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異世界の大泥棒  作者: 亜魔てらす
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第2の異世界生活

リュウの第2の人生スタート!



ウルフのホラ吹き亭の一室。

ベッドの上には左胸にナイフが刺さった死体。

部屋は静寂に包まれ、唯、血の匂いが充満している。


その沈黙を壊すかのように突如、死体が光出す。

暗いその部屋を一気に明るくし、部屋の物の存在を示す光。

やがて光が収まり、再び暗黒へと向かう部屋に、二つの赤黒い光が発生する。

それは深く濁りきっており、部屋とは比べ物にもならないほど暗かった。


ゆっくりと赤黒い光が動き出す。その根源は先程ベッドに横たえていた死体。

そう、死体が動き出したのだ。


この光景を目にする者がいれば、恐怖のあまり、自らの死を覚悟するものだろう。

それほどまでに、この状況は異常で、不気味の極であった。


「潰す。」

冷酷な死体、いやリュウの声が響き渡る。


リュウの瞳から赤黒い闇が発生し、体を包み込む。

その姿はまるで死神のよう。

今のリュウは非情で残虐な殺人者アサシンである。


「すべてを盗む。」

リュウを纏っていた闇が瞳へ集まり出す。

やがてリュウを纏う闇は消えた。


ふっと短い笑いを浮かべる。

その姿は閻魔大魔王のように恐ろしい。


今ここに、【ストール】へ波紋を及ぼす存在が誕生した。



夜が明け、暖かな日射しが世界を照らす。


リュウは昼食をとりに階段を降りた。

その瞳は、昨晩とは異なり、きれいな赤い瞳である。

リュウは昨晩の殺人者アサシンへの覚醒のあと、己の闇を心の奥へ隠した。

それは、殺人者アサシンとしての本能、周りに自分の本性を探られまいというものからの行動だ。


ゆえに、今のリュウは気の優しそうな青年のようである。

しかし、得た力は本物で一切のスキはなかった。


食堂は多くの冒険者で騒がしい。

「お嬢ちゃん、注文をたのむよー!」

「こっちもたのむ!」

「おい!てめぇ俺の肉食いやがったな‼」

「うるせー!おめえら静かに飯も食えねぇのか!」

あまりにも平和的な様子にリュウは微笑み、空いている席に座った。


数分後、14、5歳くらいの可愛らしい娘が、リュウの元へ注文を取りに来た。

「お待たせしました!ご注文は何になさりますか?」

「じゃあ、一番人気を頼むよ。」

リュウは優しく頼む。

「かしこまりました。」

娘はそう言うと、テクテクと厨房の方へ歩いていった。


料理がくるまでの間、リュウは今後のことについて考えていた。

まず、この宿の事。

昨晩の宿泊代はエリカが払ったので問題ないが、今日以降の宿泊代がない。ましてや朝食のお金もないのである。

昨日のような食い逃げは目立ってしまうのであまり気が進まない。

どうにかして金を稼げないものか...

「お待たせしました。」

その声でリュウが現実へ引き戻される。


目の前には料理を持った娘がいた。

「料理をお持ちしました。」

テーブルに料理が並べられていく。

ご飯に、見たことのない焼き魚、そして野菜がたっぷり入ったスープ。

どれも出来立てのようでリュウの食欲をそそる。


「ごゆっくりどうぞ」

そう言うと娘はリュウの元を離れようとした。

「ちょっと待ってください。」

リュウが娘を止める。

「何でしょうか?」

娘が振り返り、首をかしげた。



「あの、ほんと申し訳ないんですけど、今お金持ってないんです。

なんとか今日中にお金稼いで返しますんで、ツケにしてくれませんか?」

申し訳ない雰囲気全快でリュウが言うと、娘は手を顎にあて、考える仕草を見せた。

「うーん、どうしましょう..

