力強く生きてみせる。


 この風に舞う桜の花びらのように。









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