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新解釈桃太郎

掲載日:2026/06/09

1話完結の短編小説です。桃太郎を新しい解釈で作成してみました。

 むかしむかし、あるところに、桃のようにまるまる太ったおじいさんと、おばあさんがおりました。


 おじいさんは、今日も縁側でもしゃもしゃ。


「おばあさんや、飯はまだかね?」


 皮の袋からきび団子を取り出しては、ぱくり、もしゃもしゃ。


「あんた今食べてるでしょ!」


 おばあさんは呆れ顔です。


「それで三袋目だよ!」


「これはおやつじゃ。飯ではない」


 おじいさんは真顔で言いました。


「だから飯はまだかね?」


「もう知らないよ!」


 おばあさんはぷいっと背を向けると、籠を背負って山へ芝刈りに向かいました。


「おばあさんやー、飯はーまだかねー」


 遠ざかっていく背中へ、おじいさんの声だけがいつまでも飛んでいきます。


 やがて静かになった家で、

おじいさんは空っぽになった袋を覗き込みました。


「ありゃ」


 気がつけばピンクのシャツには、きび団子の粉だらけ。


「これではまた怒られてしまうのう」


 おじいさんは服についた粉を払います。


 ぱっぱっ。


 ついでに指についた粉も舐めます。


 ぺろり。


「……うまいのう」


 そんなことをしながら、おじいさんは重たい腰を上げました。


「よっこらしょ」


 服の汚れを落とすため、洗濯をしようと思ったのです。


 おじいさんは、のっし、のっしと川へ向かいます。


 途中で三回休み、二回おやつを食べ、

 ようやく川へ辿り着きました。


「さて洗うか……」


 そこでおじいさんは気がつきます。


「ありゃー、洗濯板を忘れてもうた」


 しばらく固まり、ぺちんと自分の頭を叩きました。


 そして家に帰ろうと振り返った瞬間。


 つるっ。


「おわっ」


 どっぼーーーん!!


 おじいさんは大きな音を立てて、川へ落ちてしまいました。


「あーーれーー!!」


 おじいさんも大慌て。


 ですが、おじいさんの体は桃のようにまんまる。


 ぷかぁ……。


 なんと、沈まず浮かびました。


「おお! 浮いた」


 ぷかぷか。


「これはこれで気持ちいいのう」


 どんぶらこー。


 どんぶらこー。


 流されながら、おじいさんは上機嫌で歌い始めました。


「どんぶらこー♪」


 ぐぅぅぅ。


「どんぶらこー♪」


 ぐぅぅぅ。


「腹減ったのう」


 その頃、下流では。


 下流に住む、お婆さんが川で洗濯をしていました。


 すると遠くから、


「どんぶらこー♪」


 妙に陽気な歌声が聞こえてきます。


「……なんだい?」


 目を凝らしたお婆さんは、びっくり。


「ありゃ!大きな桃!」


 桃は歌いながら流れてきます。


「どんぶらこー♪」


「……歌う桃?」


 近づくにつれ、お婆さんは気づきました。


「って、桃太郎さんじゃないか!」


 おじいさんは桃みたいに丸いので、

 近所では“桃太郎”と呼ばれていたのです。


「どしたのあんた!」


 お婆さんは慌てて物干し竿を伸ばし、桃太郎を引っ張り上げました。


「助かったわい〜」


 その時。


「おーい!」


 山から帰ってきたお爺さんが手を振っています。


 背中の籠には、立派な桃。


「おや?桃太郎さんじゃないか」


「洗濯してたら流れてきたの。本物の桃かと思ったよ!」


 お婆さんは大笑い。


 その夜。


 三人は桃を食べながら、わいわい楽しく盛り上がりました。


 気がつけば辺りはすっかり暗くなっていました。


 桃太郎おじいさんは、そろそろ帰ることに。


 沢山の桃ときび団子をお土産にもらって、

 その帰り道。


 突然、野犬、野猿、野鳥が飛び出して来ました。


「うおおお!?」


 襲われたおじいさんは、きび団子をぽいぽい投げつけます。


 野犬たちは夢中でむしゃむしゃ。


 その隙に、おじいさんは全力疾走。


 たぽたぽたぽたぽ。


 桃を食べながら、やっと家へ辿り着いた頃には、

 空には月が浮かんでいました。


「まずいのう……」


 家の灯りは消えています。


 おそるおそる戸を開けると――


 ゴゴゴゴゴ……


「どこ行ってたのよ」


 そこには。


 角を生やし、目を真っ赤に燃やした、鬼のようなおばあさんが立っていました。


「ひええええ!!」


 鬼との対峙です。


 おじいさんは平謝り。


 何度も頭を下げました。


 するとおばあさんは、


「心配したんだからねぇ……!」


 わあっと泣き崩れてしまいました。


 おじいさんは困った顔で、おばあさんの背中を優しく撫でます。


「すまんかったのう」


 しばらくして。


 ようやく落ち着いたおばあさんに、おじいさんは言いました。


「……ところで、おばあさんや」


「なんだい」


「飯はまだかね?」


 おばあさんの額に、ぶちりと青筋が浮かびました。


 めでたしめでたし。

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

初めて書いたものなので、色々拙い点はあるかと思いますが、楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。

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