見た目は悪い人には見えないし..」

娘はボソボソと呟いている。


どうやら悪い感じではないようだと感じ取ったリュウはさらに畳み掛ける。

「もし、ツケを了承してくださるのなら、利息は多くつけます。なのでお願いできませんか?」

少し悲しそうな表情で話す。

その表情を受けた人は同情せざるをえないだろう。

それほどまでにリュウが作り出した表情は完璧だった。


案の定、娘は同情したようで

「わかりました。じゃあ今日中にお願いします。」

と折れた。


リュウは心の中でガッツポーズをしながら表では満天の笑みを浮かべ、

「ありがとうございます。必ず約束します。」

と言い、朝ごはんに手を付け始めた。

娘はそんな様子を苦笑いし、リュウの元を離れていった。


朝ごはんも食べ終わり、お金を稼ぎにいかなければとリュウは町へ繰り出した。


パンタ街は、美食の街らしく、数々の店が立ち並び、町中を美味しそうな匂いで包んでいた。

街の人々は、普段から美味しい料理を食べているせいか、ふっくらとしている人が多い。


そうこうして、街を歩いていると屋根に2本の剣のオブジェを飾っている、大きな木造の建物を見つけた。


もしやこれは、かのギルドでは⁉

そう思ったリュウは悪心はどこへいったのかというほどハイテンションで建物の中へ入っていった。


建物は、やはりギルドだったらしい。

その証拠に中は、多くの冒険者で溢れていた。筋骨隆々とした大男やローブをきている魔法使いらしき者など様々だ。


そしてそんな冒険者たちに少し日に焼けた綺麗な女性が話しかけていた。

女性が話し終わると、冒険者たちは首を振りシッシッと女性を追い返した。

女性は少し俯き、また新たな冒険者の元へ話しをしている。


何をしてるんだ?と思ったリュウは女性の元へ歩き出す。

リュウが近づくと、女性はまた冒険者たちに追い返されたようでキョロキョロと次のあたりを探していた。


「何してるんですか?」

リュウが話しかけると、女性はうわっ⁉と驚き、リュウの方を見る。

「あ..私ですか?あの私はこのギルドの職員のアインと言いまして、冒険者の方たちに緊急の依頼を受けてくれないかと頼んでいたんです。」


リュウはギルドなら自分の得た力を試せるし、金も稼げるので一石二鳥だと思い、話を詳しく聞くことにした。


「どんな依頼なんですか?」

「最近平原のゴブリンが大量発生していて、そろそろ被害も出てくることが懸念されていたので、その討伐です。」


ゴブリンか、、

たしか村の若者でも倒せるほどの雑魚だったはずだ。

ということは多分、報酬が悪いから誰も受けたがらないんだろうなと、リュウはそう予想した。


全くもってリュウの予想通りで、ゴブリンごときを狩るなんて恥ずかしい!とされているらしく、誰も受けたがらないと言うことだ。


リュウは別に自分は冒険者初心者だし、まぁ、初戦はゴブリン相手に派手に勝利を納めるかぁと思い、

「あの、僕その依頼受けます。」

と言った。


その言葉を聞いたアインはぱぁと嬉しそうに白い歯をみせ、周りの冒険者たちは、マジかよコイツと言うような視線をリュウに見せた。


リュウはそんな視線を無視して、アインに話しかける。

「僕、冒険者初心者で、依頼を受けたことないんですけど、もう討伐へいってもいいんですか?」


アインは、嬉しそうな笑みを緩め、

「あ、初心者の方でしたか。初めての依頼をお受けの方には少々説明と支給品がありますのでどうぞこちらへ。」

と、リュウの案内をした。


リュウが初心者であったと知った冒険者たちはなるほどといった様子で、自分の依頼やらなにやらをしに動き出した。


アインに案内され、リュウは受付の椅子に座った。

するとアインが、話始めた。

「では、今回は平原のゴブリン討伐の依頼を受けると言うことでよろしいですね。」

「はい。」

リュウはアインの言葉に頷く。


「また、初めてギルドを、ご利用の方には、ステータスプレートを支給しています。」

そう言うと、携帯電話ほどの石のようなものを取り出した。

「こちらのステータスプレートにデータをいれますので、血を一滴垂らして下さい。」

リュウは言われた通りに、手のゆびをガリッとかんで血を垂らす。


すると、ステータスプレートが淡い青い光をだし、リュウのステータスを表示した。



ギルドランクE


石川リュウ Lv5 17歳 人類



体力 2000


腕力 1000


俊敏力 2500


防御力 2000


魔力 2000


特性:神の守り(全能力補正)

存在感知・操作

果てしない闇のダークネスアイ

殺人者アサシンの意思



それを見たアインは震え出す。

「え、レベル5で、全能力4桁⁉

しかも殺人者アサシンの意思って...」


突如更なる恐怖がアインを襲う。

力を振り絞って、リュウを見る。

すると、先程までの綺麗な赤い瞳が、深く濁りきった赤黒い瞳へと変化していた。

その目は一切の存在を否定するようである。

アインは耐えられず、目を反らす。

すると耳元から冷たい声が呟かれる。

「ステータスプレートないの【果てしない闇のダークネスアイ】と【殺人者アサシンの意思】を隠蔽しろ。」

それは反抗を赦さないほど、黒く恐ろしい。


全身に冷や汗を掻きながら急いで隠蔽を始めるアイン。それは本来禁止行為なのだが、今の彼女はリュウの恐ろしさのあまりせざるをえない。体が、断れば殺されるのを予感しているから。


隠蔽を終えると、リュウはゆっくりと口を開く。

「最後に1つ。絶対に俺のことをばらすな。ばらしたら...覚えておけ。」

アインはカクカクと何度も頷く。

一刻も早くこの恐怖から解放されたい思いでいっぱいだった。


その願いが叶い、リュウの溢れるような殺意は消え、瞳は綺麗な赤になっていた。


「ありがとうございます。

それでは行ってきます。」

リュウはにっこりと笑い、席をたった。


突然の変わりように戸惑い、しかし先程の恐怖が残っているのか、微妙な表情のアイン。


「ご、ご武運をお祈りします。」

ギルドの決まり文句が小さくそれは小さく、リュウに呟かれた。




読んでくださりありがとうございました。

本当は、戦闘まで書こうと思ったんですが、思ったより長くなったのでここで切らせていただきます。

次回はゴブリンと格闘です!

でき次第、更新します。

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