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魔道具と娯楽品の作成に勤しむ転生令嬢は、囲われていることに気がつかない  作者: 成瀬川 透


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06_腹の虫

お風呂を上がって、濡れている髪の毛は風魔法で水気を飛ばした。

メイドさんは「魔法って便利ですね」と私の濡れている身体を拭いてくれ、「お坊ちゃんの小さい頃のものなので、男性もので申し訳ないですけど」と、私に部屋着を着せてくた。

ヒラヒラのスカートよりズボンの方が私にとってはありがたいので、申し訳なく思うことはないのだけれど。


「では、行きましょうか」

メイドさんに連れられ、お風呂を出ると廊下にはセバスチャンさんが待っていた。

お風呂あがりの私をみてまたもや驚いた顔をした。

小綺麗になったのになぜ驚かれないといけないのだ?


だが直ぐに「さぁ、お坊っちゃまがお待ちです。行きましょうか」と優しい笑みを浮かべた。

ここでメイドさんと別れ、セバスチャンさんの後について歩く。

暫く歩いたあとセバスチャンさんが1つの扉の前でとまった。おそらくここが美少年がいる執務室なのだろう。

予想通りセバスチャンさんは部屋の扉をノックし、中から「入れ」との許可が出た。

扉をあけると1枚の紙を手に取り、眉間に皺をよせ気難しい顔をしている美少年が執務机に向かって座っていた。

その執務机の前にはローテーブルがあり、そのローテーブルを挟むように両側に、大人なら3人は座れるであろうソファーがあった。


セバスチャンさんに促されそのソファーに座る。

私が座ると美少年は手にしていた1枚の紙を執務机に置き、私とは反対側のソファーに腰かけた。

セバスチャンさんは座ることなく美少年の後ろに控えるように立った。


美少年が私の顔をまじまじと見て驚いた顔をした。

セバスチャンさんといい、美少年といい、人の顔を見て驚くとはなんなんだ。そんなに私の顔が変なのか。


美少年が右手を口に持っていき、コホンと咳払いをし、口を開いた。

「失礼した。まだ名乗っていなかったな。私はエリックという。

で、マリは気付いたらあの森にいたと言っていたな。どのくらいの期間いたかわかるか?」


「太陽が30回沈むのまでは数えていましたが、それ以上は数えるのを止めました。そのため正確な期間はわかりません」


改めて私、あそこで1ヶ月以上もサバイバルをしていたのか。


「それでは、あの森にいる前は何をしていた?」


「申し訳ございません。

私にはあの森にいた以前の記憶がございません。本当に気がついたら居たんです。

名前もマリと名乗っていますが、私が勝手に名乗っているだけで本当の名前はわかりません」


美少年もといエリックが「記憶喪失?」と呟く。

私としても、本当になぜあそこに居たのかが分からない。気がついたら森にいて、それ以前のこの身体での記憶も何もない。


嫌な沈黙が続く。

だが私には確認しなければならないことがある。


「あの、洞窟内にあった素材たちはエリック様のものでしたでしょうか。もしそうなら勝手に使用してしまい申し訳ございません」

私はソファーに座りながら深々と頭を下げた。魔石は希少だ。それを生きるためとはいえ、勝手に使ってしまったのだ。ただ、あんな所に置いておくエリックも悪いと思うが。


「いや、あそこにあれば誰が持ち主とも分かるまい。あそこに置いておいた私にも落ち度がある」


あら、まさかの話しが通じる人?

罰則がないようで安心していたら「まぁ、少なからずショックは受けたがな」と、苦笑いをされた。

ですよね。そうですよね。私は再び「申し訳ございません」と頭を下げた。



「だが、素材をくれた者たちも有効活用してくれたほうが本望だろう。

さて、セバスチャンから受け取ったコレの説明をお願いしたい」


ソファーの前にあるローテーブルの上には私が作成した扇風機もどきが置いてある。

扇風機よりサーキュレーターといった方が表現は近いのかもしれない。


「それも乳白色の鱗を使用したものになります。

見て頂いた方が早いですね」

私は扇風機もどきのスピナー部分に魔石をはめた。すると羽が回転し風をうみだす。


「本当は羽部分に手を挟まれないように前後にガードをつけるのですが、素材不足で取り付けれておりません。

回転中の羽は非常に危険ですので手を出さないようにお願いします。

あと髪の毛も巻き込まれます。顔も近づけないようお願いします。」


エリックとセバスチャンさんから「これまた凄い……」とお褒めの言葉を頂きました。えへへ。


「他にもアイデアがあると言っていたが……」

エリックの問に答えようとしたその瞬間「ぎゅるるるる」と私のお腹が鳴った。

乙女にあるまじき大きな音が鳴ってしまい、恥ずかしさのあまり急激に顔が熱くなる。おそらく今の私の顔は真っ赤だろう。

だって仕方がないじゃない。ご飯をたべようと魚を獲るタイミングでエリックと出会い、ここに来たのだからご飯が食べれなかったんだもん。


エリックは右腕で口元を隠し笑いをたえていた。

いっそのことおもいっきり笑ってくれ。

「疲れていたところすまなかった。

部屋に案内するからゆっくり休んでくれ。もちろん食事は用意する」エリックは後ろに控えていたセバスチャンさんに目配せをした。


「え、食事だけではなく泊まっていってもいいんですか?」

そんなに良くしてもらう道理がない。が、お言葉に甘えたい。


「あぁ、素晴らしいものを見せて貰ったお礼だと思ってくれればいい」


「ありがとうございます!」

私は立ち上がり深々と頭をさげた。


「さぁ、客室に案内しますよ」セバスチャンさんの言葉をうけ執務室を後にする。もちろん退室前の感謝の礼は忘れない。


セバスチャンさんに案内された客室でご飯を食べ、ベッドにダイブした。

魚とマンゴーに似た果物以外の久しぶりの食事は、本当に美味しかった。脇目も気にせずがっつきたかったけれど、私をお風呂に入れてくれたメイドさんの目があったから我慢した。


ベッドで寝るのもいつぶりだろう。明日には屋敷を出ることになるだろうから、次はいつ、ふかふかのベッドで寝れるか分からない。

今後のことを考えたいのに、私の頭は考えることを放棄し、気付けば深い眠りに落ちていた。



2025.11.2 誤字脱字のご報告ありがとうございます!修正致しました!

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