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魔道具と娯楽品の作成に勤しむ転生令嬢は、囲われていることに気がつかない  作者: 成瀬川 透


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63_無言の腹パン

勉強を頑張らなきゃいけないのは私なわけで。

エリックと同じ学年になるということは最終学年なわけで。5年分の勉強を今年中に終わらせないとエリックと同じ学年になれないわけで。

なんでも後だしするエリックにムカムカしてしまい、脇腹に一発拳をお見舞いしておいた。


エリックは「ぐふっ」と私に殴られた箇所を抑え、「これが夫婦喧嘩か」とニマニマと笑い意味不明なことを呟いていた。私はそんなエリックを無視した。


「エリックと同じ学年になるには、私は5年分の勉強をしないといけないわけでしょ?

無理無理!」

私は右手を左右に振りながら言った。


「大丈夫。セバスチャンの授業は学園での必修科目も網羅しているから、マリなら余裕で合格できると思うぞ」


「……」

私は無言でエリックを見つめる。


「マリなら大丈夫!」

エリックが何を言おうと無言で見つめ続ける。私の態度で流石にエリックも自分の方が分が悪いと悟ったのだろう。

エリックは頭を下げた。


「マリの気持ちを置き去りに色々と進めていてすまない!」


「わかればよろしい」

私はソファーから立ち上がり、エリックを見下ろす。


「私、まだ寝巻きだから部屋に戻って着替えをしてくるね」

応接室から退室しようとするとエリックが「部屋まで見送る」と言い出した。


「私はいいから、ルーパパに荒らされた部屋を掃除しておいで。まさか、全てを丸投げするわけないよね?」


「……掃除してくる」

エリックもソファーから立ち上がり、私とは反対にある自分の部屋へと戻って行った。そんなエリックの後ろ姿を見送ったあと、私も自分の部屋へと足を進めた。


部屋へとつき、寝巻きからドレスに着替える。着替える時に、私の胸にもエリックと似た魔法陣があることを確認した。

櫛で髪を梳かし、耳に髪をかけ、そこにエリックから貰った髪飾りをつけた。

私には髪の毛のアレンジなど出来ないため、これが精一杯の出来なのだ。


おそらく、そろそろ昼食だろう。いつもならサラさんが呼びにきてくれるが、今はエリックの部屋の掃除に勤しんでいることだろう。

先にダイニングルームへ向かっておくか、呼ばれるまでこのまま部屋で待つか悩んだ結果、私もエリックの部屋の掃除を手伝った方が早いと結論をだし、エリックの部屋へと向かうことにした。


ルーパパのせいってことは、少なからずは私のせいでもあって。



エリックの部屋に着くと、セバスチャンさんやサラさん、まさかのジェットさんまで居た。

私に気付いたジェットさんは「結婚するんだって?おめでとうっ!」と私の頭をガシガシと撫で回してくれた。せっかく私なりに頑張ったヘアスタイル(髪飾りでとめただけ)はグシャグシャになってしまった。

ジェットさんと会う時は基本的に工房か筋トレ部屋だから私は髪を纏めてるし、帽子を被っている時もあるから油断していた。


「ありがとうございます」

そう言いながらジェットさんの手を払いのけようとしたが、さすが師範。私の力では退かすことはできなかった。


そんな私とジェットさんのやり取りに気付いたエリックが「マリに触れていいのは私だけだ!手をどけろジェット!」とプリプリと怒りながら近寄ってきた。


「狭量な男は嫌われるぜ、坊っちゃん!」

ジェットさんはエリックの頭も撫で回し、私と同じくグシャグシャの頭になってしまっていた。



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