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魔道具と娯楽品の作成に勤しむ転生令嬢は、囲われていることに気がつかない  作者: 成瀬川 透


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09_距離感

セバスチャンさんが「あとは若いお二人で」と言って、サラさんと共に執務室から出て行く。もちろん、未婚の男女を密室に二人きりに出来ないから執務室の扉は開け放たれたままだ。


私はエリックに向かって「エリックのことや、この屋敷のことを色々教えて欲しい」と頭を下げた。


エリックは面倒臭がらずに色々と教えてくれた。

エリックは現在11歳だということ。兄弟はおらず独りっ子だということ。またここは、ルーンベル国のリリーム地方で、エリックの別荘だということ。

「マリは私より少し下くらいだろうか。うーん……マリは9歳ということにしよう」と、私の年齢が決まったり。


セバスチャンさんは執事長で、息子は領地の本宅、孫はタウンハウスで働いているという。

サラさんは21歳。人情に篤く涙脆いらしい。

この屋敷には他に料理長のバレットさん、キッチンメイドのリザさん、ランドリーメイドのサナさん、庭師のトム爺さんが働いているという。「後で皆を紹介するよ」と言われた。


「私がこの別荘でお世話になるの、エリックのご家族は反対しない?」

友達になったとはいえ、もとは身元も知れない孤児。受け入れてくれるとは思ってはいないけれど……。


「きっと大丈夫だろう。あんな便利な道具を作れるし、何より私の友達だしな。そのうち本宅に戻るから、その時に私の家族を紹介しよう」

エリックのご両親に反対されたらその時は速やかにエリックから離れよう。それまでに便利アイテムや遊び道具を作れる分まで目一杯に作っておいて、それをお世話になったお礼として置いていこうと心に決めた。


「エリックは魔法を使える?」

便利アイテムを作っても、魔石に魔力を注げなければ意味がない。そのためエリックに確認をすると、「一応は使えるが勉強中だ」と返事が返ってきた。一応だろうが、魔法が使えればそれでいい。

「それなら魔石に魔力を注げるね。便利アイテムたくさん作るから待っててね」


「無理はしなくていいからな」と優しく微笑んだエリックは、私の頭を撫でてきた。やはり距離感がバグっていると再認識をしている最中、扉をノックする音がした。音がした方に顔を向けると、お茶やお菓子を乗せたワゴンを押すサラさんがいた。


エリックが「お茶にしよう」と言うと、サラさんが準備を始める。ローテーブルの上にはクッキーやケーキといったお菓子が並ぶ。

久しぶりの甘味に感動していると、エリックが「私はこのクッキーがオススメだ」と、クッキーを一枚手に取ったと思ったら、私の口元に運んできた。やはり距離感が以下略……。


無言でエリックを見つめる。

「ん?食べないのか?」

次にサラさん目線を向ける。淡々とお茶を淹れる準備をしている。これは"あーん"をするまで終わらないと察した私は、エリックの手にあるクッキーに齧りついた。


「!おいしい」


「そうだろう。次はこちらだ」と、ケーキをスプーンですくい、そのスプーンを私の口元に運んできた。


「エリック、私、自分で食べれるよ?」

1度目や2度目の人生を合わせると、結構な年齢を重ねている。今さら"あーん"は恥ずかしいのだ。


「せっかく出来た友達なんだ。ダメか?」

もしエリックに犬耳と尻尾が在ったのならば、今はペタンと下がっているだろう。まさしくその表現が合うかのように、眉は下がり困った顔を向けてきた。


普通"あーん"は友達にはしないだろう……と思ったが、距離感がバグってるエリックのことだ。今まで友達が居なかったみたいだし、友達付き合いが分からないのだろう。これからは私が友達との付き合い方を教えねばと思いながら、とりあえず今は、目の前に差し出されたスプーンにのったケーキをパクりと食べた。


「エリック、洞窟に素材を取りに行ってもいい?

ついでに木材も欲しいんだ」

早速作りたいものが思い浮かんでいるので、材料がほしくてエリックに確認をする。


「私はこれから少しやらねばならない事がある。それが終わったら一緒に取りに行こう。このままここでお菓子を食べててもいいし、部屋に戻って休んでいてもいい。任せるよ」

エリックは私の頭を撫でてからソファーから立ち上がり、執務机に向かった。私はそのままここでお菓子を食べることにした。


エリックが紙にペンを走らせる。

その音をBGMにしながら、私は気付けばソファーの上で眠りに落ちていた。



2025.11.2 誤字脱字のご報告ありがとうございます!修正致しました!

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