天変地異
天変地異
今回から文の間を開けて読みやすくしてみました。
純白のようで漆黒。
漆黒のようで純白。
光明のようで暗黒。
暗黒のようで光明。
有限のようで無限。
無限のようで有限。
そんな矛盾で満たされた場所に1つの魂が浮遊している。
その魂の主は石川リュウ。
そんな様子を見見ていた神の1人が
「憐れな奴だ。」
パチンと指を鳴らす。
すると浮遊していた魂が人の形をとり始め、やがて石川リュウが出来上がる。
神はリュウを見て微笑んだ。
それは唯の神の気まぐれ...
気付くと、リュウは不思議な場所にいた。正反対の二つが1つに結び付いたような感覚に違和感を覚える。
確か自分はナイフを刺されて死んだはずだ。なぜ意識があるんだろう。
左胸に手をあてる。しかし、ナイフも流血の跡もない。リュウの違和感が膨らむ。
突如リュウの前で見覚えのある光が発生する。そこから...
何故か本屋の店主が現れた。
「おう!久しぶりだな。」
「お前、どうしてここにいるだ?」
リュウが驚きの表情を示す。
「お前さん、死ぬの早すぎるだろ。しかも死因がハニートラップにかかるって..」
笑いをこらえながら話す店主をリュウが軽く睨む。
「なぁ、俺って死んだんだよな。どうして意識があるんだ?」
「あぁ、お前さんは確かに死んだよ。魂も成仏されるはずだった。でも何でかお前さんの魂がここに迷いこんでな、それを見た神様が気まぐれで生き返らせたんだ。」
「すまんが、非現実過ぎる内容の連続によって俺の頭がパンクしそうなんだが。」
リュウは数多くの不思議体験で容量がいっぱいになった頭を抑える。
「..しょうがないだろう。そろそろお前さんを【ストール】へ再転生させたいんだが...」
店主はそう言いかけて言葉を止めた。
そして一息吐くと、
「今のお前さんだとまた直ぐに死んじゃうだろうな。何せ自分を殺した女をなんとも思って無いようだし。」
と続けた。
その瞬間、リュウの脳内でエリカに騙された時の事がフラッシュバックする。
俺は奴を駒として利用しようとしていた。
しかし結果はアイツに踊らされ、死んだ。
奴は俺の心を弄びやがったんだ...
やがて老夫婦の神の創造物を盗んだ時のことも甦る。
あの日は最高だった。奴等が今、俺を恨んでいるかと思うと優越感が溢れ出てくる。
しかしそんな思いを再びすることなく俺は殺された。
赦さない。
俺の道を潰しやがって、
俺の喜びを奪いやがって、
虫ケラを見るような目を向けやがって。
俺の命を盗りやがって!
潰してやる!!!
奴のすべてを盗ってやる。
地獄の果てに墜としてやる。
限りない苦痛を与えさせてやる。
誰も俺に逆らわせない!
俺の邪魔をする奴は盗ってやる(殺してやる)!
何もかもすべてを盗ってやる!!!
リュウの体を深く濁った赤黒い闇が包み込む。すべてを盗む。幸せも、神の創造物も...
命も。
リュウを纏う闇が強さをまし、己の体を傷つけ始めた。
ザクザクと刺さるような痛みをリュウに与えるが、苦痛をではなかった。
むしろ、自分の強さが増しているのを感じ、快楽であった。
やがて突き刺す痛みが途絶えると、リュウの瞳は赤黒く輝いていた。
この世のすべてを呑み込みそうな深く暗い輝きに店主も思わず後退る。
「ははは。お前さんの中に眠る闇がそれほどのものだったとは。
だが、これで確実にお前さんは強くなった。【ストール】では余裕で生きられるだろうな。
なにしろ今のお前さんは逆らう者は、例え人の命でさえ躊躇なく奪うことができる、【殺人者】となったからな。」
そう店主は告げ、リュウの前に手を差し出した。リュウの体がかつてと同じように光に包まれる。
「これだけは覚えておけ。お前さんはもう唯の泥棒野郎ではない、必ず【ストール】に波紋を及ぼす存在となったということを。」
店主のその言葉を最後にリュウは【ストール】へと転生された。
誰もいなくなった。その場所で店主はポツリと呟く。
「闇の力は確かに強大だ。お前さんの力となるだろう。しかしそれに頼り過ぎるとお前には破滅が待っている。お前さんの闇に避けることなく、分かち合うというものがいたならば、そいつを大切にするんだ。」
その言葉は誰にも聞かれることなく、沈黙へと吸い込まれた。
読んでくださりありがとうございました。
次回から異世界生活再スタートです。
出来上がり次第、更新します。