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君のポケットに届いた手紙

夏の雨はキラキラと

作者: 小夜

 こんにちは、あたしの名前はミキ。高村神酒です。

 籠目小学校で小学6年生やってます。ヨロシクね。

 今放課後でちょっと友だち待っているトコなんだけど、友だち来るまで、あたしのお話に付き合ってくれる?

 ちょっとした思い出話なんだけどさ。


 あたしがまだ4年生の時、うちのクラスに一人の女の子が転校してきたんだ。

 名前は瀬那輝蘭セナ キララ。ちょっと変わった名前でしょ?

 長い黒髪の頭が良さそうな子で、先生に聞いてみたら、その子のお母さんも学校の先生をやってるんだってさ。

 あたし彼女の顔見た時、すぐにピンって思ったんだ。

 あの子の友だちになりたい!絶対に気が合うはず!必ず親友になれる!!ってね。


 でも、キララはちょっと普通の子と違っていた。

 あたしが話しかけると、キララはまるで聞こえないみたいに あたしの言葉を無視したんだ。

 何度も話しかけたんだよ。

「キララさん。一緒に体育館行かない?」

「キララさん頭いいんだね!ここ教えてくれない?」

 みたいな感じでさ。

 でも、キララから言葉は返ってこない。たまに返ってきても、

「すみません。私のことはほおっておいてください・・・。」

 そんな感じの言葉ばかり・・・・。

 あたしだけじゃない。誰が話しかけても、結果は同じだった。

 なんかちょっと変だと思ったあたしは、思い切って担任の先生に聞いてみたの。キララと仲良くなりたいけど、どうすればいいですか?って。

 そしたらね。先生、意外なことをあたしに教えてくれたんだ。


 キララ、前にいた学校をずっと休んでいたんだってさ。不登校ってやつ?

 詳しいところまでは教えてくれなかったんだけど、どうしてもクラスになじめなくて、それで学校に行ってなかったんだってさ。

 まぁ彼女、ずいぶん気が強そうな感じはするけどね。


 結局あたしはキララと仲良くなることができないまま、それから数ヶ月が過ぎたんだ。


 そして、そんなある日のことだったの。

 あの出来事があったのは・・・・。


 その日の学校帰り。あたしは変なものを見つけたんだ。

 空き地の隅に、まるで隠れるように作られた木でできた小さなお家。

 中には小さな子ネコが2匹。

 多分誰かが飼いたくても飼えなくて、ここでこっそり育てている。そんな感じだったんだ。

 中にはエサが少し置いてあって、お家の外には「誰か拾ってあげてください。」って張り紙がしてあった。


 誰だろ?こんなことしてるの・・・・。

 あたしはこっそり空き地の陰に隠れて、その飼い主がエサを持ってくるのを待っていたの。

 飼い主はすぐにわかった。キララだった。

 キララは普段見せてくれないようなとびっきりの笑顔で、2匹の子ネコたちの面倒を見てたんだ。

 2匹の子ネコたちと、まるで姉妹みたいにたわむれるキララ。

 意外だよね。彼女がこんな笑顔見せてくれるのってさ。


 でも、それからさらに数日後・・・・。

 もうすぐ夏休みを迎えようとしていた、ある雨の日。

 夏が間近にもかかわらず、なぜかその日の雨は少し冷たくて、見ているだけでなんとなく切なくなるような放課後だった。

 まるで音楽を奏でるように流れる雨の音。重なるように聞こえるあたしのため息。

 あたしがカサをさして空き地の側を通りかかると、そこにキララがいたんだ。


 キラキラと優しく輝くような雨の中、カサもささないで、ずぶ濡れになって、じっとネコの家を見つめながら、黙って空き地の隅に立っていたの。


「なにしてるの?キララさん・・・・・」

 原因はすぐにわかった。ネコの家に小さな手紙が落ちていたの。

『大事に育てます。』って走り書きがしてあって、2匹の子ネコはいなくなっていたんだよ。


 びしょ濡れのキララ。彼女の頬を濡らしていたのは雨?涙?

 もしあたしが「それ、涙?」って聞いたら、彼女は多分「雨です!」って応えるはず。

 でも、キララは多分泣いていたんだ。あたしに見せてくれた、彼女の初めての涙。

 どんなに強がっていても、やっぱりキララは寂しかったんだ。

 やがて強くなる雨脚。もう子ネコたちには届かなくなったキララの声。

 ふいに彼女は、あたしにこんなことを言ったんだ。

「・・・・飼い主が見つかりましたね。これで安心です・・・・。」


 ・・・・・・・・・・・・・バカ。キララのバカ!

 そんなこと言ったら、あたしますますキララのこと、好きになっちゃうじゃない!!

 あたし、そんなキララを見て、抱きしめたくて抱きしめたくてガマンができなかった。

 だからあたしは・・・・・。




 その時、誰かが教室にいたあたしの肩をポンってたたいた。

 あたしが振り向くと、そこには・・・・・。

「ミキさん!こんなトコロにいたんですか!?」


 そこに立っていたのは、ちょっと怒ったような顔をした・・・キララ!

「あ、キララ!遅かったね。ずっと待ってたんだから」

「待たされたのはこっちです!待ち合わせ場所は教室じゃありませんよ!」

「え?違うの?」

「校門前って言ったでしょ!リコさんたちも、さっきからずっと待ってるんですよ!」

「ええー!?」


 ゴメン!じゃ、あたしもう行くね。

 あ、紹介しておくね。

 彼女が、あたしの親友のキララだよ!

 それじゃ、また明日ね。バイバイ♪

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