真昼の流れ星
魔法少女のスピカちゃんが、よくわからない女の子のアルコルちゃんと出会うお話です。
アルコルちゃんはあくまでスピカちゃん個人でなく人間に対しての感情が大きいのですが、ちょっと百合っぽいので苦手な方はご自衛ください。
彼女は1人青空に浮かんでいた。仰向けになって、次はどの人間と邂逅しようかなどと考えながら下界を見下ろしていた。妙に楽しそうな彼女の手には、マグネシウムなどでできたステッキが握られていた。太陽の光を反射して輝くそれは、さながら真昼の星のようであった。
彼女はふいに微笑んだ。勢いをつけて空を泳ぎ出した。透き通った風が彼女の全身を受け流していた。破壊されたビルの上空まできた彼女はゆっくりと力を抜いた。そしてそのまま重力に従って落下していった。
数秒後、彼女は地上の少女の手に抱き抱えられていた。
「危なかったね。」
地上の少女はそう言って彼女に笑いかける。
「危なかったのね。」
彼女は返す。彼女は助けられるつもりなどなかった。ステッキを使えば死ぬことはないから。それよりも、目の前の少女が傷ついているとはいえ元気に立っていることの方がずっと不思議だった。わざわざ破壊された場所を選んだというのに。
「ねえ、どうしてあなた生きてるの?」
「え?これぐらいどうってことないよ。魔法少女だもん。」
魔法少女。少女は確かにそう言った。なるほど、言われてみればいかにも魔法少女アニメの主人公のような、ピンクのふわふわした服を着ている。しかしそれなら、私は降りる場所を間違えたわけだ。すぐに撤退しようーー彼女はそう思って言う。
「助けてくれてありがとう。でも私は好きで飛び降りたから、あなたの世話になる必要はないわ。」
「好きで飛び降りちゃ駄目だよ。どうして?何かあったの?」
魔法少女は腕の力を強めて言う。どうやら、自殺未遂と勘違いされたらしい。よほど感受性が豊かなのだろうか、少女の目には涙が浮かんでいた。
「そうじゃなくて、遊んでたの。ほらこれ。」
誤解を解くため彼女はステッキを振る。その途端彼女は少女の腕を離れ、空中をふわふわと浮いていた。驚いて固まる少女を横目にステッキをもう一振り。今度はたちまち少女の傷が癒えた。
「君も魔法少女だったの⁉︎」
「そういうことにしておきましょうか。じゃあね。」
言うや否や彼女はさらにステッキを振って上昇する。魔法少女だなんてとんでもない。
彼女は魔法少女とは対極の、死にそうな人間を探していた。瀕死の人間を助けて仲良くなるのが彼女の暇つぶしであり楽しみだったのだ。
「ちょっと待ってよ!」
見下ろすとさっきの魔法少女が呼んでいた。まあ暇だし話くらい聞こうかしらと思って彼女は再び地上に降り立つ。
「なあに?」
「お願い、ビルの修復を手伝って!このままだと怪我人が出ちゃう。君の魔法ならすぐに治せる!」
少女は必死に訴えかけていた。それを見て彼女はフッと笑う。懸命に生きている人間のまっすぐな叫びが彼女は嫌いではなかった。
「わかったわ。」
ステッキを一振り。少し間が空いたのち、バラバラだった残骸が四角いビルの形に戻っていく。
「ありがとう!君、魔法を使いこなすのが上手くてすごい。羨ましい!」
彼女は少女のキラキラした目が眩しいと思った。純粋で表裏のない愚直な子。決めた。今回はこの子とお友達になろう。
「そうだ!私、スピカっていいます。君は?」
少女の問いに彼女は優しく笑って答える。
「アルコル。」
スピカが何かを言おうとしたのを遮ってアルコルは続ける。
「スピカ。わたしこれからしばらくあなたについて行くわ。」
「どういうこと?」
「暇だから。あなたといると面白そうだから。」
スピカは最初ただ困惑しているように見えた。どこかホッとしたような表情になったかと思えば、今度は顔が曇った。なんて分かりやすいんだろうとアルコルは思った。
「良いけど……。死なないでね。」
「このステッキがある限りわたしは死なない。」
「無くさない?壊さない?」
「そんなことはしないわ。」
事実アルコルはそんなこと気にしたこともなかった。そればかりか魔法を使いこなすという概念を考えたことすらなかった。だからスピカの心配事がとても小さく思えて、スピカがとても愛おしいと思った。
「大丈夫だから。お願い。」
「わかった。よろしくね。」
かくしてスピカとアルコルは行動を共にするようになった。アルコルが何を思ってその提案をしたのか、スピカはまだ知らない。そしてまたアルコルも知らなかった。スピカが自分の生き方を大きく変える存在となることを。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!
実はアルコルちゃんって結局何者なのか明言してないんですよね。どんな存在なんでしょうね。




