58_パパは心配性
人の気配で目が覚めた。
サラさんが水を絞ったタオルを私の額にのせているところだった。
「起こしてしまい申し訳ございません。まだ夜中ですから、マリ様は寝ててください」
そう言われたから、私は瞼をとじた。額の濡れたタオルが冷たくて気持ちいい。
次に目を覚ました時は朝だった。サラさんが部屋にいてくれており、起きた私に気付いて「おはようございます」と朝の挨拶をし、私の額に手を当ててきた。
「熱は下がったと思いますが、今日はベッドから出ずに、ゆっくり身体と心を休めましょう。朝食はこちらにお運びしますね」
サラさんは一礼してから部屋を退室していった。熱のせいで汗をかいてしまったため、身体がベタベタと不快極まりない。サラさんが朝食を持ってきてくれたら、シャワーでいいから浴びに行くと伝えよう。
しばらくすると、サラさんが朝食がのったワゴンを運んできた。熱を出した後だったため、胃に優しいスープになっていた。バレットさん、ありがとう。
スープを胃に流し込んだあと、私はサラさんにシャワーを浴びたいと申し出た。サラさんは手伝うと言ってくれたが、もう熱も下がったし頭は簡単に洗うだけにするから、夜の入浴時に髪の毛のケアをお願いしますと頼んだ。
渋るサラさんを部屋に置き去りにしてシャワーを浴びに行った。汗を洗い流しさっぱりした状態で部屋に戻ると、何故かソファーにふんぞり返って座っているルーパパがいた。
「……相変わらず急に来ますね」
私はルーパパの隣に人1人分の間を開けて座ろうとした。
あぁ、そうだよね。普通は隙間を開けるのに、エリックの時は麻痺してたのか隙間なく座るのに抵抗がなかったなと思っいながら座った。
「娘の一大事に駆け付けない親などいない。熱を出したんだってな?」
「……私の脳では処理しきれない事象が発生しまして」
「どうせエリックがマリに迫ったのだろう」
「えっ?」
若干違うが、なぜルーパパはエリックが原因と解っているのだろう。
「マリだけだったぞ。アイツの気持ちに気付いていなかったのは」
ルーパパは呆れたかのようにため息をついた。
「え、ルーパパは気付いてたんですか?」
「私だけじゃないぞ。この屋敷のみんな気付いていたはずた。
私の娘なのに色恋に鈍いとは。アイツの魔の手からどれだけ守ってきたか」
「ありがとうございます?」
とりあえずお礼は言っておいた。
ルーパパは「本当に解っているのか」と私の頭を両手でこねくり回してくれたせいで、髪の毛が鳥の巣みたくワシャワシャになってしまった。
手櫛で髪の毛を直しているとルーパパが変なことを言ってきた。
「で?婚約は結ぶんだろう?
クソガキはいつ、私にマリを下さいと頭を下げにくるのだ?」
「えっ、婚約?してないしてないしてない!」
私は手と頭を使ってブンブンと左右に振って否定をする。
「婚約を申し込まずに迫ったのか!?
なんて野郎だ。待ってろマリ。私が話をつけてくる」
えっ?と思う瞬間もなく、目の前からルーパパが姿を消していた。まさか、エリックに直接何かを言いに行った?
私は急いで立ち上がり、エリックの部屋へと向かって走りだした。




