新解釈桃太郎
1話完結の短編小説です。桃太郎を新しい解釈で作成してみました。
むかしむかし、あるところに、桃のようにまるまる太ったおじいさんと、おばあさんがおりました。
おじいさんは、今日も縁側でもしゃもしゃ。
「おばあさんや、飯はまだかね?」
皮の袋からきび団子を取り出しては、ぱくり、もしゃもしゃ。
「あんた今食べてるでしょ!」
おばあさんは呆れ顔です。
「それで三袋目だよ!」
「これはおやつじゃ。飯ではない」
おじいさんは真顔で言いました。
「だから飯はまだかね?」
「もう知らないよ!」
おばあさんはぷいっと背を向けると、籠を背負って山へ芝刈りに向かいました。
「おばあさんやー、飯はーまだかねー」
遠ざかっていく背中へ、おじいさんの声だけがいつまでも飛んでいきます。
やがて静かになった家で、
おじいさんは空っぽになった袋を覗き込みました。
「ありゃ」
気がつけばピンクのシャツには、きび団子の粉だらけ。
「これではまた怒られてしまうのう」
おじいさんは服についた粉を払います。
ぱっぱっ。
ついでに指についた粉も舐めます。
ぺろり。
「……うまいのう」
そんなことをしながら、おじいさんは重たい腰を上げました。
「よっこらしょ」
服の汚れを落とすため、洗濯をしようと思ったのです。
おじいさんは、のっし、のっしと川へ向かいます。
途中で三回休み、二回おやつを食べ、
ようやく川へ辿り着きました。
「さて洗うか……」
そこでおじいさんは気がつきます。
「ありゃー、洗濯板を忘れてもうた」
しばらく固まり、ぺちんと自分の頭を叩きました。
そして家に帰ろうと振り返った瞬間。
つるっ。
「おわっ」
どっぼーーーん!!
おじいさんは大きな音を立てて、川へ落ちてしまいました。
「あーーれーー!!」
おじいさんも大慌て。
ですが、おじいさんの体は桃のようにまんまる。
ぷかぁ……。
なんと、沈まず浮かびました。
「おお! 浮いた」
ぷかぷか。
「これはこれで気持ちいいのう」
どんぶらこー。
どんぶらこー。
流されながら、おじいさんは上機嫌で歌い始めました。
「どんぶらこー♪」
ぐぅぅぅ。
「どんぶらこー♪」
ぐぅぅぅ。
「腹減ったのう」
その頃、下流では。
下流に住む、お婆さんが川で洗濯をしていました。
すると遠くから、
「どんぶらこー♪」
妙に陽気な歌声が聞こえてきます。
「……なんだい?」
目を凝らしたお婆さんは、びっくり。
「ありゃ!大きな桃!」
桃は歌いながら流れてきます。
「どんぶらこー♪」
「……歌う桃?」
近づくにつれ、お婆さんは気づきました。
「って、桃太郎さんじゃないか!」
おじいさんは桃みたいに丸いので、
近所では“桃太郎”と呼ばれていたのです。
「どしたのあんた!」
お婆さんは慌てて物干し竿を伸ばし、桃太郎を引っ張り上げました。
「助かったわい〜」
その時。
「おーい!」
山から帰ってきたお爺さんが手を振っています。
背中の籠には、立派な桃。
「おや?桃太郎さんじゃないか」
「洗濯してたら流れてきたの。本物の桃かと思ったよ!」
お婆さんは大笑い。
その夜。
三人は桃を食べながら、わいわい楽しく盛り上がりました。
気がつけば辺りはすっかり暗くなっていました。
桃太郎おじいさんは、そろそろ帰ることに。
沢山の桃ときび団子をお土産にもらって、
その帰り道。
突然、野犬、野猿、野鳥が飛び出して来ました。
「うおおお!?」
襲われたおじいさんは、きび団子をぽいぽい投げつけます。
野犬たちは夢中でむしゃむしゃ。
その隙に、おじいさんは全力疾走。
たぽたぽたぽたぽ。
桃を食べながら、やっと家へ辿り着いた頃には、
空には月が浮かんでいました。
「まずいのう……」
家の灯りは消えています。
おそるおそる戸を開けると――
ゴゴゴゴゴ……
「どこ行ってたのよ」
そこには。
角を生やし、目を真っ赤に燃やした、鬼のようなおばあさんが立っていました。
「ひええええ!!」
鬼との対峙です。
おじいさんは平謝り。
何度も頭を下げました。
するとおばあさんは、
「心配したんだからねぇ……!」
わあっと泣き崩れてしまいました。
おじいさんは困った顔で、おばあさんの背中を優しく撫でます。
「すまんかったのう」
しばらくして。
ようやく落ち着いたおばあさんに、おじいさんは言いました。
「……ところで、おばあさんや」
「なんだい」
「飯はまだかね?」
おばあさんの額に、ぶちりと青筋が浮かびました。
めでたしめでたし。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
初めて書いたものなので、色々拙い点はあるかと思いますが、楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。




