03_出会い ーside エリックー
私は公爵家が嫡男、エリック・オズワルド。
リリーム地方にある我が別荘へ息抜きに訪れていた。とはいっても、やるべき事はたくさんあり心休まる時などは無いに等しい。そんな中、急に予定が空いたため、この別荘に訪れる度に足を運んでいる湖へ行くことにした。
その湖の近くには洞窟があり、小さい頃は自身の秘密基地にしたものだった。
昔、冒険者一行の旅路に出くわしたことがあり、近くに宿泊できるような場所がないか聞かれたことがある。近くに宿などなかったから秘密基地に案内をした。雨風を凌げるし、近くに水場があるから助かると感謝されものだった。
本当は自身が泊まる別荘に連れて行ければよかったのだが、当時の家庭教師に見つかると煩いため、連れていけなかった。今思えば、なぜあんな家庭教師などに怯えていたのかさえ分からない。
泊めてあげられる別荘があるのに、連れて帰り家庭教師から罰則を与えられるのが怖かった。連れて帰れない後ろめたさと葛藤していても、私の心中を知らない冒険者一行は笑って数々の冒険を語ってくれた。
別れる時、洞窟を案内してくれた礼にと、魔獣の素材をくれた。
しかし、別荘に魔獣の素材を持ち帰り、家庭教師に出所を問われたときに返答に困るため、洞窟の奥の方に隠しておいた。
自分にはそれが宝物になった。
だからリリーム地方の別荘を訪れる時は必ず、湖の近くの洞窟へ宝物を見に行く。
すでに件の家庭教師はクビになっているため、別荘に持ち帰ってもいいのだが、あの冒険者一行との思い出と共に洞窟に置いている。
湖が見えてきた。
いつもとかわらず、湖があるだけのはずだった。
「…え」
誰かがこちら側を背にして湖に向かって両腕を伸ばしていた。
私の声が届いたのかこちらへ振り返る。
ボロボロの服を身に纏った、痩せこけた身体の女の子だった。髪の毛は傷んで広がっており、顔色も悪い。それでも光を宿したエメラルドグリーンの瞳は美しいと思った。
年は私より少し下くらいだろうか。
まさか孤児が住み着いているとは思わなかった。
「こんな所で何をしている」
女の子は私をじっと見つめて返事をしない。
「おい、聞いているのか!」
孤児なら孤児で管轄の孤児院へ連れていかなければならない。貴重な自由時間をとられ、思わず語尾が強くなってしまった。
それなのに女の子は優しく微笑んだあと、見事なカーテシーをとったのだ。淑女教育を受けていない平民の孤児では無理であろう、完璧なカーテシーを。
その後、女の子はマリと名乗った。家名はないと。
遭難しているため人里まで案内をしてほしいと。
本当にただの孤児なのか?
どこかの貴族の御落胤で、ここに捨てられたのではないか?それはそれで厄介だ。問題事は御免だ。
「君はなぜここにいる?」
「わかりません。気がついたらこの森の中にいました。」
「そう、か…」
目隠しをされ、ここまで連れてこられたという訳か?
このオズワルドが治めるリリーム地方にまで?
何か言い掛かりをつけるためか?考えても分からない。日も暮れてくるだろうし、いつまでもここに居るわけにはいかない。
「さすがにここには置いてはいけない。
来い。とりあえず私の屋敷まで案内しよう」
今は屋敷に連れ帰り、今後の対応は信頼できる者たちに相談をして決めようと思う。
宝物の確認が出来ないのが心残りだったが、別荘へ向けて歩き出した。




