57_知恵熱
「……つまり、エリックは私のことが好き?」
自惚れたくはないが、エリックに確認をとるべく聞いた。
「あぁ、愛おしくてたまらない」
エリックはとろけるような笑みを浮かべた。
「……えっ、本気!?」
私の頭の中に、このまま別荘に居てもいいのか、エリックの父母に申し訳がないとか、エリックの気持ちには答えられないとか、グルグルと考えが巡った。
「マリは深く考えなくていい。ただ私の気持ちを知ったうえで、今まで通りこの別荘で過ごしてくれ。」
「今まで通りって……そんなの無理だよ」
「マリが私を1人の男とは見ていないとわかってはいた。だが、私はマリが欲しい。だから私を男として意識せざるを得ない状況をつくるしかないだろう?
これからは遠慮なく私をアピールしていくから、どうか私を1人の男としてみてくれ」
「……今、頭の中がパニックでどうにかなりそう。ちょっと部屋で、1人になって頭の中を整理したい」
「部屋まで送ろう」
エリックがソファーから立ち上がろうとしたが、私はエリックを制す。
「1人で大丈夫。いや、1人にさせてください」
私は急いでソファーから立ち上がり、自分の部屋に足を向けた。最初は歩いていたが、だんだん早歩きに無意識にかわっていった。
自分の部屋につきベッドにダイブし、クッションを抱えこんだ。
まさかエリックが私を好きだったなんて!!
1度目の人生は私の気持ちが伴なわない政略結婚で、相手方からは罵詈雑言を浴びせられ、暴力も振るわれて散々なものだった。
二度目の人生はオタク活動に全てをそそぎ、恋人なんて画面の向こうから出てこれない人達ばかりで、生身の人間と恋仲になったことなんてなかった。
そんな色恋沙汰に面識がない私をエリックが好きっ!!?
えっ、距離感がないと思っていたけれど、あれはエリックなりのアピールだったの!!?
私、どんだけ鈍いのよっ!!
今更になって、今までのエリックの私の首筋に顔を埋めて匂いを嗅いでくる行為や、足の間に座らせ後ろから抱きついてくる行為、並んで歩く時は肩や腰に腕を回してくる行為は、私を好きだからしていたと思ったら、急激に恥ずかしくなった。
顔が急激に熱く感じたため、おそらく私の顔は真っ赤だろう。
私はベッドの上でジタバタと今後エリックとどう接しようとか、2度目の人生でリア充をみては爆発しろと思っていたがしっかり見ていれば良かった等をサラさんが夕飯の知らせにきてくれるまで考えていた。
私を見たサラさんが「マリ様!?顔が真っ赤ですよ!?」と私の額に手を当ててくれた。サラさんの手はひんやりと冷たく気持ち良かった。
「マリ様!お熱があります!今日はもうゆっくりなさってください!」
サラさんは未だに着替えずベッドの上にいた私のドレスを脱がし、寝巻きに着替えさせてくれた。ドレスをシワだらけにして申し訳ない気持ちが沸いてきた。着替えた私はサラさんにベッドの中に押し込められた。
「水分をお持ちしますね!」
サラさんは私の部屋から退室していった。私はその姿を見送った後に瞼をとじた。
顔は熱いし、頭の中がスッキリしなくなったため考えることを放棄することにした。
私はその日、知恵熱を出してしまったのだった。




