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魔道具と娯楽品の作成に勤しむ転生令嬢は、囲われていることに気がつかない  作者: 成瀬川 透


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14_魂に記憶を刻んだ者

魔塔の主はソファーに脚を組んで座っている。魔塔の主だけがソファーに座っているという不思議な状況の中、付き人の人が「この方が偉大なる魔塔の主、ルーエンス様でいらっしゃいます」と挨拶をした。

それに続きエリックの父が「リリーム領主のヴィンセントと申します。こちらが息子のエリックです」と挨拶を返した。


魔塔の主が口を開く。

「マリ、どこで古代語を学んだ?」


私は言葉に詰まる。私は今は3度目の人生で、その言語は2度目の人生で学びました、なんて言っても信じてはもらえないだろう。


なんと答えたらいいかの悩んでいると、私をじっと見ていた魔塔の主は、

「なるほど、貴様の魂が刻んだ記憶か。たまにマリのような者が現れると伝え聞いたが、私の代に現れるとはな」と合点がいったかのように話した。


「他に私のような者が?」

私は魔塔の主に質問をする。


「あぁ、魔塔には古代語で記された書物が数点遺されているが、全て魂に記憶を刻んだ者が遺したといわれている。

全てを翻訳できてはいないが、我々魔法使いはその書物の知識の恩恵を受けている」


「主っ、ちょっ、何をっ」


付き人の焦りようから機密情報だったのだろう。

それより、『魂に記憶を刻んだ者』って『転生者』ってこと?私の他に過去にいたってこと?


魔塔の主はエリックの父に向かって

「安心しろ、マリに害はない。ましてや、貴様の息子も至って普通だ。なにもない」そう言ったあと、今度は私に向かって「マリ、魔塔に来い」と言ってきた。


「…え?」


「私でも古代語は完璧ではない。マリには翻訳をしてもらいたい」


「えっと」

戸惑っている私に構わず魔塔の主は続ける。

「手紙と一緒に届いた魔石を利用した道具も面白かった。メモ用紙にも他の道具のアイデアを書いていただろう。私の元で作ればいい」


私がどう答えればいいか困っていると付き人が助け船を出してくれた。

「主、急すぎて直ぐには返答できないでしょう。

それと、いきなり魔塔へ連れて行っても試験も何も受けていないと不満を言う者も出て来ますよ。

逆に主のスカウトだと知れたら、嫉妬の嵐と、教えを請う魔法バカで二極化しますよ」


「私に楯突くやつは追い出せばいいだろう」


「そうも簡単にはいかないんですよ~」と、付き人は魔塔の主にの脚にすがり付く。「ええぃ、離れろ鬱陶しい!」と付き人を足蹴にする魔塔の主。


今まで蚊帳の外だったエリック父が口を開く。

「話の内容を理解出来なかった部分もあったが、マリはどうしたい?このままここに居てもいいし、魔塔主様について行ったっていい」


「父上!」


「エリックは黙っていなさい。決めるのはマリ自身だ」

エリック父は反発したエリックの目をみて言った。

エリックは下唇をかみ、両手を握りしめ拳をつくり、下を向きながら「私はマリと居たい」と呟いた。

私はそんなエリックの両手の拳を自身の両手でそれぞれ触れる。するとエリックは私の方を見た。


「友達を置いてはいけないよ。まだ一緒に遊びたいことあるんだもん」

私がエリックに向かっていうと、エリックは私に抱きついてきた。受け止めきれずに後ろによろめくと、エリック父が支えてくれた。


「なんだ、茶番は終わったか?」

ソファーに座ったまま、組んだ脚の上に肘をつき顎を乗せた魔塔の主が聞いてきた。その足下には踏みつけられた付き人がいた。


「折角のお誘いですが、私はここに残ります」

エリックに抱きつかれたまま私は顔を魔塔の主に向け言う。

「まぁ、無理強いはせん。だがマリ、後でコイツに持ってこさせるから翻訳は頼んだぞ」

コイツと指を下にさした先には魔塔の主に踏まれている付き人の姿がある。

2度目の人生だったら、パワハラで訴えられてるぞと思った。


「さて、私も暇ではないんだ」

魔塔の主は立ち上がり「また来る」と言ってその場で姿を消した。

残された付き人は「また私を置いて行くぅ」と泣いていた。が、立ち上がり「私もお暇します。マリさん、また来ますね」と、この人は歩いて室内を出て行こうとして、エリック父が「お見送りします」とセバスチャンさんも共に退室していった。




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