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魔道具と娯楽品の作成に勤しむ転生令嬢は、囲われていることに気がつかない  作者: 成瀬川 透


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59_騙し討ち

エリックの部屋に向かう途中、セバスチャンさんやサラさんに出くわした。走っている私をみて「マリ様!?」と驚きの声をあげる。しかし私は立ち止まって説明している暇などないのだ。ルーパパがエリックに何をしでかすか判らない今、私は急いでエリックの部屋に行くしかない。


扉をノックする心の余裕もないまま「エリック無事!?」とエリックの私室の扉を勢いをつけたまま開け放つ。


私の目に飛び込んできたのは、泥棒が家捜ししたのかってくらい部屋の中の至る物が床に散乱した荒れた惨状と、ルーパパの魔法で空中に拘束されているエリックと、それを見上げ立っているルーパパの後ろ姿だった。

私の後をついてきていたセバスチャンさんとサラさんも同じ光景を目撃し、「坊っちゃま!」「お坊ちゃん!」と同時に叫んだ。


「今すぐエリックを放して!」

私はそれだけを叫び、エリックの元へと駆け寄る。ルーパパは「やれやれ」とため息をつきエリックにかけている魔法を解いてくれた。

エリックは空中からそのまま床にドサッとしりもちをつく形で着陸した。


「エリック大丈夫!?」

私はルーパパの横を通り抜けてエリックの隣で両膝をつき、エリックの背中に手を伸ばした。


「あぁ大丈夫だ。魔法(ちから)に頼ることしかできないクソジジィだからな。マリを貰い受けるためならこのくらい何でもない」


「なんだとクソガキ」


エリックとルーパパは互いに睨みあう。


「エリックは魔法でルーパパに勝てっこないんだから無駄にケンカ売らないで!

ルーパパも魔法でエリックに攻撃しないで!」


「おやおや、弱いクソガキはマリの後ろに隠れて守ってもらわねば何もできぬのか?」


ルーパパはエリックを煽るようにニヤニヤと笑い小馬鹿にした言い方をしてきた。それに対しエリックは「クソジジィ」とルーパパを睨み付けながら立ち上がる。


「エリックも!ルーパパも!落ち着いて!!」

私はエリックの足にしがみつき叫んだ。


「マリ、クソガキなんぞ庇う必要はない!婚約すらしていないのに私の娘に手を出されたのだぞ。熱を出すほどに思い悩む娘を目にして怒らぬ親はおらん!

順序も守らぬ男なんざにマリは渡さん!!」


「出されていないから!手は出されていないから!!」

大事なことなので2回言った。


「そんなに興奮すると血圧が上がりますよ。もう結構なお年なのだし気を付けないと」


「クソガキが!」

ルーパパは気が高ぶって魔力が制御できていないのか、ルーパパの回りにバチバチと電気のようなものが放電され、静電気のせいだろうか髪の毛が逆立った。


「エリック!お願いもう黙って!!」

エリックは足にしがみついている私の手を掴み放させたあと、そのまましゃがみ私と目線を合わせた。


「マリ、こんな厄介な舅がいても私は大丈夫だ。逆に私でなければあのクソジジィの相手など出来ないと思うぞ?」


「おいおい誰が舅だ。貴様のような婿はいらん。私から願い下げだ!」


エリックは今度はルーパパの方を向いた。

「私は婿になれません。跡継ぎなのでね。マリが私の嫁になるのです」


「マリは嫁にはやらん!」


「残念です。マリの子供は可愛いだろうに。孫も抱かずに魔塔に引っ込むのですね。安心して下さい。マリは私が幸せにしますから」


「孫は可愛いだろうが、半分貴様の血が入っているとなると複雑な気分だ。それくらいなら私が選んだ相手とマリを結婚させる!」


「いや、私を無視して話を進めないで!?」

私は大声で口を挟んだ。


「クソジジィが選んだ誰かも知らぬ相手と結婚するより、私と結婚した方がマシだよな?私を選んでくれ、マリ」

エリックは私の目を見つめて切実そうな声を出して聞いてきた。

ルーパパは「マリ!何も話すな!」と止めてきたが、私はエリックとルーパパが選んだ相手の二択だった場合なら……と深くは考えずに「うん」と頷きながら返事をした。


ルーパパは「マリ!なんてことを!」と両手で頭を抱えて声を震わせ叫んだ。例えばの話なのに、なぜそんな反応になるんだ?と不思議にルーパパを見た。


「……マリ、言質はとったぞ?」

エリックのしたり声が聞こえたため、ルーパパからエリックに顔を向けると満面な笑みを浮かべたエリックが私に抱きついてきた。


「私との結婚を承諾してくれて嬉しいよ」

エリックは更に力を込めて抱きついてくる。その後ろでルーパパが「私は認めんぞ!マリ!まだ嫁に行かないでくれ!」と床に突っ伏して泣き真似のようなことをしている。


「……え?」

私は頭の中が理解できていなかった。


「熱を出す程に私のことを考えてくれていたのだろう?魔塔主の選んだ相手より私を選んでくれたことが何よりの証拠だ。


マリ、大事にする。マリだけを愛すると誓うよ。まだ戸惑いがあるかもしれないが、これから2人で愛を育んでいこう」

そうエリックに耳元で囁かれた。


「ちょっと待って!?

え?例えばの二択だったんじゃないの?」

私の頭の中は?でいっぱいだった。


「魔塔主がな、私の部屋を訪れた際に『嘘がつけない魔法』ともう1つ、この部屋全体にかけたものがあってだな」

嘘がつけない魔法。なんて恐ろしい魔法なんだ。たしか、人の心や言動に直接働きかける魔法は危ないから禁止なのでは……。私はルーパパを睨み付けた。

だからエリックがルーパパに好戦的なのに納得はした。が、もう1つ?


私に睨み付けられたルーパパは弱々しく言いはなった。

「魔法制約だ。マリに手を出させないと魔法で縛るつもりだったのにっ」


エリックは微笑みを浮かべた。

「そういうことだ、マリ。騙し討ちみたいで心苦しいが、私を選んだのが何よりの証拠だ。

後で指輪を一緒に選ぼうな」


「……マジ?」

思わず2度目の人生での言葉が出た。しかし、許してほしい。昨日、熱まで出して思い悩んだ私の時間はなんだったのか。

エリックにされてきたことに嫌悪感を抱かなく、逆に恥ずかしくなり顔を赤く染めた私の答えは決まっていたのだろう。


だが、やり方が気にくわない。


ニコニコと笑うエリックの頭を思わず叩いた私は悪くないと皆に擁護して欲しい。



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