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第七話「霊核剥離」

 霊核剥離についての本を読み進んでいくうちにいろいろなことが分かった。

 まず霊核剥離とは、人が持っている実態を持たない第二の心臓、『霊心』と呼ばれる核があるらしい。

 その霊力の源である核は基本、殼のようなものに覆われているが、霊核剥離はその殼が剥がれ、霊心がむき出しの状態になっている。

 霊心を覆っている殼は、霊心から漏れる力―――霊力が溢れ出るのを防いでいる。

 霊核剥離はこの殼が剥がれているせいで、霊力が止めどなく溢れている。これが、普通の人間と霊核剥離の違いである。

 だが、この違いはかなり大きい。

 殼に覆われている霊心から漏れる霊力と、霊核剥離から漏れる霊力は、量、質、そして濃さが桁違いなのだ。


 そして、この霊核剥離は世界を変える力を待っている。

 正確には霊核剥離の霊心が世界を変える力を持っているのだ。


 霊力は基本的に人それぞれ異なっていて全く同じということはない。たとえ双子で霊力が同じように感じても、それはわからないだけで、よく調べると違っているのだ。

 だが、全ての人に共通して同じ力がある。

 それは、霊心から直接漏れ出る霊力だ。

 霊心から直接漏れ出る霊力―――黎明力というらしく、意味は始まりの力だそうだ―――は生きるもの全て同じなのだ。

 しかし、人や動物それぞれの霊力が違うのは、霊心を覆っている殻がその人や動物に適した霊力に変換しているからなのだ。その変換する過程において、黎明力は量、質、濃さともに圧倒的に低下する。そうしないと、人や動物の体が霊力に耐えられないのだ。

 霊核剥離は、その黎明力を変換する殼が剥がれてしまっているため、その身は常に高濃度の霊力を纏い、放出している。

 だが、その黎明力を感じることが出来る人はいない・・・否、体は感じているが脳が感じることを拒否しているのだ。

 脳は強すぎる霊力―――すなわち、黎明力を感じると危険を察知し、黎明力を感じないように働くのだ。

 これは、自分の体が黎明力に侵されるのを防ぐためだ。


 黎明力というのはいわば加工されていない原石のような霊力。

 その力は人体に悪影響を及ぼす。

 確認されている影響は肉体の老朽化を早め、他者の霊力に可変干渉を及ぼすなど、他にもさまざま影響を与える。

 可変干渉とは、他者の霊力に直接干渉し、その者の霊力を強制的に書き換えてしまうのだ。これは霊核剥離でなくても出来ることだが、研究実験でしかまだ実用が確認されていない最高難易度の対抗霊術である。

 だが幸いにして、生き物の脳は霊核剥離の黎明力を感じないように働くのでその影響を受けないようにしているのだ。

 脳が感じなければ、人体には何の影響も及ばない。


 そして、この霊核剥離は人間と霊が血眼になって探し、最も欲している存在なのだ。


 霊といっても、霊核剥離を欲している霊は、『悪霊』、『怨霊』、そして『妖怪』だ。これ以外にも霊核剥離を狙っている霊はいるが、ほんの少数だけだ。

 なぜそこまで霊核剥離を欲しがっているかというと、それは人間と霊の戦いに関係する。

 人間と霊―――正確にはエクソシストと霊の戦い。

 エクソシストとは、霊力が高い人で資格を持つ人のことをいい、霊を祓い、悪霊、怨霊、そして妖怪等と戦う人のことをいう。


 エクソシストが霊核剥離を探す理由は、霊核剥離から漏れ出る黎明力を使ってより強力なタクティカルアーツを製造し、超広範囲に渡って強力な結界を張って霊の侵入を防ぐため。

 霊が欲する理由は、悪霊や怨霊、妖怪が本当の妖怪、つまり魑魅魍魎の主となるためだ。

 本当の妖怪というのは、一般の妖怪は人の悪しき心を吸収して妖怪と化すが、霊核剥離の黎明力を使った場合とは天と地ほどの差があるのだ。

 このような理由から両者は長い間、霊核剥離を探し続けている。

 だが、今までに確認されてきた霊核剥離はここ八百年間でわずか二人だけ。

 仮説では、昔有名だった祓魔師や霊術師で、特に霊力が高く、神話に名を挙げるほどの者は霊核剥離であったのではないかといわれている。

 ちなみに、霊核剥離かどうかは霊にしか見分けることが出来ない。それも、中位以上の霊だ。

 人間には決して見分けることが出来ない。

 ある特殊な方法を使えば見分けることは出来なくもないが、物凄い人と霊力が必要になるのでそうなんでも使えるものではない。

 だが、霊核剥離が子供の内は霊であっても見分けることは出来ない。これについては、いまだに分かっていないようだったが、霊の中には子供うちでも霊核剥離かどうかを見分けることが出来る霊もいるとのことだ。

 ただし、そういう霊も霊核剥離と同じ確率だそうだ。

 さらに霊核剥離にはとんでもない能力、というか効果があった。


 それは、霊核剥離から漏れ出る黎明力を霊が吸収し続けると、肉体を持たないはずの霊が肉体をもち、再びこの世に『新たな命』を持って生まれることが出来るということだ。


 なぜそうなるのか、これも解明できていない事だそうだが、予想では、本来魂と肉体は両方あって意味をなすものである。

 そのため、魂だけの存在である霊が純粋である黎明力を浴び続けることで、魂が肉体を再構成するのだと考えられているらしい。

 こうした、いろいろと規格外の能力や効果を持つものを、『霊核剥離』と呼ぶのだ。


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