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そのきっかけ、逃すな。

作者: つばさ
掲載日:2025/11/12


 24時00分、玄関を開ける。駅前、短いスカート、寒い中待つ私。そうして見つけてくれる人と、一夜を過ごす。これの繰り返し。

 毎日、毎日、もうやめられない。自暴自棄になってるのかもしれないし、やけになってるのかもしれない。私を見つけてくれる人がいることに快楽を感じてるのかもしれないし、自傷行為に似た動機かもしれない。何かはわからないけれども、私は何かに突き動かされて今日も玄関を開ける。玄関を開ける時のこの期待感、高揚感。やめられない。


 夜のネオンの光が私を安心させる。私だけじゃないんだって、みんな夜を待ってるんだって、感じられる。

 やめなきゃ、とは何度も考えている。反対に、気持ちいいし、もうやめなくてもいいんじゃ、とも思う。お金も貰えるし、win-winの関係。それなのに、ずっと根底にある、「やめなきゃ」はどうしてなんだろう。漠然としたこのままではいけない、という微かな将来への不安があるのかも。いつか危険に巻き込まれるかもって心の底では思ってる?

 

 そんなこんなでいつもの駅前に到着。寒い、今日は特に寒い気がする。全然見つけてくれない時間が嫌いだ。どんどん、自覚していくから。夜は、ふわふわとした思考で何も考えたくないのに。

 時々、リストカットに似た行為だなあ、と思ったりもする。「やめなきゃ」の中の「気持ちいい」が最高に気持ちいい。タバコみたいに、薬物みたいに、これを、多分依存症って言うんだろう。

 そうだ。私は性に依存してるんだ。


 全然、見つけてくれない。気づくと手が震えている。はあ、なんでこんな寒い中誰を待ってるんだろう。この行為に意味なんてない。絶対にやめるべきなのに。どうやったらやめれる?

 そうだ、半年前は、本気でやめようとちょっと考えた。財布を盗まれた時。この行為自体の危険性を身をもって痛感した。危険なんだって。もっと危険がくるかもって本当に怖くなった。でも、やめられなかった。私は、本当に怖い思いをしないとやめられないのかも。それか、王子様みたいな人が現れるとか。はは。王子様だって。


 ああ、寒い、寒い。もう足の感覚がない。クソが。だれでもいいから声かけろよ。

 と、そう思っていたら、ハゲ散らかした中年太りのおっさんが見つけてくれた。ハズレだけど、当たりでもある。私ってこんなレベルの人間だよねって、自覚ができるから。おっさんにも、私にも失礼だな。でも、こいつも、同じレベルだ。

 今日はこいつと、夜を共に過ごすらしい。



 一夜明けてる。いつの間にか眠っていたらしい。疲れてたのかな。時計をみると12時を指している。

 まって、ホテルのチェックアウトの時間余裕ですぎてる。終わった。最悪だ。急いで身支度を済ませる。


 やっぱり延滞料金を取られた。あーあ、もうやめよっかな。アホらしすぎるこんなこと。でも続けるんだろうな……。


 ……続けるの? 本当に? 私はその場で立ち止まる。

 財布盗まれたのは半年前。今日ダラダラと同じ行為を続けたら、また半年、私はやめられないかも。半年、一年、……もしかして、ずっと? 

 そうだ、王子様なんて来ない。きっかけが欲しいって、そのきっかけってもしかして今じゃないか? これが小さい出来事とか関係ない。もうこの半年に一度の今、今しか変われないかも。今、今、今。この小さなきっかけを逃したら、また半年後かも。


 今、かも。


 精神科がふと目に入る。そのまま真っ直ぐ進む。予約って必要? でも今逃したらまた元通り。そのまま進む。立ち止まらない。扉が開く。進む、進み続ける。受付まで、一直線に。

「あの、予約してないんですけど」


 あ、変わった。きっかけ、掴んだ、かも。やめられる、かも。

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